相続税申告を税理士に相談すべきケースとメリット・選び方を解説
相続税申告は複雑な手続きが多く、適切な節税対策を行わなければ本来支払う必要のない税金を納めることになりかねません。相続税額で損してしまわないためにも、税理士に相談したほうが良いケースもあるでしょう。
本記事では、相続税申告を税理士に相談すべきケースとその理由、相談するメリット・デメリットを解説していきます。
信頼できる税理士の選び方も紹介しているため、相続が発生して悩んでいる・これから相続が発生する予定といった方は、ぜひ参考にしてください。
相続税申告の相談を税理士にすべき7つのケース
相続税の申告は、以下のようなパターンに当てはまる場合、税理士に相談すべきだと考えられます。
● 自分で相続税申告の手続きができない
● 相続税がかかるかどうかわからない
● 相続税の納税額をできる限り抑えたい
● 相続財産の金額が大きい
● 相続財産の中に不動産がある
● 相続財産に事業用資産や株式が含まれていた
● 「税務署からのお尋ね」が届いた
これらのケースではなぜ税理士に相談したほうが良いのか、具体的な理由を解説していきます。
自分で相続税申告の手続きができない
ご自身で相続税申告の手続きができないと感じる場合、専門家である税理士にすべてをおまかせするのが良いと考えられます。
相続は頻繁に起こることではないため、手続きに不慣れである方が多いでしょう。また、手続きをするためには、さまざまな書類の準備が必要です。平日の日中に各種機関で書類を取得したり、複雑な計算を行ったりする作業を普段の生活をしながら行うのは、容易ではありません。
さらに、相続税には申告期限があります。被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内におこなわなければいけません。この期間内に財産調査や評価、申告書作成や必要書類の収集をすべて完了させる必要があるため、時間的な制約も大きな負担となります。
相続税申告の準備をする時間がない方は、税理士への相談がおすすめです。
相続税がかかるかどうかわからない
相続税がかかるかわからないような場合、生前・死亡後に関わらず、税理士に相談するのが良いでしょう。
まず生前では、相続税がかかるか、かかるとしたらいくらになるのかといったシミュレーションだけでなく、暦年贈与や相続時精算課税制度、生命保険の活用など生前贈与などをおこなうことで効果的に税金対策をできる場合があるためです。
また「基礎控除額(※1)よりも遺産総額(※2)のほうが下回る」場合は申告も不要となります。しかし、そもそも相続税は「現金・預貯金」「土地・建物」「有価証券」「生命保険金」「退職手当金」「債務」などが対象となり、特に不動産の評価については路線価や固定資産税評価額を用いた複雑な計算が必要となるため、一般の方には計算が困難です。
申告漏れが税務署などに把握されると、場合によっては「過少申告加算税」や「無申告加算税」として追徴税となりかねません。
相続税がかかるかどうかを正しく判断するためにも、税理士への相談がおすすめです。
(※1)3,000万円+600万円×法定相続人の数
(※2)価値のある財産からマイナス費用(借金など)を除いたあとの財産
相続税の納税額をできる限り抑えたい
税理士に相談することで、さまざまな制度を活用し、節税につながる提案を受けることが可能です。
預貯金や土地・建物といった不動産、有価証券に加えてそれぞれの遺産に配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例、事業承継税制などの特例制度や土地の形状や利用状況による計算に使用する補正率といった、節税につながる制度があります。これらを限られた申告期限の中ですべて調べ、正しく活用するのは、なかなか難しい場合が多いでしょう。
相続税がかかるとわかっている場合、少しでも節税ができると支払う相続税額の負担が減ります。納税額をできる限り抑えたいとお考えの方は、税理士に相談するのがおすすめです。
相続財産の金額が大きい
相続財産の金額が大きい場合、計算を間違えば納税額に大きな誤差が出てしまいかねません。また、複数の遺産があり相続財産の金額が大きい場合、申告期限内にすべての相続税額を調べるのは、難しいこともあるでしょう。
一般的に、遺産総額が1億円を超える場合は税務調査の対象となりやすく、適切な申告を行うことがより重要になります。相続財産の金額が大きい・相続する遺産が多く金額が大きいといった場合は、すべての調査を税理士におまかせするのがおすすめだといえます。
相続財産の中に不動産がある
相続財産の中に不動産がある場合、土地の形や建物の状況などにより、節税につながる補正率が適用になることがあります。
