遺言書の効力はいつから?無効にならない遺言書を書くポイントとは
人生の最期を迎えるにあたって、大切な家族のために自分の財産をどのように残したいか、誰に託したいかを明確にしておくことは非常に重要です。
想いを形にするのが「遺言書」ですが、せっかく作成した遺言書が無効になってしまっては元も子もありません。また、内容が曖昧で想いが正しく伝わらない可能性も懸念されます。
この記事では「遺言書の効力」に焦点を当て、遺言書が法的に有効になるための必須条件や、遺言書でできること、そして遺言書を書いたほうがいい8つのケースを解説します。有効な遺言書を作成し、あなたの大切な想いを確実に伝える遺言書作成のために、ぜひ参考にしてください。
遺言書の効力は遺言者が亡くなったときから
遺言書は、作成した時点ですぐに効力が発生するわけではありません。遺言書が法的な効力を持つのは、遺言者が亡くなった瞬間からです。つまり、遺言書で相続人や受遺者として指定された人であっても、遺言者が生存している間は、遺産に対する権利は一切発生しないのです。
遺言者は、自身の死後、どのように遺産を分配するか、誰に何を託すかを自由に決められます。そして、その決定事項は、遺言者の死によって初めて現実のものとなるのです。
遺言書の効力発生時期 | |
原則 | 遺言者が亡くなった瞬間から効力が発生 |
条件付き遺言 | 遺言書に特定の条件が記載されている場合、その条件が成就した時から効力が発生する |
例えば「私が亡くなった後、自宅を長男に相続させる」といった内容の遺言書であれば、遺言者の死後、直ちに効力が発生し、長男は自宅の所有権を取得することになります。
遺言書に効力をもたせるためのポイント5つ
遺言書を書いても、要件を満たしていなければ無効となってしまいます。遺言書に効力を持たせるポイントは以下の5つです。
- ● 全文を自筆で書く
- ● 日付を入れる
- ● 署名と押印をする
- ● 訂正や加筆の方式を守る
- ● 書面で作成する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
全文を自筆で書く
遺言書の全文は、必ず自分で手書きする必要があります。代筆も認められません。また、パソコンやワープロで作成したものは無効です。ボールペンや万年筆など、どのような筆記用具でも構いませんが、鉛筆は変更の可能性があるため避けた方が無難でしょう。ただし、財産の目録については、自筆でなくても有効です。
日付を入れる
作成日を明確にするために、必ず日付を記入しましょう。日付がないと、どの時点での意思表示なのかが分からず、無効になる可能性があります。「令和〇年〇月〇日」のように、元号と西暦のどちらかで統一して正確に記入しましょう。日付の違う遺言書が複数あった場合、日付の新しいものが有効とされます。
署名と押印をする
遺言書には、署名と押印が必要です。これは、遺言者が確かに自分で作成したことを証明するためです。署名は戸籍上の氏名で書き、普段使用している印鑑を押印しましょう。実印などの条件はなく、認印や拇印でも有効です。
訂正や加筆の方式を守る
訂正や加筆をする場合は、二重線で消し、その箇所に訂正印を押印し、欄外に訂正した内容を書き加える必要があります。訂正方法を誤ると、遺言書が無効になる可能性があるため、訂正箇所が多くなりすぎるようでしたら、最初から書き直すことをおすすめします。
書面で作成する
遺言は、紙などの書面で作成する必要があります。音声や動画での記録は無効です。紙の種類の指定はありませんが、サイズはA4となっています。
遺言書が効力を発揮する8つのケース
具体的にどのようなケースで遺言書が効力を発揮するのか、8つのケースに分けて解説します。
- ● 特定の相続人に遺産を取得させたい場合
- ● 法定相続人以外の人に遺贈したい場合
- ● 遺産を寄付したい場合
- ● 子どもを認知したい場合
- ● 相続人を廃除したい場合
- ● 遺産分割の方法を指定したい場合
- ● 後見人を指定したい場合
- ● 遺言執行者を指定したい場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
特定の相続人に遺産を取得させたい場合
