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相続における土地と現金の分け方|公平な遺産分割を実現するために

相続において土地と現金をどう分けるかは、多くの相続人が直面する重要な課題とされています。特に不動産は分割が難しく、相続トラブルの原因になりやすい財産です。対策するには、事前にどのような分け方があるのかを理解しておくことが重要です。

本記事では、土地と現金の公平な分け方について、具体的な分割方法や手続きの流れ、注意点を詳しく解説します。相続で揉めないための対策や専門家への相談方法まで、実用的な情報をお届けします。

相続における土地と現金の基本知識

相続財産の中でも特に土地と現金は、その性質の違いから分割方法に悩むことが多いものです。不動産である土地は物理的に分けることが難しい上、感情的な価値が含まれることもあります。一方、現金は分割しやすいものの、土地と比較すると金額に差が生じることが少なくありません。

土地の相続においては、法定相続分に従って機械的に分けるだけでは、相続人全員が満足する結果を得られないことがほとんどです。たとえば、実家の土地を相続する場合、住み続けたい相続人と現金化したい相続人の間で意見が分かれることがあります。

また、相続税の観点からも、土地と現金では課税評価の方法が異なるため、税負担を考慮した分割方法を検討する必要があります。特に、土地は路線価などを基に評価されますが、実勢価格との差が生じることもあり、公平な分割を難しくする要因となっているのです。

土地と現金の相続で選べる4つの分割方法

相続財産として土地と現金がある場合、主に以下の4つの分割方法から選択することができます。

・現物分割
・代償分割
・換価分割
・共有分割

それぞれにメリットとデメリットがあるため、相続人の状況や希望に合わせて最適な方法を選びましょう。詳しく解説します。

現物分割

現物分割とは、文字通り相続財産をそのままの形で相続人に分ける方法です。例えば、相続人Aが土地を取得し、相続人Bが現金を取得するといった形で分割します。

メリットデメリット
・財産をそのまま引き継げるため、手続きが比較的シンプル
・不動産を売却せずに済むため、愛着のある土地や実家を残せる
・各相続人の希望に沿った財産分けが可能
・土地と現金の価値に差がある場合、公平な分割が難しい
・相続財産の種類が限られていると実現できないことがある
・相続人間で財産の価値評価について意見が分かれる可能性がある

現物分割は、相続財産の総額が大きく、種類も豊富にある場合に適しています。また、相続人それぞれが希望する財産が明確で、その価値にも大きな差がない場合に有効です。

ただし、土地の評価額と現金の額に大きな差がある場合は、次に紹介する代償分割と組み合わせることで公平性を保つことができます。

代償分割

代償分割とは、特定の相続人が土地などの分割しにくい財産を取得する代わりに、他の相続人に現金などで補償(代償金)を支払う方法です。

メリットデメリット
・土地などの不動産を分割せずに済む
・現金が少なくても不動産の価値に見合った代償金で調整可能
・相続人それぞれの希望(不動産を取得したい・現金が欲しい)を満たせる
・代償金を支払う相続人に十分な資金力が必要
・代償金の額を決める際に評価額で揉めることがある
・代償金の支払いが遅れると相続人間でトラブルになりやすい

代償分割は、次のようなケースで特に有効です。

・相続人の一人が実家に住み続けたいと考えている場合
・事業用の土地や建物を事業を継ぐ相続人に引き継がせたい場合
・現金よりも不動産を望む相続人と、その逆の希望を持つ相続人がいる場合

代償分割を選ぶ際は、代償金の算定方法や支払い時期、支払い条件などを遺産分割協議書に明確に記載することが重要です。また、代償金の支払いが困難な場合は、分割払いや金融機関からの借入なども検討しましょう。

換価分割

換価分割とは、相続した土地を売却して現金化し、その売却代金を相続人間で分ける方法です。その性質上、最も公平性が高い分割方法ではあるものの、デメリットもあります。

メリットデメリット
・最も公平な分割方法の一つ(現金化して分けるため)
・不動産の評価額について揉めることが少ない
・相続人全員が現金を希望する場合に最適
・不動産の売却に時間がかかることがある
・売却時の市場状況によっては期待した金額で売れないリスクがある
・思い入れのある土地や実家を手放さなければならない

換価分割は、以下のような場合に適しています。

・相続人全員が不動産を必要としていない場合
・相続人間の公平性を重視する場合
・相続税の支払いのために現金が必要な場合

換価分割を行う際は、不動産の売却方法や価格、売却時期などについて事前に相続人間で合意を形成しておくことが重要です。また、売却前に不動産の適正価格を不動産鑑定士などに評価してもらうことで、適切な売却価格の目安を得ることができます。