また、土地の相続では、国税庁が毎年発表している「財産評価基準書」を使用した計算が必要なため、複雑に感じる方もいらっしゃるでしょう。不動産の評価においては、次のような補正要因があります。
● 間口狭小補正
● 奥行長大補正
● 角地加算
● セットバック
● 高圧線下の土地 など
これらを適切に適用することで大幅な節税が可能になる場合があります。土地・建物といった不動産が相続財産の中にある方は、税理士へ相談するのがおすすめです。
相続財産に事業用資産や株式が含まれている
事業を営んでいた被相続人から事業用資産を相続する場合や、上場株式・非上場株式を相続する場合は、評価方法が特に複雑になります。
非上場株式については、会社の規模や事業内容によって類似業種比準価額方式、純資産価額方式、配当還元方式などの評価方法を選択する必要があり、専門知識なしには適切な評価が困難です。また、事業承継税制などの特例制度を活用できる可能性もあるため、税理士への相談が必要不可欠です。
「税務署からのお尋ね」が届いた
税務署から「相続税についてのお尋ね」といった手紙が届いた場合、税理士に相談するのが良い場合があります。
相続税についての手紙は、故人の情報などから税務署が「相続税申告が必要な可能性がある」と思われる方に対して送っています。送られてくる時期は死亡後数か月~数年後になることもある手紙です。
この「お尋ね」に対して適切に対応しないと、税務調査の対象となる可能性が高まります。送られてきた段階で相続財産の有無がはっきりしていない場合、税理士に相談し、相続財産について調査をおこなうのが良いでしょう。
相続税申告を税理士に相談する5つのメリット
相続税申告を税理士に相談するメリットは、主に以下の5つです。
● 相続税申告の手間がかからない
● 節税対策を検討してくれる
● 二次相続に配慮した手続きをしてもらえる
● 税務調査対応をしてもらえる
● 書面添付制度により税務調査率を下げられる
これらについて、くわしく見ていきましょう。
相続税申告の手間がかからない
相続税申告の手間がかからないことは、税理士に依頼する大きなメリットだといえます。
相続税を申告するためには、相続税を算出しなければなりません。相続税を正しく計算するには、どのような相続遺産があるかを把握し、それぞれ適切な計算方法を用い、場合によっては補正率や特例制度を考慮する必要があります。
そのうえ、さまざまな書類の準備もおこなわなければならないため、非常に手間のかかる作業だといえます。一例ですが、具体的には次のような書類が必要です。
● 戸籍謄本
● 住民票
● 印鑑証明書
● 固定資産税評価証明書
● 預貯金の残高証明書
● 有価証券の評価証明書 など
場合によっては1回の手続きで数十種類の書類が必要になる場合もあります。準備の手間をかけたくない・仕事や育児などの合間に準備するのは物理的に難しいという方にとって、税理士に依頼するのはメリットのある選択でしょう。
節税対策を検討してくれる
相続税は、相続税を算出する際に補正率や特例制度を用いることで、節税できる場合があります。また、状況によっては、生前贈与なども節税対策として有効です。しかし、補正率や特例制度などは、知らなければ正しく用いることができません。
相続などを専門にしている税理士は、最新の税制改正情報を把握しており、依頼者の状況に最適な節税対策について相談することも可能です。税理士に依頼することで、数百万円から数千万円の節税効果を得られるケースも珍しくありません。相続税で損をしないで済むことは、プロである税理士に相談するメリットでしょう。
二次相続に配慮した手続きをしてもらえる
相続では、二次相続が発生する場合があります。二次相続が発生する流れは、以下のとおりです。
● 父親が亡くなり母親が遺産を相続(一次相続)
● 母親が亡くなる
● 母親の遺産を子供が相続(二次相続)
二次相続では配偶者控除が使用できないことや、法定相続人の数が減ることで基礎控除額が減少する特例の利用が難しくなる・基礎控除額が低くなるといった事情により、相続税額が増えることが多くなっています。
税理士へ相談することで、一次相続と二次相続をトータルで考えた最適な遺産分割方法を提案してもらえるため、相続税額をおさえられる可能性が高まります。
税務調査対応をしてもらえる
相続税申告後に税務調査が実施される場合があります。国税庁の統計によると、相続税の税務調査率は約10%となっており、他の税目に比べて高い水準にあるのが現実です。
税理士に申告を依頼していれば、税務調査の立ち会いや資料の準備、税務署との交渉まで一貫して対応してもらえます。申告内容を熟知している税理士がサポートすることで、適切な対応が可能となり、追徴税額を最小限に抑えられるでしょう。
書面添付制度により税務調査率を下げられる
