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【2025年最新】相続税のルールが変更に|改正後の節税方法を徹底解説

土地や株式、アパートなどを所有している方だけでなく、終活を意識される年齢の方々が頭を悩まされているのが相続対策です。今まで「生前贈与」の制度を利用してきた方も少なくないはず。その生前贈与に関するルールが、令和5年度税制改正により大きく変更され、2024年1月1日から段階的に施行されているのです。

「我が家は、そこまで多くないよ」といった方でも、適切な相続税対策により、余分な納税を避けられるはずです。そこで、この記事では2024年から2025年にかけて改正された相続税と贈与税について詳しく解説します。そろそろ相続対策をしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

相続税・贈与税に関する法律が2024年から変更された

相続税と贈与税に関する法律が改正され、令和6年(2024年)1月1日から段階的に施行されています。その改正に最も関連するのが以下の2つです。

・暦年贈与
・相続時精算課税制度

それぞれ詳しく解説します。

暦年贈与

暦年贈与は相続税対策のひとつとして利用されています。暦年贈与の条件は以下のとおりです。

・1月1日から1年間の贈与額が対象
・年額110万円までは非課税

1月1日から12月31日までの1年間(暦年)に贈与された財産が、基礎控除額(年額110万円)以下であれば贈与税がかかりません。贈与税がかかるかどうかは、1年ごとの合計額で計算されます。また110万円の基礎控除は、受贈者一人当たりの金額となっています。

ただし相続開始前3年以内の贈与は課税対象です。これが改正により7年間へと変更されます。移行措置として対象期間は次のとおりです。

贈与者の相続開始日加算対象期間
2024年1月1日~2026年12月31日相続開始前3年間
2027年1月1日~2030年12月31日2024年1月1日~相続開始日
2031年1月1日~相続開始前7年間
参照:国税庁|令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし

さらに、延長された4年間(相続開始前4年目から7年目)の贈与については、総額100万円まで相続財産への加算から控除される特例措置が設けられています。

この改正により、相続対策を考えている場合、より早期からの計画的な贈与が必要となりました。日本人の平均寿命(2023年時点で男性81.09歳、女性87.14歳)まで生きると仮定すると、その7年前(男性74歳、女性80歳)までに暦年贈与を完了しておく必要があります。もし2,000万円贈与したい場合はその20年近く前から贈与を始めないと間に合わない計算です。

相続時精算課税制度

相続時精算課税とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合に選択できる制度です。

従来の相続時精算課税制度の特徴は次のとおりでした。

・60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与が対象
・2,500万円まで贈与税が非課税
・2,500万円を超える部分に20%課税
・暦年課税と選択制
・贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日の間に申告
・贈与税はかからないが相続税はかかる

一度選択すると、特定贈与者(父母または祖父母など)が亡くなるまで継続して適用されるため、暦年課税と併用できません。また特定贈与者が亡くなったとき、相続税計算において合算されるため、現状ではメリットが限定的な制度でした。

しかし、令和5年度税制改正で年110万円の基礎控除が新設されたため、制度の使い勝手が大幅に向上しています。改正後の主なポイントは以下のとおりです。

・年間110万円までの贈与は申告不要
・年間110万円以下の贈与は相続時の加算対象外
・2,500万円の特別控除を使い切った後も、年110万円までは非課税で相続税もかからない
・災害により贈与財産が被害を受けた場合の減額措置も創設

この改正により、相続時精算課税制度を選択したほうがメリットがあるケースが大幅に増えました。具体的なケースについては後述します。

相続税・贈与税の改正で起こりうる3つの変化

2023年度の相続税・贈与税の改正で起こりうる変化は次の3つです。

・相続税の負担が増える可能性がある
・若い世代に財産を移転する人が増える
・相続時精算課税制度を利用したほうがよいケースが増える

それぞれ詳しく解説します。

相続税の負担が増える可能性がある

今まで相続開始前3年以内の贈与が課税対象だった暦年贈与ですが、その期間が7年に延長されました。これは資産の早期流動化を促す効果を狙った改正ですが、実質的な増税ともいえます。

