特定路線価とは?設定条件や手続き方法を解説します!
年に一度改定され、毎年7月1日に発表される路線価。土地の相続税評価額の算定のもとになる重要な指標です。ただし、路線価が設定されてない場所も少なくありません。そんなときに必要となるのが「特定路線価」の設定です。
この記事では、特定路線価について詳しく解説します。設定条件や手続き方法はもちろん、申請する際の注意点や代替評価方法まで幅広く紹介しますので、路線価対象外の不動産を相続や贈与で取得された方はぜひ参考にしてください。
特定路線価とは
特定路線価とは、路線価がない道路に対し、税務署に特別に設定してもらう価格を指します。設定には、税務署への申請と手続きが必要です。
通常の路線価は毎月1月1日を基準日とし、7月上旬に国税庁のホームページで発表されます。主に市街地の道路を対象に路線価は設定されますが、路線価が設定されない道路も少なくありません。細い道路や行き止まりの私道に面している土地などは、路線価が設定されてないケースが多いといえます。
通常の路線価との違い
通常の路線価は国税庁が一斉に公表するもので、誰でも閲覧できるのに対し、特定路線価は納税者からの申出に基づいて税務署長が個別に設定するものです。特定路線価は申出者に対してのみ通知され、公表されません。
また、通常の路線価は毎年自動的に更新されますが、特定路線価は申出があった年分についてのみ設定されるため、翌年以降も必要な場合は改めて申請する必要があります。
特定路線価による土地の評価
特定路線価による土地の評価は下記のとおりです。
特定路線価×土地面積=土地の評価額
路線価が設定されてなくても「倍率地域」と掲載されている場合は、評価倍率で計算します。その計算式は「固定資産税評価額×倍率」です。倍率については、国税庁のホームページに掲載されている評価倍率表を参考にしてください。
特定路線価を設定する条件
特定路線価を設定するには次のような条件が必要です。
・相続税または贈与税の申告のための申請である ・評価する土地が路線価地域内にある ・評価する土地が路線価のない道路だけに接地している ・対象の道路は評価する土地の専用道路ではない ・対象となる道路が建築基準法上の道路等である |
順にみていきましょう。
相続税または贈与税の申告のための申請である
特定路線価の設定目的は、相続税や贈与税の申告のためです。それ以外の目的で特定路線価を設定することはできません。また申請ができるのは、相続税または贈与税の申告のために特定路線価の設定が必要となる「本人」のみです。
申告書には、相続開始日もしくは贈与を受けた日を記入します。そのため、申請ができるのは相続発生後のみとなっています。相続や贈与が発生するとわかっていても、前もって申請はできないので注意しましょう。
評価する土地が路線価地域にある
対象の土地が、路線価地域にあることも必要です。路線価地域とは、国税庁が発表する路線価図に記載されている地域のことです。一般的に都市部や市街地が該当します。一方、倍率地域は路線価が設定されていない地域で、主に郊外や農村部が該当します。
路線価地域ではなく倍率地域にあれば、倍率方式での評価となるのです。評価する土地が路線価地域内か倍率地域内かは、国税庁のホームページで確認しましょう。
評価する土地が路線価のない道路だけに接地している
特定路線価が設定できるのは、評価する土地が路線価のない道路だけに接している場合のみです。もし二つ以上の道路に接しており、いずれかに路線価が設定されていれば、その価格が評価に採用されます。
例えば角地で二つの道路に接している場合、一方には路線価があり、もう一方には路線価がない場合、路線価がある道路の価格を使用して評価します。この場合、特定路線価の設定は不要です。
対象の道路は評価する土地の専用道路ではない
土地に接している道路が専用道路の場合は、特定路線価を設定できません。専用道路は、道路としてではなく「評価する土地の一部」として加えられます。
専用道路とは、特定の土地のみがアクセスするために使用する私道などを指します。他の一般の人や車両が通行しない、いわゆる専用通路のことです。このような道路は、評価する土地の一部として評価されるため、特定路線価の設定対象とはなりません。
対象となる道路が建築基準法上の道路等である
特定路線価を設定する道路は、建築基準法上の道路などに限られます。建築基準法場の道路とは下記のとおりです。
①「建築基準法第42条第1項1号~5号又は第2項」に規定する道路