税理士が申告書に「書面添付制度」を適用することで、税務調査の実施率を大幅に下げることができます。書面添付制度とは、税理士が申告書の作成過程や確認した事項を記載した書面を申告書に添付する制度です。
この制度を利用することで、税務署は税務調査を実施する前に税理士に対して意見聴取を行うことができ、疑問点が解決されれば税務調査が省略される場合があります。実際に、書面添付制度を適用した申告書の税務調査率は1%以下に抑えられているという実績もあります。
相続税申告を税理士に相談するデメリット
相続税の申告で税理士に相談することはメリットが多いと考えられますが、デメリットになり得る部分もあります。
● 税理士報酬が発生する
● シミュレーションが完璧ではない
● 相続に強くない税理士もいる
これらについて、くわしく見ていきましょう。
税理士報酬が発生する
税理士に相談することで、税理士報酬が発生します。遺産総額の0.5~1.5%が報酬の相場だといわれますが、相談する税理士により報酬額の設定はまちまちです。一般的な報酬の目安は以下のとおりです。
● 遺産総額5,000万円以下:30万円~60万円
● 遺産総額1億円以下:50万円~100万円
● 遺産総額3億円以下:100万円~200万円
遺産総額により報酬が変化することが多いため、財産総額によっては、多くの費用がかかる可能性もあります。ただし、適切な節税対策により税理士報酬以上の節税効果を得られるケースが多いため、費用対効果を総合的に判断することが重要です。
シミュレーションが完璧ではない
二次相続や生前相続の場合は、現行の税法を用いてシミュレーションをおこないます。そのため、被相続人が亡くなった際にシミュレーション時と税法が変わっていた場合、シミュレーションどおりの相続額ではなくなる可能性もあるのです。
また、将来の財産価値の変動や家族構成の変化なども予測困難な要素となります。税理士へ二次相続や生前相続について相談する際は、完璧なシミュレーションは難しいことを理解する必要があるでしょう。
相続に強くない税理士もいる
税理士の中でも、相続を専門にしている税理士と、そうでない税理士がいます。税制や相続に関する特例などは時代の流れの中で変化することもあるため、専門の税理士のほうが新しい決まりなどに詳しいといえるでしょう。
相続税申告の経験が少ない税理士の場合、適用可能な特例を見落としたり、財産評価を適切に行えなかったりするリスクがあります。また、専門外の税理士に依頼すると、適切な節税対策をおこなってもらえなかったり、場合によっては高い報酬を提示されたりといったことも考えられます。
相続税申告お願いする税理士の選び方6つのポイント
相続税の申告を依頼する税理士は、以下のポイントを押さえて選ぶのが良いでしょう。
● 相続税申告の実績・件数
● 税理士報酬が明確かどうか
● どこまでの手続きが対応可能か
● 税務調査に入られる確率が低いか
● 相続税専門の資格や研修を受けているか
● 他の専門家との連携体制があるか
節税や税理士報酬などでご自身の不利益になってしまわないよう、税理士選びは慎重におこなってください。
相続税申告の実績・件数
相続関連で税理士を選ぶ際には、相続税申告の実績や件数が多い税理士を選ぶようにしましょう。相続税申告の実績が多ければ、その分さまざまな経験を積んでいると考えられるためです。
年間50件以上の相続税申告実績があれば、十分な経験を持つ税理士といえるでしょう。また、累計申告件数が500件を超えている税理士であれば、より安心して依頼することができます。対応力の高い税理士にお願いできれば、より適切な節税対策や対応をおこなってもらえる可能性が高まります。
不動産・相続といった内容を得意としている場合でも、実際の申告件数を確認するようにしましょう。
税理士報酬が明確かどうか
相続税の申告を適切におこなってもらえても、税理士報酬があまりに高いなどとなれば、結果的に損してしまうことになりかねません。
事前に詳細な見積もりを提示してもらい、基本報酬や加算報酬、追加費用などの内訳を明確にしてもらうことが重要です。また、見積もりの金額だけではなく、サービス内容やそれにかかる料金が明確かを確認しましょう。
どこまでの手続きが対応可能か
相続税申告といっても、申告するためにはさまざまな手続き・準備が必要になります。具体的には次のような書類が必要です。
● 相続人全員の戸籍謄本
● 住民票
● 印鑑証明書
● 固定資産税評価証明書
● 預貯金の残高証明書
● 有価証券の評価証明書 など
このように、必要書類は多岐にわたります。相続人全員の戸籍謄本や住民票・法定相続人一覧図、場合によっては遺産協議書の作成なども必要です。
相続税申告の中でも、どこまで書類の準備をしてもらえるのかや、万が一税務調査が入った場合に立ち会いしてもらえるかといった対応範囲も、確認するようにしましょう。