共有分割

共有分割とは、相続した土地を相続人全員で共有する方法です。それぞれの相続人が法定相続分または協議で決めた割合に応じて持分を取得します。

メリットデメリット
・土地を売却せずに済む
・一時的な解決方法として利用できる
・将来的な土地の価値上昇の恩恵を全員が受けられる
・将来的な土地の利用や処分において相続人全員の合意が必要
・共有者間でトラブルが発生しやすい
・相続税の支払いのための現金が別途必要

共有分割は一見すると簡単な解決策に思えますが、長期的には様々な問題を引き起こす可能性があります。特に以下のようなトラブルが発生しやすいです。

・土地の管理や維持費用の負担について意見が分かれる
・土地の利用方法や将来的な売却について合意が得られない
・共有者の一人が死亡した場合、さらに共有関係が複雑化する

したがって、共有分割は暫定的な解決策として検討し、将来的には他の分割方法に移行することを視野に入れておくことが望ましいでしょう。

土地と現金を相続する際の具体的な手続きの流れ

土地と現金を相続する際の一般的な手続きの流れを説明します。相続手続きを円滑に進めるためにも、以下のステップを理解しておきましょう。

1. 遺言書の確認

まず最初に行うべきことは、故人が遺言書を残しているかどうかの確認です。遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って財産分割を行います。遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

自筆証書遺言の場合は、2020年7月10日以降に作成されたものであれば法務局での保管制度を利用できますが、それ以前のものや自宅で保管されていた場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。一方、公正証書遺言は検認が不要で、公証役場で原本を閲覧したり、謄本を取得したりすることができます。

遺言書の内容が明確でない場合や解釈に疑義がある場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

2. 相続財産と相続人の確定

遺言書の有無を確認したら、次に相続財産と相続人を確定させます。相続財産の確認方法は、財産の種類によって異なります。

・土地・建物:法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得
・預貯金:金融機関に残高証明書を請求
・有価証券:証券会社や発行会社に照会
・負債:金融機関や債権者に残高を確認

相続人の確定には、故人の出生から死亡までの戸籍謄本等を収集し、法定相続人を特定します。相続人の範囲は民法で定められており、配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の相続人は次の順位で決まります。

1.子(第1順位)
2.直系尊属(父母、祖父母など)(第2順位)
3.兄弟姉妹(第3順位)

相続人の範囲や法定相続分を正確に把握することは、公平な遺産分割の前提となります。不明点がある場合は、司法書士や弁護士に相談しましょう。

3. 遺産分割協議の実施

相続財産と相続人が確定したら、相続人全員で遺産分割協議を行います。遺言書がある場合でも、相続人全員の合意があれば、遺言の内容と異なる分割も可能です。ただし、遺留分を侵害しないように注意が必要で)。

遺産分割協議では、以下の点について話し合います。

・どの財産を誰が相続するか
・土地をどのように分割するか(前述の4つの方法から選択)
・代償分割の場合、代償金の額と支払い方法
・換価分割の場合、不動産の売却方法や時期

協議が成立したら、その内容を「遺産分割協議書」として文書化します。遺産分割協議書には、以下の内容を盛り込みましょう。

・被相続人(故人)の情報
・相続人全員の情報
・相続財産の明細
・分割方法と各相続人の取得財産
・代償分割の場合は代償金の額と支払条件
・作成日
・相続人全員の署名と実印による押印

遺産分割協議書は、相続登記や預貯金の払い戻しなど、さまざまな相続手続きの際に必要となる重要な書類です。上記の内容から抜けや漏れがないように確認して作成しましょう。

4. 相続登記の実施

遺産分割協議が成立したら、土地や建物については相続登記を行います。相続登記は法務局で行い、必要な書類は主に以下のとおりです。

・登記申請書
・遺産分割協議書(原本)
・相続人全員の印鑑証明書
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
・相続人の戸籍謄本等
・被相続人の住民票除票または戸籍の附票
・固定資産評価証明書など

相続登記は2024年4月から義務化されており、相続の開始を知った日から3年以内に申請しなければなりません。正確な手続きを行うためにも、司法書士に依頼することをおすすめします。

土地と現金の相続で起こりやすいトラブルと対策

相続、特に土地と現金が関わる場合には様々なトラブルが発生しがちです。ここでは、よくあるトラブルとその対策を紹介します。

土地の評価額を巡るトラブル

土地の評価額については、相続税評価額や実勢価格、収益還元価格など、さまざまな評価方法があるため、どの価格を基準にするかで意見が分かれることがあります。専門家の意見を取り入れつつ、以下の基準で対策を講じましょう。

【対策】
・不動産鑑定士による客観的な評価を受ける
・複数の評価方法による価格を参考にする
・相続税評価額を基準としつつ、実勢価格も考慮する

代償金の支払いに関するトラブル

代償分割を選択した場合、代償金の支払い時期や方法、遅延した場合の対応などが不明確だと、後にトラブルになることがあります。そうならないためにも、細かなルールを設定しておくことが重要です。