②「建築基準法第43条第1項ただし書」の適用を受けたことのある敷地に面する道路
この条件に該当する道路かを確認するには、都道府県や市町村のホームページをチェックするもしくは担当部署へ問い合わせてみましょう。
具体的には、幅員4m以上の公道や私道、特定行政庁が指定した道路(位置指定道路、2項道路など)が建築基準法上の道路に該当します。これらの条件を満たさない細い路地や通路は、特定路線価の設定対象とならない場合があります。
特定路線価を必要とする年分の路線価が公開されている
特定路線価の申出は、その年分の路線価が公表された後でなければ行うことができません。毎年7月1日に路線価が公表されますので、それ以降に申請する必要があります。
たとえば、令和5年分の相続税申告のための特定路線価を申請する場合、令和5年分の路線価が公表された7月1日以降に申出を行うことになります。早めに準備しておくことは大切ですが、路線価公表前に申請することはできません。注意しましょう。
特定路線価の申請手続き
特定路線価を申請する手続きや流れなどを次のようにまとめました。
・特定路線価の申請手続きの流れ ・特定路線価が設定されるまでの期間 ・申請に必要な書類 |
順にみていきましょう。
特定路線価の申請手続きの流れ
特定路線価の申請手続きのためには、納税地を所轄する税務署に「特定路線価設定申込書」を提出します。提出先の税務署の所在地は、国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」ホームページから検索できます。
提出方法は、郵送もしくは持参。その際、必要な添付資料は下記のとおりです。
・「別紙 特定路線価により評価する土地等及び特定路線価を設定する道路の所在地、状況等の明細書」 ・物件案内図 ・地形図 ・写真 |
写真などで、特定路線価の設定対象となる道路やその道路に接している路線価がある道路などの状況が分かるようにしましょう。申請書や別紙は、税務署に用意されているほか、国税庁ホームページからダウンロードできます。申請に手数料はかかりません。
特定路線価が設定されるまでの期間
申請書の提出から審査が完了するまでは、約1カ月かかります。相続や贈与には申告期限があるため、相続が発生したら早めに申請しましょう。
相続税の申告期限は相続開始から10か月以内です。特定路線価の設定に1か月程度かかることを考慮すると、申告期限に余裕を持って申請することが重要です。特に申告期限が迫っている場合は、税務署に事前相談するなどの対応が必要になるでしょう。
申請に必要な書類
特定路線価の設定申出には、以下の書類が必要です。
・特定路線価設定申出書 ・別紙(特定路線価により評価する土地等及び特定路線価を設定する道路の所在地、状況等の明細書) ・土地の所在や面積を示す図面(公図の写しなど) ・土地の登記事項証明書 ・対象となる道路の状況がわかる写真 ・その他税務署が必要と認める書類 |
なお、特定路線価設定申出書には、以下の項目を記入します。
・申出者の住所、氏名 ・納税地 ・特定路線価の設定を必要とする年分 ・対象となる土地の所在地、地番、地目、地積 ・対象となる道路の幅員、構造 ・申出の理由 ・特定路線価の設定を申し出る道路の始点及び終点 ・提出日 |
申出書の記入にあたっては、漏れや誤りがないよう注意しましょう。不明点があれば、事前に税務署に相談することをおすすめします。
特定路線価を使わずに土地の評価をする方法
路線価が設定されてない場合は、特定路線価の設定を申請しなければならないと考えがちです。しかし特定路線価が高く評価されがちなため、相続税が高額になる可能性も。ここでは別の評価方法として「旗振評価」を紹介します。
・旗振評価 ・特定路線価が設定されたら必ず使用しなければならない ・無道路地としての評価 ・固定資産税路線価からの推定 |
詳しく見ていきましょう。
旗振評価
旗振評価とは、対象の土地が路線価のある道路に面するよう隣接地を含めて評価したのち、隣接地分の評価額を引いて資産価値を計算する方法です。特定路線価よりも路線価のほうが評価額が低くなる傾向があるため、申請の前に検討してみる価値はあります。低く評価される理由は、土地の形状が旗のようで、不整形地として認識されるためです。
ただし、周囲の土地と比較して評価額が著しく低い場合や道路の奥行きが長い場合、税務署に否認されることもあります。
