突然相続が発生したらどうする?確認事項や注意点を解説
人間の死は予想できないものです。身内の死はショックですが、同時に相続にまつわる面倒な手続きも発生します。この記事では、突然発生した相続にどのように対応したらよいかを解説。確認すべき事項や注意点なども詳しく紹介するので参考にしてください。
突然相続が発生した場合にすること
突然相続が発生した場合、次のことを確認しましょう。
- ● 遺言書の有無を調べる
- ● 自分が相続人かどうかを調べる
- ● 相続財産を調べる
- ● 遺産分割協議で相続割合を確認する
- ● 相続税の有無を確認する
事前に相続が発生するのを予測できた場合と流れは同じですが、突然の相続発生の際には期限などに気をつけましょう。
遺言書の有無を調べる
相続発生を知り、最初にすべきことは遺言書の有無の確認です。相続税の申告や納付は「相続開始を知った日の翌日から10カ月」とされており、期間内に納付しなければなりません。
できれば遺言書の有無を3カ月以内に調べましょう。遺言書を発見した場合、家庭裁判所に提出し「検認」を請求しなければなりません。「検認」とは、遺言書の内容を明確にし、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。
遺言書の検認を申し立てると、通常は1カ月以内に家庭裁判所から相続人全員に、検認期日の通知が郵送されます。指定された日に相続人が集まり、裁判官による検認が行われる流れです。なお、検認は被相続人自身が管理していた自筆証書遺言が対象となります。公正証書遺言や法務局に保管した自筆証書遺言の場合は検認不要です。
参照:裁判所|遺言書の検認
自分が相続人かどうかを調べる
遺言書の有無と同時に、自分が相続人に該当するのかどうかを調べましょう。相続人が誰かを確認するには、被相続人の戸籍謄本を確認します。本籍地が遠方にある場合、取り寄せのために1カ月かかる場合も想定しておきましょう。
相続人となった場合は、次のうちいずれかを選びます。
- ● 単純承認
- ● 限定承認
- ● 相続放棄
借金などの遺産を相続したくなければ、相続放棄が可能です。そのためには、相続があったことを知ってから3カ月以内に行わなければなりません。詳細については後述します。
相続財産を調べる
自分自身が相続人だと判明したら、1カ月以内に相続財産のすべてを確認しましょう。不動産など評価が必要なものは、専門家に依頼するため時間がかかります。また、借金なども相続の対象となるため、相続放棄するなら早めの確認が必要です。(相続放棄は3カ月以内)
相続の対象となる財産は次のとおりです。
- ● 不動産
- ● 預貯金
- ● 有価証券
- ● 自動車・船舶
- ● 家財道具
- ● 貴金属・宝石
- ● 債券
- ● 無体財産権
- ● 生命保険
- ● 保険金
- ● 死亡退職金
- ● 借金・未払い金
無体財産権とは、知的創造物である発明やアイデアなど形のないもので、特許権・商標権・実用新案権・意匠権・回路配置利用権・育成者権・商号および著作権などです。それぞれ計算式があり専門知識が必要です。専門家に依頼すれば時間を要するため、早めの対応を心がけましょう。
遺産分割協議で相続割合を確認する
遺言書がない場合、もしくは遺言書の内容に不備があるため認められない場合は、遺産分割協議が必要です。財産を確認し、相続放棄などの判断を終えたあと、相続人同士で遺産分割協議を行いましょう。
相続財産の種類が少なく、相続人同士の意思がそろっていれば1日で終わることもあります。反面、まとまらない場合は相当な時間がかかる場合も。家庭裁判所に調停を申し立て、何度も話し合うため、合意に至るまでに数カ月から数年かかるケースもあります。相続割合が決まれば、不動産の相続登記や有価証券の名義変更もこの段階で行いましょう。
相続税の有無を確認する
相続税を納めなければならないかどうかは、相続する財産の総額や法定相続人の数によって異なります。まずは課税対象となる遺産額を確認しましょう。
遺産総額より債務や葬式費用、非課税財産を差し引き、相続開始前3年以内の贈与財産を加えたものが正味の遺産額です。そこから基礎控除を引いたものが課税対象となる遺産となります。
相続税の基礎控除額の計算式は次のとおりです。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
法定相続人とは、民法に基づく相続人を意味します。妻と子ども2人が相続人の場合、法定相続人は3人、基礎控除額は4,800万円となります。正味の遺産総額が8,000万円だった場合「8,000万円‐4,800万円=3,200万円」に相続税がかかります。相続税の税率は、3,000万円以上5,000万円以下は20%のため、640万円が納めるべき相続です。
参照:国税庁|相続税の税率
突然相続が発生した場合の対処法
突然の相続発生で、3カ月以内に判断しなければいけないのが相続するかの判断です。相続には次のような対処があります。
- ● 単純承認
- ● 限定承認
- ● 相続放棄
順にみていきましょう。
単純承認
単純承認とは、相続人が被相続人の権利義務を無限定に承認することです。プラスの財産だけでなく、借金や未払い金などのマイナスの財産もすべて引き継ぎます。マイナスの財産には次のようなものがあります。
- ● 借金(ローン・クレジット未決済分)
- ● 買掛金
- ● 未払いの税金・家賃・地代・医療費・水道光熱費
- ● 未払いの損害賠償金・慰謝料
- ● 敷金・保証金などの預り金
- ● 保証債務
単純承認は一般的な相続方法であり、特別な手続きは不要です。ただし、民法に定められている一定の行為をした場合は、相続すると認めたことになり相続放棄や限定承認ができなくなります。この場合は「法定単純承認」したことになります。
