最新情報のお知らせ

遺言とエンディングノートの違いとは?知っておくべきポイントを解説

遺言とエンディングノート。終活を始める際によく耳にするこの2つは、一見似ていますが、その役割や効力には明確な違いがあります。それぞれの役割をしっかりと理解することで、残される家族の不安が緩和できるかもしれません。

本記事では、遺言とエンディングノートの違いを整理し、目的に応じた使い分け方を具体的に解説します。どちらを残すべきか悩んでいる人は、参考にしてください。

遺言とエンディングノートの違いは?

遺言には法的拘束力があり、相続に関して確かな効力を発揮します。一方、エンディングノートは自由度が高く、家族への希望や思いを伝える手段として有効です。この2つには、以下のような違いがあります。

・法的効力
・作成方法(書き方)・手続き
・開封のタイミング
・作成する目的

それぞれの詳細を見てみましょう。

法的効力

遺言書には、財産分与や相続方法に関して法的拘束力があります。民法で定められた形式で作成した遺言書に「自宅を長男に相続させる」と記載すれば、遺族はその内容に従って相続を行う義務があります。

一方、エンディングノートは法的拘束力を持ちません。「自宅は長男に譲りたい」と書いても法的効力はなく、あくまで希望やメッセージとして遺族が参考にする資料となるだけです。

作成方法(書き方)・手続き

遺言書の作成には、法律で定められた厳密なルールがあります。代表的なものは公証役場で作る「公正証書遺言」と、自分自身で手書きする「自筆証書遺言」です。日付や署名、押印など形式が細かく決められており、不備があると無効になることもあります。

エンディングノートは特定のルールや書式はなく、自由に作成可能です。市販のノートを購入したり、自作したりして自分の意思を気軽に書き残せます。手軽に作成できる反面、書き損じたことや書き忘れたことがあっても誰にもチェックしてもらえない点に注意が必要です。

開封のタイミング

遺言書は、原則として本人が亡くなった後に開封します。特に自筆証書遺言は家庭裁判所で「検認」という手続きを経なければ開封できず、勝手に開けると罰則があります。

エンディングノートには、遺言書のような開封時期のルールはありません。生前に本人が家族と共有することも、亡くなった直後や葬儀の準備時に見ることも自由です。家族に自身の意思や希望を早く伝えるため、生前に共有するケースも多くあります。

作成する目的

遺言書を作成する最大の目的は、相続に関する自身の意思を明確に示し、遺族間のトラブルを未然に防ぐことです。特定の財産を特定の人に残したい場合や、法定相続とは異なる分割を希望する際に役立ちます。

対して、エンディングノートを作る目的は、財産分与だけが目的ではありません。自分の人生の終わり方や医療・介護の希望、葬儀やお墓に関する希望などを具体的に伝え、残された家族の精神的負担を軽減することにあります。

双方の役割の違いをしっかりと理解しておきましょう。

遺言書の具体的な特徴と役割

先述のとおり、遺言書は民法で書式や効力が定められているものです。では具体的にどのような特徴や役割があるのかを、詳しく見てみましょう。

遺言書が持つ3つの特徴

遺言書には、以下の3つの特徴があります。

・相続に関する意思を法的に残せる
・遺族間の相続トラブルを防げる
・生前の意思を明確かつ強制的に実行できる

遺言書は、書いた本人が亡くなった際のトラブルや争族を防止する目的があります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。

相続に関する意思を法的に残せる

遺言書は、自分の財産についての希望を法律に基づき確実に伝えるための重要な書類です。自身が所有する不動産や預貯金、有価証券などの財産を誰にどのように相続させるか、具体的に記載できます。

遺言書は、法律で定められた形式に則って作成することで初めて法的効力を持ちます。記載内容は原則として絶対的な拘束力を持つため、遺族間で遺産分割協議が難航した場合でも遺言書に従って相続を進めることが可能です。また、遺産相続以外にも、認知や遺言執行者の指定など法的に有効な事項を定められます。

自分が亡くなった後の家族や相続人間の争いを防ぎ、円滑に相続手続きが行われるようになるでしょう。

遺族間の相続トラブルを防げる

遺言書を作成することで、遺族間の相続トラブルを未然に防げます

相続に関する遺族の争いの多くは、財産の分配方法に関する曖昧さや解釈の違いが原因です。遺言書には法的拘束力があるため、具体的かつ明確に財産の分割内容を記載しておけば、遺族間の不要な争いを避けられます。