なぜなら、自分の寿命が何歳までか誰も知る由もなく、亡くなる日から逆算して7年前までに年間110万円ずつ計画的に贈与を完了できる人はほとんどいないためです。

ただし、延長された4年間(4年目から7年目)の贈与については総額100万円の控除が設けられています。完全な増税とまではいえませんが、従来よりも早期からの対策が必要になったことは確かです。

若い世代に財産を移転する人が増える

今回の改正前は、贈与税の方が相続税よりも税金が高くなる構造でしたが、改正されたことでより早い時期からの財産移転が促進される環境が整いました。また、次の非課税措置も期間延長されています。

項目延長期間
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置令和8年(2026年)3月31日まで
結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置令和9年(2027年)3月31日まで(令和7年度改正で延長)

「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」は、親や祖父母が30歳未満の子や孫に教育資金を最大1,500万円まで非課税で一括贈与できる制度です。この内訳として「学校などに支払われる金銭」と「学校等以外に支払われる金銭」の2種類があり、学校等以外に支払われる金銭は1,500万円のうち限度額は500万円になります。

また「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」は、親や祖父母が18歳以上50歳未満の子や孫に結婚や子育て資金を最大1,000万円(結婚関係は300万円まで)を非課税で贈与できる制度です。

これらの制度を活用することで、若い世代への財産移転がしやすくなり、経済の活性化も期待されています。

相続時精算課税制度を利用したほうがよいケースが増える

相続時精算課税制度に110万の基礎控除が新設されたことで、この制度を利用した方が節税になるケースが大幅に増えました。特に高齢者の贈与において、その効果が顕著です。

暦年贈与によって贈与分が非課税になるためには、亡くなる日よりも7年以上前に贈与を終えている必要があります。一方、相続時精算課税制度を利用すれば、亡くなる直前の贈与であっても、年110万円以内であれば相続税も贈与税もかかりません

また贈与税は、基礎控除額(110万円)を超えた部分は累進課税(最高55%)ですが、相続時精算課税制度では特別控除額(2,500万円)を超えた部分は一律20%の課税で済みます。支払った贈与税は、相続税を計算する際に控除される仕組みです。

さらに、収益物件や値上がりが期待される資産を早期に贈与することで、その後の収益や値上がり分を相続財産から除外できるというメリットもあります。

相続税や贈与税を節税する5つの方法

最後に相続税や贈与税を節税する方法を5つ紹介します。

・贈与者の年齢により暦年贈与と相続時精算課税制度を使い分ける
・財産が値下がりしているタイミングで贈与する
・収益を生む財産は早めに贈与する
・推定相続人以外への贈与を活用する
・生命保険を活用した納税資金対策

それぞれ詳しく解説します。

贈与者の年齢により暦年贈与と相続時精算課税制度を使い分ける

人の寿命は予測できませんが、平均寿命から考えてみましょう。2023年の日本人の平均寿命は、男性81.09歳、女性87.14歳です。

もし平均寿命まで生きるとしたら、7年前までの男性74歳、女性80歳までに暦年贈与を終えておく必要があります。1,000万円の贈与がしたければ、その年齢よりさらに10年前(男性64歳、女性70歳)から暦年贈与を始めておく必要があります。

反対に、十分な時間が確保できない高齢者は、相続時精算課税制度の年110万円の基礎控除を活用することで、効率的な節税が可能です。

財産が値下がりしているタイミングで贈与する

現金以外の株や土地の評価は、贈与時の時価で計算されます。そのため株式や土地などを贈与する場合は、市場価格が値下がりしているタイミングを狙うことで、より多くの財産を非課税枠内で移転できます。