「民法に定められている一定の行為」とは、次のとおりです。
- ● 被相続人の預貯金口座を解約した
- ● 相続財産に含まれる不動産を売却した
- ● 被相続人の借金を相続財産から返済した
- ● 受取人が定められていない死亡退職金や生命保険金を受け取った
- ● 相続財産を隠した
- ● 相続財産を自分のために消費した
- ● マイナス財産をわざと財産目録に相続財産を記載しなかった
なお、被相続人の財産から葬儀費用を支払ったり、金銭的価値がないものを形見分けしたりなどの行為は、法定単純承認には該当しません。
参照:民法第920条、921条
限定承認
限定承認とは、相続財産からマイナスの財産を清算して、残ったプラスの財産を引き継ぐ方法です。限定相続も相続の放棄と同じく、相続があると知ったときから3カ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。
具体的な方法は、相続財産の目録を作成し、被相続人最後の住所地の家庭裁判所に必要な書類を添付した申述書を提出します。限定承認のメリットは、相続債務を相続財産の限度を超えて弁済する必要がなくなる点です。デメリットは、手続きには相続人全員でおこなわなければならず、債務者への連絡など面倒な手続きが多い点です。
参照:民法第922条
相続放棄
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も一切の相続する権利を放棄することです。借金などの負債がプラスの財産よりも多い場合、原則として債権者からの請求に応じざるを得ません。最悪の場合、被相続人の債権者としての地位も継承してしまい、財産差し押さえなどの強制執行対象になる可能性があります。
このような事態を避けるために、被相続人からの財産を一切継承しない相続放棄という制度があるのです。ただし相続放棄は、相続の開始を知った時から3カ月以内が期限となっているので注意しましょう。
突然相続が必要となるケースと対処法
知らないうちに相続人になっており、突然その事実を知るのは、次のようなケースです。
- ● 固定資産税の未納通知が来た
- ● 金融機関から郵送物が来た
- ● 知らない親族や代理人から突然遺産分割の連絡が来た
- ● 税務署から「相続税についてのお尋ね」が来た
詳しく解説していきます。
固定資産税の未納通知が来た
被相続人が一定以上の評価額の不動産を保持している場合、市区町村へ固定資産税を納付する義務があります。納税義務者が死亡すると、市区町村の資産税課は、固定資産税の納税通知書を相続人に送付されます。相続人が複数人の場合「共有不動産の固定資産税納付代表者届(選定届)」のような書類が届いて知る場合もあるため注意が必要です。
不動産の所有者でもないのに、納税通知書が届くと驚きますよね。実は固定資産税の納税は、登記と連動していません。しかし「相続登記をしていないから納税義務がない」とはならず、死者名義のままであっても、役所側は相続人に未納金を請求します。
金融機関から郵送物が来た
銀行や貸金業者などの金融機関から、ローンの支払い請求などの郵送物が届くことによって知るケースもあります。元金を長期滞納している場合、利息や損害員が膨れ上がっている可能性もあります。
負の財産が多く遺産放棄をするのであれば、3カ月という期限内に手続きが必要です。身に覚えがないとスルーせずにしっかり対応しましょう。
知らない親族や代理人から突然遺産分割の連絡が来た
ある日突然、知らない親族や代理人から次のような連絡が来るケースがあります。
「あなたは、亡〇〇氏の相続人であることが判明しました。つきましては相続手続きへの協力をお願いしたく連絡いたしました。」
これは養子縁組や離婚、子のいない遠い親戚など複雑なケースが想定されます。さらに相続財産に不動産が含まれていることが多いのも特徴です。遺産分割は、相続人全員の合意が必要なため、まったく知らない親戚だとしても一堂に会して遺産分割協議をする必要があります。非常に難しいケースとなることが多いため、専門家へ相談しましょう。
税務署から「相続税についてのお尋ね」が来た
税務署から届く「相続税についてのお尋ね」とは、一定の財産がある人が亡くなった場合に届く書類です。封書の中には「相続税の申告要否検討表」が入っており、必要事項を記入のうえ税務署に返送します。
相続人の数や遺産の種類、死亡保険金額などを記載するのですが、これによって相続税申告が必要かどうかの簡易チェックもできます。通常は被相続人が亡くなって6~8カ月くらいで送付されることが多いようです。
回答は強制ではないうえ、無視しても罰則はありません。ペナルティはないものの、税務調査に発展する恐れもあります。税務調査で悪質だと認定されると「重加算税」といった重いペナルティを課されることもあります。さらに10カ月以内に相続税の申告をしなければ「無申告加算税」や「延滞税」が科されることもあるため、慎重に対応しましょう。
突然の相続は手続きが大変!だから専門家に相談を!
相続の手続きは突然発生します。しかも3カ月以内、10カ月以内など期限があるため、素早い対応が必要です。しかし、専門知識が必要なうえ手続きも大変ですよね。とくに不動産など分割しにくい財産がある場合はなおさらです。相続でもめないためにも専門家への相談をおすすめします。
ひろしま相続・不動産ホットラインは、不動産相続に特化したサポートチームです。相続専門の税理士と不動産鑑定士がスムーズな相続をお手伝いします。突然発生した相続にも対応可能です。お電話とWebのどちらでも受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。