不動産の相続税評価額とは?計算方法や減額要素を詳しく解説!
不動産の相続税評価額とは、不動産の相続税や贈与税を算出する際の基準となる価額のことです。相続税評価額により、支払いが必要になる税金の金額が左右されます。そのため、正しい計算方法や減額するための要素を知りたいという方も多いでしょう。
本記事では、不動産の相続税評価額について解説したのち、計算方法・減額要素についても詳しく解説します。不動産の相続税や贈与税で損したくないとお考えの方は、ぜひこちらの記事を参考にしてください。
相続税評価額とは
相続税評価額は財産評価額とも呼ばれ、相続税や贈与税を計算する際の基準となる価額のことです。相続・贈与などにより取得した、家屋や土地といった不動産を評価します。
土地と家屋の評価方法はそれぞれ異なり、以下の方法が適用されます。
【土地の評価方法】
- ● 路線価方式を用いる
- ● 倍率方式を用いる
【家屋】
- ● 固定資産税評価額を用いる
これらについて、詳しく見ていきましょう。
路線価方式
土地の相続税評価額の評価方法のひとつとして、路線価方式があります。路線価方式とは、国税庁が毎年7月に発表している「路線価」を基に、土地の相続税評価額を計算する方法のことです。
路線価は「道路(通路)に面している標準的な宅地『1平方メートルあたりの価額』」のことであり、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」に記載されています。
路線価方式を使用した土地の相続税評価額の計算方法は、以下のとおりです。
土地の相続税評価額=路線価 × 土地の面積 × 各種補正率
計算に使用する「路線価」「土地の面積」「各種補正率」については、以下でさらに詳しく解説していきます。
路線価は路線価図で確認する
土地の相続税評価額を路線価で計算する場合の「路線価」の確認方法を、解説します。手順は、大きく分けて以下の3ステップです。
- 保有している土地の都道府県の路線価図を見る
- 路線価図で土地の住所を調べ、数字が記載されているか確認する
- 記載されている数字に1,000を乗じ、計算に使用する「路線価」を算出する
使用する路線価図は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」です。
土地の住所を調べた際、上記の路線価図に数字の記載がなかった場合は、このあと解説する「倍率方式」を使用します。
土地の面積は固定資産税の納税通知書などで把握する
土地の相続税評価額を計算するために、相続・贈与で譲り受けた土地の面積を把握する必要があります。土地の面積を把握する方法は、以下のとおりです。
- ● 固定資産税の納税通知書で確認(地積という項目の「土地の面積(地積)」)
- ● 登記事項証明書で確認(表題部という項目の「地積 ㎡」)
いずれかの方法で、土地の面積を把握しましょう。
土地の形状による各種補正率で調整する
相続・贈与で取得した土地の形が以下に該当する場合、土地の相続税評価額の補正がされ、相続税・贈与税などを減額できる可能性があります。
- ● 不整形地である(三角形・L字型・平行四辺形や台形・境界線がギザギザなど)
- ● 間口が狭小である
- ● 奥行きが長大である
補正率に関しては、国税庁の「価格補正率表」で調べられます。きれいな四角形以外の土地である場合、補正率が適応になる可能性があるでしょう。
土地の形状を正しく判断し適応になる補正率を調べられないと、相続税・贈与税が減額できず損することも考えられます。不安な場合は、専門家に調査を依頼するのがおすすめです。
倍率方式
線価方式が適用にならない土地の場合は、倍率方式を使用して相続税評価額を計算することになります。計算方法は、以下のとおりです。
土地の相続税評価額=固定資産税評価額 × 倍率
計算で使用する固定資産税の評価額は、市区町村の役場や都税事務所で確認できます。また、毎年4月下旬~5月に送られてくる「固定資産税の納税通知書」でも、確認が可能です。倍率の確認方法は、以下で詳しく解説します。
倍率は倍率表で確認する
倍率の確認は、路線価と同じく、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で調べます。手順は3ステップ、以下のとおりです。
- 1. 保有している土地の都道府県の路線価図を見る
- 2. 路線価図に数字がなければ、評価倍率表を開く(ページの左上部参照)
- 3. 倍率表で住所を調べ倍率を確認する
固定資産税評価額に乗ずる倍率等から、宅地・田・畑・山林など土地の種類を選択し、倍率を確認しましょう。
補正の必要はない
倍率方式で計算する場合、土地の形状などによる補正は必要ありません。倍率方式の計算で使用する「固定資産税評価額」は、土地の形状などが反映され、すでに価格が適正化されているためです。
市区町村の役場や納税通知書で確認できる「固定資産税評価額」と、国税庁の評価倍率表で確認できる「倍率」を使用し、相続税評価額の計算をおこなってください。
建物の相続税評価額
建物(家屋)の相続税評価額は、固定資産税評価額を使用し計算します。建物の相続税評価額の計算方法は、以下のとおりです。
建物の相続税評価額=固定資産税評価額 × 1.0
したがって、建物の場合は、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。
マンションの評価額
自宅として利用していたマンションの一室を相続した場合の相続税評価額は「所有している建物部分」と「敷地利用権である土地部分」の、2つの相続税評価額を合計して算出します。
それぞれの計算方法は、以下のとおりです。
相続税評価額=固定資産税納税通知書の評価額または価格部分 × 1.0