旗竿地評価(旗振評価とも呼ばれます)では、通路部分は通常の路線価の70%で評価し、敷地部分は無道路地として評価します。無道路地評価では最大で40%の減価が認められる場合があるため、特定路線価を設定するよりも有利になることがある点に注意が必要です。
特定路線価が設定されたら必ず使用しなければならない
特定路線価の問題点としては、設定された場合に必ず使用しなければならないことです。もし特定路線価が割高だったため、旗振評価で税額を算出したいと考えたとしても、設定後は変更できません。申請前に旗振評価で税額を計算して、予測を立てる必要があります。
また特定路線価は、高めに設定されることが多いといわれています。そのため、安易に申請するのはおすすめしません。できれば専門家に相談して、納税額が安くなりそうな評価方法を採用しましょう。
無道路地としての評価
評価対象の土地が直接公道に接していない場合、無道路地として評価することもできます。無道路地評価では、接している道路の状況に応じて最大で40%の減価が認められるのです。
具体的には以下のような減価率が適用されます。
・幅員2m以上4m未満の私道に接する場合:20%減価 ・幅員2m未満の私道に接する場合:30%減価 ・公道や私道に全く接していない場合:40%減価 |
これらの減価率は国税局の通達で定められています。しかし、土地の個別の状況によって異なる場合もありますので、専門家に相談することをおすすめします。
固定資産税路線価からの推定
特定路線価の設定を申請せずに、固定資産税路線価から相続税路線価を推定する方法もあります。一般的に相続税路線価は固定資産税路線価の約1.25倍とされていますので、この比率を用いて推定できます。
ただし、この方法は正確性に欠ける面があり、税務調査の際に問題となる可能性もあるため注意が必要です。状況によっては、専門家のアドバイスを受けながら判断することをおすすめします。
特定路線価申請の注意点
特定路線価の設定申出を行う際には、いくつかの注意点があります。ここでは、申請に関するよくある質問と注意点について解説します。
特定路線価は必ず申請するものではない
特定路線価の設定申出は必ずしも行わなければならないものではありません。評価対象の土地の状況によっては、旗竿地評価や無道路地評価などの代替評価方法を用いることができます。
どの評価方法を選択するかは、各方法で算出された評価額を比較し、納税者にとって有利な方法を選ぶことが一般的です。ただし、特定路線価を設定した場合には、その価格で評価しなければならないことに注意が必要です。
申請が却下される可能性
特定路線価の設定申出が却下されるケースもあります。主な却下理由としては以下のようなものが挙げられます。
・設定条件を満たしていない ・提出書類に不備がある ・対象となる道路が建築基準法上の道路ではない ・対象地の専用通路である |
申請が却下された場合は、別の評価方法を検討する必要があります。
特定路線価に関するよくある質問と回答
特定路線価に関するよくある質問とその回答をまとめました。
Q.特定路線価は毎年申請する必要がありますか?
特定路線価は、申出があった年分についてのみ設定されます。翌年以降も同じ土地について特定路線価が必要な場合は、改めて申請する必要があります。ただし、一度特定路線価が設定された道路については、他の納税者が同じ道路について特定路線価の設定申出を行う場合、その設定された特定路線価を使用することができます。
Q.特定路線価の設定はどのように決まりますか?
特定路線価は、原則として近隣の公道の路線価を参考に、道路の幅員や舗装状況などを考慮して決定されます。一般的には、近隣の公道の路線価よりも低く設定されることが多いですが、具体的な算定方法は公表されていません。
Q.特定路線価の設定申出が却下された場合はどうすればよいですか?
申出が却下された場合は、却下理由を確認し、別の評価方法を検討する必要があります。旗竿地評価や無道路地評価などの代替評価方法を検討するか、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
特定路線価を使用するかしないかの判断は難しい!ぜひ専門家に相談を
特定路線価を一度設定してしまうと、必ず使用しなければならないため、申請前の比較が重要です。しかし、正しい評価額を計算したり、いくつかの方法を検討したりするのは大変です。そのため専門家によるサポートが欠かせません。
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