【対策】
・遺産分割協議書に支払時期・方法を明記する
・分割払いの場合は詳細なスケジュールを決める
・支払いが滞った場合の対応(利息や担保設定など)も取り決めておく

共有財産の管理・処分を巡るトラブル

土地を共有した場合、その後の管理費用の負担や売却時の意思決定などで意見が対立することがあります。事前の合意がもっとも重要になるため、その点をしっかりと書き残しておきましょう。

【対策】
・共有持分について、将来的な買取条件をあらかじめ決めておく
・管理費用の負担方法を明確にする
・土地の利用方法について基本方針を合意しておく

相続税の支払いに関するトラブル

土地を相続したものの、納税資金が不足して相続税の支払いに困るケースもあります。事前に以下のような制度を調べておくか、不安な場合は税理士に相談しましょう。

【対策】
・相続税の納税猶予制度の活用を検討する
物納(現金の代わりに財産で納税する方法)の可能性を検討する
・事前に生前贈与や相続税対策を行っておく

土地と現金の相続における税金と控除

相続税は土地と現金など財産の種類によって計算方法が異なるため、正しい知識を持っておくことが重要です。ここでは、土地と現金の相続についての詳細を解説します。

相続税の基本的な仕組み

相続税は、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える相続財産に対して課税されます。例えば、法定相続人が配偶者と子2人の場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。

相続財産の評価方法は財産の種類によって異なります。

・現金:額面通りの評価
・土地:路線価等に基づいて評価(実勢価格より低く評価されることが多い)
・建物:固定資産税評価額等を基に評価

評価基準がそれぞれ異なるため、自分で計算する場合は要注意です。

土地に関する相続税の特例制度

土地の相続には、いくつかの特例制度があります。

〇小規模宅地等の特例

被相続人が住んでいた自宅の敷地(居住用宅地)や事業用の土地について、一定の要件を満たせば評価額を最大80%減額できる制度。

〇相続税の納税猶予制度

農地や事業用の土地について、一定の要件を満たせば相続税の納税を猶予してもらえる制度。

これ以外にもいくつかの特例制度があります。お近くの税務署や、相続に強い税理士などに相談してみると良いでしょう。

代償分割と税金

代償分割を行った場合の税金について理解しておくことも重要です。

代償分割で支払われる代償金は、原則として贈与税の対象外です。ただし、遺産分割協議書に代償分割の内容が明記されている必要があります。

また、代償金を受け取る相続人は、相続時の評価額と代償金額に差がある場合、譲渡所得税が課される可能性があります。それぞれのポイントをしっかり押さえておきましょう。

土地と現金の公平な相続を実現するためのポイント

最後に、本記事で紹介してきた内容のおさらいと同時に、土地と現金を公平に相続するためのポイントをまとめました。

1. 早めの準備と情報収集

相続が発生する前から、家族で財産状況や相続の希望について話し合っておくことが重要です。また、相続が発生した後も、専門家のアドバイスを受けながら情報収集を行いましょう。

2. 不動産の適正評価

土地などの不動産は、複数の観点から評価することをおすすめします。相続税評価額だけでなく、実勢価格や収益性も考慮した総合的な評価を行うことで、より公平な遺産分割が可能になります。

3. 専門家への相談

相続手続きは複雑であり、専門知識が必要です。以下の専門家に相談することで、スムーズな相続手続きを進めることができます。

・弁護士:遺産分割協議や相続トラブルの解決
・税理士:相続税の申告や節税対策
・司法書士:相続登記や遺言書作成
・不動産鑑定士:不動産の適正評価
・行政書士:遺産分割協議書の作成など

自分がどのポイントで相続に悩んでいるのかを明確にして、適切な専門家に相談するようにしてください。

4. 将来を見据えた分割方法の選択

遺産分割は一度決めると変更が難しいため、将来を見据えた選択が大切です。特に土地の共有は将来的なトラブルの原因になりやすいため、可能な限り避けるか、明確なルールを設けておきましょう

分割相続に困ったら専門家に相談を

土地と現金の相続では、4つの分割方法があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、相続人の状況や希望に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。

相続トラブルを防ぐためには、早めの準備と情報収集、不動産の適正評価や専門家への相談、将来を見据えた分割方法の選択が大切になります。特に土地のような分割しにくい財産については、相続人間で十分に話し合い、全員が納得できる解決策を見つけることが重要です。

相続は一生に何度も経験するものではありません。不安や疑問があれば、迷わず専門家に相談し、公平で円満な相続を実現しましょう。

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監修者 税理士 棚田秀利