この戦略は暦年贈与でも相続時精算課税制度でも同様に有効です。特に相続時精算課税制度では、贈与時の価額で相続税が計算されるため、値下がり時の贈与がより効果的です。

収益を生む財産は早めに贈与する

家賃収入が得られるアパートやマンション、配当金が得られる株式などの収益財産は、早期に贈与することが重要です。

これらの財産を親が保有し続けると、家賃収入や配当金で相続財産が増加し続け、その分相続税の負担も増大します。早めに贈与しておけば、その後の収益は子や孫の所得となり、相続財産の増加を抑制できます。

推定相続人以外への贈与を活用する

生前贈与加算(7年ルール)の対象となるのは、相続または遺贈により財産を取得した人に限られます。つまり、孫やひ孫など、相続人とならない人への贈与は、加算対象外です。

子への贈与だけでなく、孫への直接贈与を併用することで、より効率的な資産移転が可能になります。ただし、孫が代襲相続人となる場合や遺言で財産を取得する場合は加算対象となるため注意が必要です。

生命保険を活用した納税資金対策

生命保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、この枠は改正後も変更されていません。

現預金が少なく不動産が多い場合、生命保険金を納税資金として活用することで、不動産を売却せずに相続税を納付できます。また、受取人を指定できるため、確実に特定の相続人に資金を渡すことができるでしょう。

改正後の制度選択で注意すべき5つのポイント

税制改正に伴い、以下の5点に注意しましょう。

・贈与記録の長期保管が必須
・相続時精算課税制度の選択は慎重に
・名義預金と認定されないための対策
・複数人への分散贈与の活用
・専門家への相談タイミング

それぞれ詳しく解説します。

贈与記録の長期保管が必須

加算期間が7年に延長されたことで、より長期間の贈与記録保管が必要となりました。

・贈与契約書の作成と保管
・銀行振込による送金記録
・贈与税申告書の控え(110万円超の場合)
・受贈者の預金通帳の管理

これらの記録を最低でも7年間、できれば10年程度保管しておくことが推奨されます。

相続時精算課税制度の選択は慎重に

相続時精算課税制度は一度選択すると、その贈与者からの贈与について暦年課税に戻ることはできません。将来の相続財産の総額や、相続税の基礎控除額との関係を十分に検討した上で選択する必要があります。

名義預金と認定されないための対策

単に子や孫名義の口座に振り込むだけでは、名義預金と認定されるリスクがあります。

・受贈者が口座の存在と管理権限を認識している
・受贈者が通帳・印鑑を管理している
・贈与契約書を作成している

これらの条件を満たし、真正な贈与である証拠を残すことが重要です。

複数人への分散贈与の活用

基礎控除110万円は受贈者1人あたりの金額です。配偶者、子、孫など複数人に分散して贈与することで、1年間により多くの財産を非課税で移転できます。

たとえば、子2人と孫4人の計6人に贈与すれば、年間660万円(110万円×6人)まで非課税での贈与が可能です。

専門家への相談タイミング

相続税対策は長期的な視点と専門知識が必要です。以下のような状況では、早めに税理士等の専門家に相談することをお勧めします。

・相続財産が基礎控除額を超える見込みがある
・不動産や株式など評価が複雑な財産を保有している
・事業承継を検討している
・家族構成が複雑(再婚、養子縁組など)
・60歳を超えて相続対策を始める場合

特に令和6年以降は制度が複雑化しているため、個別の状況に応じた最適な対策の立案には専門家のサポートが不可欠です。

生前贈与で迷うことがあったら専門家に相談を

生前贈与は相続税の負担を軽減するための有効な手段ですが、制度が複雑化しているため、個別の状況に応じた適切な判断が求められます。特に不動産や株式などの評価が複雑な財産がある場合は、税理士等の専門家に相談しながら、長期的な視点で対策を立てることが成功の鍵となるでしょう。

令和7年度税制改正でも結婚・子育て資金贈与の延長など、さらなる制度変更が行われています。最新情報を継続的にチェックし、必要に応じて対策を見直していくことが、賢明な相続税対策につながるのです。

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監修者 税理士 棚田秀利