したがって、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。
【土地(マンションの敷地権)|相続税評価額の計算方法】
※①と②のどちらか、適用になるほうで計算する。
①路線価適用の場合
相続税評価額=路線価 × マンション敷地全体の土地面積 × 所有している敷地権割合
②倍率方式適用の場合
相続税評価額=倍率 × マンション全体の固定資産税評価額 × 所有している敷地権割合
マンションの場合「土地を所有していないのでは?」と考えられがちですが、敷地権=所有権となり、土地の共有持分も同時に所持しています。そのため、建物だけでなく土地も相続税評価額として計算する必要があるのです。
土地の評価額の減額要素
路線価方式で解説した補正率だけでなく、土地の評価額を減額するための要素はほかにもあります。土地の評価額の主な減額要素は、以下のとおりです。
- ● 借地権
- ● 貸家建付地
- ● 地積規模の大きな宅地
これら減額要素についての詳細と相続税評価額の計算方法について、解説します。
借地権
土地を借りている借地権の場合も、相続税の対象です。そのため、相続税評価額を計算することになります。相続税評価額を計算する際に「借地権割合」を乗じることで、減額になる可能性があります。計算方法は以下の通りです。
相続税評価額=土地の相続税評価額 × 借地権割合
土地の相続税評価額は、本記事の「相続税評価額とは」にて解説した、路線価方式か倍率方式の適用になるほうで算出してください。
計算式内で使用する借地権割合は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」内の路線価図の上部にあるA~Gの表を使用します。
地図上で記載されている数字の右横にあるアルファベットが、その土地の借地権割合です。定められているパーセントを使用し、相続税評価額の計算をしましょう。
貸家建付地
貸家建付地(かしやたてつけち)は、所有している土地に賃貸マンションや賃貸アパート・戸建ての賃貸などが建っている土地のことです。貸家建付地は建物を人に貸している状態であり土地を所有者の自由にできないことから、不動産評価額が減額できます。
貸家建付地の相続税評価額の計算方法は、以下のとおりです。
相続税評価額=自家用の場合の土地評価額 − 自家用の場合の土地評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
借家権割合も、借地権割合と同じく国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
賃貸割合は、全部の部屋の中で実際に貸し出しがされている部屋の割合のことです。部屋の戸数ではなく、床面積(㎡)で算出します。
【賃貸割合の計算方法】
賃貸割合 = 貸出されている部屋の総床面積 ÷ 賃貸家屋の各独立部分の床面積合計
賃貸として貸し出している部屋が多いほど、相続税評価額の減額の割合が上がります。
地積規模の大きな宅地
土地が500㎡を超える地積規模の大きな宅地の場合、一定の要件を満たすことで相続税評価額が減額されます。
三大都市圏と三大都市圏以外で要件は異なり、大まかな内容は以下のとおりです。
三大都市圏 | 三大都市圏以外 | |
面積 | 500㎡以上の地積の宅地 | 1,000㎡以上の地積の宅地 |
共通要件 | ・市街化調整区域に所在・都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在・指定容積率が400%以上の地域・財産評価基本通達22-2に定める大規模工場用地 | |
限定要件 | ・首都圏整備法内、特定の条例に規定する近郊整備地帯・近畿圏整備法内、特定の条例に規定する近郊整備地帯・中部圏開発整備法内、特定の条例に規定する都市整備区域 | – |
(参考:国税庁|No.4609 地積規模の大きな宅地の評価)
上記は、内容を抜粋した規定です。実際にはより細かな要件が定められているため、国税庁の発表している要件をしっかりと確認する必要があります。計算方法は路線価方式と倍率方式で異なります。
【地積規模の大きな宅地|相続税評価額の計算方法】
①路線価方式
相続税評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 不整形地など画地補正率 × 規模格差補正率 × 地積
②倍率方式
(A)または(B)の、価額が低いほうを相続税評価額とします。
- ● (A)固定資産税評価額 × 倍率で求められた価額
- ● (B)標準的な宅地1㎡の価額 × 画地補正率 × 規模格差補正率 × 地積
上記のとおり、地積規模の大きな宅地の判断や計算方法は複雑だと言えます。節税で損しないためにも、専門家に相談するのがおすすめです。
不動産の相続税評価額の計算は複雑!適正に納税するには専門家に相談を!
不動産の相続税評価額は、路線価と倍率方式のどちらが適用になるかを判断したうえ、正しい計算式に当てはめれば、評価額の算出は可能です。
ただし、土地により形や、賃貸建物があるか地積規模が広大かといった条件は異なります。それぞれの不動産に適した補正率・減額要素などを正しく判断できないと、相続税評価額の減額を適切におこなえません。
不動産の相続税評価額は、判断や計算が複雑になりやすい傾向にあります。損をしないためにも、専門家へ相談し適切な相続税評価額を算出することがおすすめです。
ひろしま相続・不動産ホットラインでは、相続専門の税理士や不動産鑑定士が在籍する税理士事務所です。6名の専門家にて、不動産の相続税評価額の計算をワンストップでおこないます。不動産の相続税評価額を適切に算出し、しっかり節税対策につなげたいとお考えの方は、ぜひひろしま相続・不動産ホットラインにご連絡ください。