さらに、公正証書遺言を利用すれば第三者が内容を確認・保管できます。これにより。遺言書の紛失や改ざんのリスクも防げ、より確実にトラブル回避が可能です。

生前の意思を明確かつ強制的に実行できる

遺言書を作成する最大のメリットは、自分が亡くなった後に自らの意思を明確に示し、かつ法的強制力をもって実行できる点です。たとえば、「不動産は長男に、預貯金は長女に譲る」という具体的な分配内容を記載すれば、遺族はその指示に従い相続手続きを進める義務があります。

さらに、遺言書には遺言執行者という立場の人物を指定できます。遺言執行者は、自分の代わりに遺産の管理・分配を法的に遂行する役割を担い、相続人間のトラブルを最小限に抑えることが可能です。また、認知(非嫡出子の法的地位の確定)や未成年後見人の指定など、財産分与以外の重要事項も、遺言書を通じて法的効力を持って決定できます。

つまり遺言書は、自分の死後においても、まるで生前と同じように意思決定を強制的かつ確実に実行できる強力な法的文書なのです。

遺言書の種類と特徴

遺言書には、大きく次の種類があります。

・公正証書遺言
・自筆証書遺言

もうひとつ「秘密証書遺言」がありますが、近年ではあまり利用されないため、本記事では説明を割愛します。上記の2つについて、詳しく見てみましょう。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場で公証人が遺言者の意思を確認したうえで作成する遺言書です。自筆証書遺言とは異なり、法律の専門家である公証人が関与するため、形式や内容の不備により無効になるリスクがほとんどありません。

作成手順としては、遺言者が公証役場に赴き、公証人に遺産分配や相続人の指定など自分の意思を伝えます。公証人はそれをもとに遺言書を作成し、証人2名の立会いのもとで署名・押印を行います。原本は公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配もありません。

また、公正証書遺言は家庭裁判所での「検認」が不要で、遺言者の死後すぐに相続手続きを始められるメリットがあります。財産が多い場合や相続トラブルを避けたい場合など、安全性と確実性を求める方に最適な方法です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者本人が自分で全文を手書きして作成する遺言書です。用紙や筆記具に指定はなく、自宅で手軽に作れるため、費用や手間をかけずに遺言を残せます。

ただし、自筆証書遺言には以下のような厳格なルールがあります。

・遺言書の全文・日付・署名を本人が自筆で記入
・捺印(実印が望ましい)を行う
・財産目録についてはパソコンや代筆が認められるが、全ページに署名・捺印が必要

上記のルールをひとつでも満たさない場合、遺言書が無効になることがあります。

また、自筆証書遺言は作成後に自宅で保管するケースが多いため、紛失や改ざん、隠匿のリスクもあります。さらに、遺言者が亡くなった後には、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。この検認を経て初めて相続手続きが開始できるため、公正証書遺言と比較して手続きが煩雑になる場合があります。

手軽に作成できますが、安全性や確実性を重視する場合には、公正証書遺言を検討するほうがよいでしょう。

エンディングノートの具体的な特徴と役割

一方のエンディングノートは、法的効力を持たない、いわば私的文章のことです。強制力こそないものの、葬儀や墓などの遺言書には書けないことを書き残せるツールでもあります。

エンディングノートには書き残しておくと有効な事柄があります。詳細は以下の3つです。

・医療や介護についての希望
・葬儀やお墓についての希望
・財産や貴重品に関するメモ

それぞれ詳しく見てみましょう。

医療や介護についての希望

エンディングノートには、医療や介護に関する具体的な希望を記載できます。たとえば、「延命措置は希望しない」「自宅での介護を望む」「特定の施設への入居を希望する」など、自分が望む医療や介護の方針を明確に伝えることが可能です。

これらを事前に家族や医療関係者に共有しておくことで、本人の意向に沿った治療や介護を受けられる可能性が高まり、家族が難しい判断を迫られる負担も軽減できます

葬儀やお墓についての希望

自分が望む葬儀やお墓の方法を詳細に記入できるのも、エンディングノートを作成しておくメリットです。葬儀の規模や形式、場所や宗教的な希望の有無、埋葬方法(散骨や樹木葬など)などを具体的に伝えることが可能です。

事前に明確に記載しておくことで、自分の望む方法で送り出してもらえる安心感が得られます。また遺された家族にとっても、故人の希望通りに進めることができ、迷いや負担が減るメリットがあります。

財産や貴重品に関するメモ

エンディングノートには、財産や貴重品に関する情報を具体的にまとめることができます。銀行口座や保険契約の内容、有価証券や不動産の所在地といった資産情報のほか、貸金庫の場所や暗証番号なども記載可能です。

こうした重要な情報を一覧にまとめておくことで、家族が相続手続きを円滑に進められます。また、貴重品の保管場所や形見分けの希望なども記載でき、家族が困らずに対応できるための助けになるでしょう。