遺言書に記せば、法定相続分とは異なる割合で、特定の相続人に財産を多く相続させられます。例えば、事業を継承する子どもに多くの財産を相続させたい場合などに有効です。
法定相続人以外の人に遺贈したい場合
法定相続人でない人、例えば、孫、内縁の妻、親戚、友人、お世話になった人などに財産を贈りたい場合、遺言書に書くことで遺贈という形で財産を渡せます。
遺産を寄付したい場合
特定の法人や慈善団体に寄付したい場合は、遺言書により指定できます。天涯孤独で財産を残す身内がいない場合の遺産は、民法第959条に基づき、最終的に国庫に帰属します。国に寄付するのではなく、応援したい法人や慈善団体に財産を寄付したい場合に有効です。
子どもを認知したい場合
遺言により、婚姻関係にない男女の間の子どもを認知できます。認知することで、その子どもは法定相続人となり、相続権を持ちます。(民法781条 遺言認知)
相続人を廃除したい場合
相続人になる予定の人に、被相続人が虐待や重大な侮辱など一定の事由がある場合、その人物を相続の対象外にできます。(民法893条 遺言による推定相続人の廃除)
遺産分割の方法を指定したい場合
遺産をどのように分割するかを具体的に指定できます。具体例として、自宅は長男に、預貯金は次男に、といったものです。(民法902条 遺言による相続分の指定)
後見人を指定したい場合
未成年の子供や、判断能力が不十分な家族がいる場合、その人の財産管理や身上監護を行う後見人を指定できます。
遺言執行者を指定したい場合
遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う遺言執行者を指定できます。遺言執行者とは、遺言の内容を実現させるため、権利と義務を負う人です。選任方法には、遺言者が生前に遺言で指定する、または遺言者の死後に家庭裁判所で専任してもらうといったふたつの方法があります。
遺言執行者の役割には、以下のようなものがあります。
- ● 遺言の内容を相続人に遅延なく通知する
- ● 相続財産の目録を作成して相続人に交付する
- ● 相続財産を調査して洗い出す
- ● 相続手続きの進捗を相続人に報告する
- ● 相続人からの問い合わせに対応する
遺言執行者の選任が必ず必要とするのは、非摘出子の認知と相続廃除を行う場合です。
遺留分を侵害しない遺言書の作成を
遺言書を作成する際には、遺留分への配慮が不可欠です。遺留分を侵害する遺言書を作成してしまうと、後にトラブルが発生する可能性があります。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人が、遺言の内容に関わらず、最低限相続できる遺産の割合のことです。遺言によって特定の相続人が不当に不利にならないようにするための制度ともいえます。たとえ遺言書で特定の相続人を排除していたとしても、その相続人は遺留分を請求することができるのです。遺留分の割合は、「法定相続分の半分」と理解しておくとわかりやすいでしょう。(直系尊属者のみが相続人の場合は「法定相続分の3分の1」)
遺言書の内容が遺留分を侵害している場合、遺留分権利者は、遺留分侵害額請求が可能です。遺留分侵害額請求をされると、遺産分割協議が複雑化したり、場合によっては家庭内で争いが生じたりします。訴訟に発展するケースもあるため、遺言書を作成する際に、遺留分を考慮した内容にしましょう。
効力のある遺言書の作成はひろしま相続・不動産ホットラインに相談を
この記事では、遺言書の効力発生のタイミングや、効力を持つ遺言書を作成するためのポイント、遺言書でできること、遺留分への配慮、作成・保管方法、そして相続開始後の手続きまで、網羅的に解説しました。
遺言書は、あなたの大切な想いを未来へと繋ぎ、円満な相続を実現するための重要なツールです。法的な効力を持つ遺言書を作成することで、あなたの意思に基づいた遺産分配を実現し、相続人たちの紛争リスクを軽減できます。 この記事で得た情報を参考に、ご自身の状況に合った遺言書の作成を検討してみてください。
ただし、抜け漏れのない遺言書の作成は非常に難しいのも事実です。効力のある遺言書を作成したい方は、ひろしま相続・不動産ホットラインにお気軽にご相談ください。