税務調査に入られる確率が低いか
相続税の申告後、税務調査に入られる可能性があります。税務調査は、相続額が大きい・海外資産が多い・申告内容に不備があるなどの場合、入りやすいといわれています。
税務調査で申告漏れや不備が見つかれば、追徴課税となりかねません。
優秀な税理士が作成した申告書の税務調査率は5%以下に抑えられているケースも多く、税務調査に入られている確率が低い税理士は、申告内容が適切で不備などが少ないことが考えられるため、選び方のひとつの目安にすると良いでしょう。
相続税専門の資格や研修を受けているか
相続税は専門性の高い分野であるため、相続税専門の資格や研修を受けている税理士を選ぶことが重要です。例えば、相続税実務研修や不動産評価に関する専門研修を修了している税理士は、より高度な知識を持っていると考えられます。
また、相続関連の書籍を出版していたり、セミナーで講師を務めていたりする税理士は、専門性の高さを示す指標となるでしょう。
他の専門家との連携体制があるか
相続手続きでは、税理士以外にも司法書士(登記手続き)、弁護士(遺産分割協議)、不動産鑑定士(不動産評価)などの専門家が必要になる場合があります。
これらの専門家と連携している税理士事務所であれば、ワンストップでさまざまな手続きに対応してもらえるため、依頼者の負担を大幅に軽減することができます。連携体制の有無についても確認しておくのがおすすめです。
その他の士業に相談したほうが良いケース
相続税申告の際、税理士以外の士業に相談したほうが良いケースがあります。
● 弁護士に相談すべきケース
● 司法書士に相談すべきケース
● 行政書士に相談すべきケース
これらについて、くわしく解説します。
弁護士に相談すべきケース
相続の際、相続人同士でトラブルが発生したなどの場合、弁護士に相談すべきだといえます。裁判所への申し立てや遺産分割の代理交渉は、弁護士にしかおこなえません。
また、相続放棄や限定承認の手続き、相続人の調査や連絡の取れない相続人がいるなどといった場合にも、弁護士であれば対応が可能です。具体的には以下のような場合に弁護士への相談が必要です。
● 遺留分侵害額請求を受けた場合
● 遺産分割協議がまとまらない場合
● 遺言書の有効性に争いがある場合
● 相続人の中に行方不明者がいる場合
遺産相続の割合や遺言の有効性など揉め事となっている場合には、弁護士に相談しましょう。
司法書士に相談すべきケース
司法書士は登記など司法書士法の専門家として、登記に関する手続きをおこなえます。
相続による不動産の名義変更(相続登記)については、2024年4月から義務化されており、生前相続などに関わる遺言書の作成や検認、相続放棄の手続き・遺産分割協議書の作成などは、税理士に頼むより司法書士に依頼するほうがリーズナブルな場合も多いでしょう。
司法書士に依頼できる主な業務は以下のとおりです。
● 相続登記(不動産の名義変更)
● 遺産分割協議書の作成
● 相続放棄の申述書作成
● 遺言書の作成支援
ただし、司法書士は相続税の申告業務をおこなえません。相続税の計算や節税対策の助言などもできないため、税務に関する業務は税理士に依頼することになります。
行政書士に相談すべきケース
行政書士は、行政書士法の専門家として、省庁や市区町村などに提出する書類の作成・事実証明に関する作成などをおこなっています。
相続人調査や相続財産調査・遺言書の作成などはおこなえますが、相続登記はできません。また、裁判所に提出する相続放棄申述書などの作成も、行政書士がおこなえない業務です。
ただし、以下の業務については行政書士の専門分野となります。
● 自動車の名義変更
● 各種許認可の名義変更
● 相続人調査(戸籍収集)
● 相続財産調査
ただし、自動車の名義変更は行政書士にしかできない手続きとなっています。役所などに提出する許認可関連の書類作成のみをお願いしたい場合・自動車の名義変更をしたい場合、行政書士に相談すると良いでしょう。
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相続税申告は複雑な手続きであり、適切な対応を行わなければ大きな損失を被る可能性があります。相続税の申告は、ご自身でおこなうことも可能です。しかし、特例や補正などを正しく用いないと、適切な節税はできません。
また、申告漏れや申告内容の不備などがあると税務調査に入られる可能性があります。場合によっては追徴課税も考えられます。
相続税の支払いで損をしないためにも、相続が発生した場合やこれからの相続対策をおこなう方は、相続税専門の税理士に相談することがおすすめです。
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