特に相続税申告は、相続開始後10ヶ月以内に正確な財産評価と申告が求められます。エンディングノートで財産の全容を事前に整理しておけば、遺族は迅速かつ正確に相続税申告の手続きを進めることができます。

遺言とエンディングノートを併用するメリット

遺言とエンディングノートを併用することで、「法的な効力」と「細かな意思の伝達」をバランス良く実現できます。

遺言書では財産分与や相続人の指定など、法的拘束力を伴う事項を明確にできます。たとえば、「自宅を長男、預貯金を長女に相続させる」といった内容を遺言書に記載することで、遺産相続のトラブルを予防できるでしょう。

一方、エンディングノートは、法律上の強制力はありません。しかし、介護方針や葬儀形式、形見分けの希望や家族への感謝の言葉など、細かな希望を自由に伝えられるのが特徴です。

具体例として、「財産分与は遺言書で明確化し、エンディングノートで『自宅での最期を希望する』『葬儀は家族葬で簡素に』『形見の品は孫に贈りたい』と詳細を伝える」という使い分けができます。遺産相続の円滑化はもちろん、遺族の精神的・実務的な負担を大幅に軽減できるのです。

遺言とエンディングノートの目的別おすすめパターン

遺言書とエンディングノートをどう使えば良いかわからない人は、以下の基準で用意することをおすすめします。

・相続トラブルを避けたいなら遺言書
・家族への気持ちを伝えたいならエンディングノート
・トータルで備えたいならどちらも用意を

それぞれ詳しく解説します。

相続トラブルを避けたいなら遺言書

相続において遺族間のトラブルを避けたい場合、遺言書の作成が必須です。遺産分割協議がまとまらず、家族が裁判にまで発展するケースは少なくありません。しかし、遺言書を正しく作成しておけば、自分の財産を誰にどのように分けるのかを法的に明確に定められます。

特に、公証役場で作成する「公正証書遺言」を利用すれば、公証人が内容を確認して保管も行われるため、改ざんや紛失のリスクを排除できます。遺言書の内容は法的拘束力を持ち、遺族間の争いを未然に防ぎ、円満かつ迅速な相続手続きを可能にするのです。

家族への気持ちを伝えたいならエンディングノート

家族への感謝や思いを丁寧に伝えたい場合、エンディングノートが最適です。エンディングノートには法的拘束力がない代わりに記載内容に制限がなく、自由に自分の想いや希望を表現できます。

生前なかなか伝えられなかった感謝の言葉や家族への愛情、自分の生き方や考え方を具体的に残すことで、家族にとって精神的な支えになります。また、医療や介護、葬儀、お墓についての細かな希望を明確に記しておくことで、家族が故人の意思を尊重した対応を取れるでしょう

遺族に対して気持ちを丁寧に伝えることで、家族の負担や悩みを軽減し、心の準備や納得感を与える効果もあります。

トータルで備えたいならどちらも用意を

相続や自分の意思を確実に伝えたいなら、遺言書とエンディングノートの両方を用意することが理想です。

遺言書では、財産分与や相続方法を法的拘束力をもって明確に記載できます。一方、エンディングノートは医療や介護の希望、葬儀の方法や家族へのメッセージなど、法的に残せない細かな意思を自由に伝えられるという違いがあります。

遺言で財産相続のトラブルを防ぎ、エンディングノートで家族が迷いやすい日常的な事柄をフォローするというように、双方のメリットを補完的に活用することが理想です。両方を準備しておけば、相続後のトラブル防止と家族の精神的な負担軽減が実現します。

目的に応じたものを準備しておきましょう

遺言とエンディングノートは、それぞれ異なる目的と特徴を持っています。遺言書は財産の相続に関する法的効力を持ち、自分が亡くなった後もその意思を強制的に実現させる力があります。

一方、エンディングノートには法的な拘束力はありませんが、葬儀や医療、介護などの細かな希望や家族への思いを自由に伝えられるツールです。両方を上手に併用することで、家族が相続でトラブルになるリスクを減らし、精神的な負担を軽くできるでしょう。

ただし、特に遺言書は形式や内容に細かなルールがあるため、作成時には弁護士や行政書士など専門家への相談をおすすめします。専門家のサポートを受ければ、より確実で安心な終活を進めることができるでしょう。

ひろしま相続・不動産ホットラインでは、相続に関する無料相談を承っております。遺言に関する内容はもちろん、相続全般のお悩みをご相談いただける体制が整っています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。お客様の状況に合わせた最適なアドバイスをさせていただきます。

【ひろしま相続・不動産ホットラインに相談する】

監修者 相続・遺言アドバイザー 大野博満