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遺言書の書き方を徹底解説!注意点や便利な制度も紹介

遺言書は、遺産相続において強い法的効力を持つ文書です。しかし、遺言書に法的効力を持たせるには、必要事項を漏れなく記載する必要があります。形式や内容に不備があった場合、法的な有効性が認められず、作成した遺言書が無意味になりかねません。

本記事では、遺言書を自分で作成する際の書き方について解説します。参考にして、法的に認められる遺言書を作成できるようになりましょう。

遺言書の書き方は種類により異なる

遺言書は以下の2種類があり、書き方も異なります。そのため、それぞれに沿った方法で作成する必要があります。

  • ● 自筆証書遺言
  • ● 公正証書遺言

大まかにいうと、自筆証書遺言は被相続人自身が作成する遺言書で、公正証書遺言は専門家に依頼し作成してもらう遺言書です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、被相続人本人が作成する遺言書です。内容の決定はもちろん、実際に文章を書いたり押印したりなどの作業も、すべて自分で行います。

作成の際は、本文を手書きして押印し、財産目録を添えて完成となります。従来は、財産目録もすべて手書きと定められていましたが、平成31年(2019年)1月13日以降、財産目録はパソコンや代筆での作成が認められるようになりました。

本記事は、この自筆証書遺言について、詳しい書き方を解説していきます。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人に作成してもらう遺言書です。被相続人が遺言書の内容を述べれば、公証人が遺言書の記載方法に沿って内容を文書化してくれます。作成の場は公正役場で、証人が2人同席するため、内容を改ざんされる心配もありません。

記載が終わったら、遺言書の原本はそのまま役場で保管されます。同時に正本と謄本が発行され、それらは持ち帰りが可能です。

自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言には、以下のようなメリットがあります。

  • ● 作成に費用がかからない
  • ● 任意のタイミングで書き直せる
  • ● 遺言の内容を秘密にできる

公正証書遺言の場合、作成には2~5万円の費用が必要です。修正する場合も、公証人手数料などの費用が都度必要になります。公正役場も常に開いているわけではないため、作成・修正時はスケジュールを合わせなければなりません。

自筆証書遺言であれば、作成も訂正も無料で可能です。作成・修正のタイミングも自分で決められるため、スケジュールに気を配る必要もありません

また、公正証書遺言の場合、公証人や証人に遺言書の内容を聞かれるのは避けられません。しかし、自筆証書遺言であれば、内容を完全に秘密にできます。

自筆証書遺言のデメリット

自筆証書遺言には、デメリットもあります。以下を参照してください。

  • ● 書式の要件を満たしていない場合、無効となるおそれがある
  • ● 遺言書自体を紛失するおそれがある
  • ● 第三者による遺言書の改ざんや廃棄などのおそれがある
  • ● 被相続人の死亡後は検認の手続きが必要

法的に有効な遺言書は、書き方が定められています。自筆証書遺言がその書き方に沿っていなかった場合、遺言書自体が無効となるリスクがあります。

また、自筆証書遺言は自分で原本を保管しなければなりません。そのため、紛失や置き場所を忘れるなどのミスが発生する可能性があります。さらに、第三者が改ざんしたり廃棄したりするリスクもあります。

被相続人の死亡後も、相続人はその場で遺言書を閲覧できません。改ざん防止のため、家庭裁判所で検認の手続きが必要です。

デメリットを解消する自筆証書遺言書保管制度

自筆証書遺言書保管制度は、前述した自筆証書遺言のデメリットを解消する制度です。

本制度は、作成した自筆証書遺言の原本、及び画像データを法務局で保管してくれるというものです。令和2年(2020年)7月10日からスタートしており、全国312カ所の法務局で利用できます。

具体的には、以下のようなメリットがあります。

  • ● 遺言書が適切に保管されるため、ミスによる紛失や第三者による改ざんを防止できる
  • ● 提出時、法務局の職員が外形チェックを行うため、明らかな間違いはその場で指摘してもらえる
  • ● 相続人が後から遺言書を見つけやすい
  • ● 原本のデータを保管しているため、改ざん防止の検認手続きが不要になる

ただし、受付時のチェックは、遺言書の有効性を100%保証しているわけではありません。注意してください。

自筆証書遺言の書き方のポイント3つ

法的に有効な自筆証書遺言を書くには、以下3つのポイントを押さえる必要があります。

  • ● 遺言書の本文の書き方
  • ● 財産目録の書き方
  • ● 修正方法

3つの内いずれかに不備がある場合、法的に無効となるリスクが発生するため、ミスや抜け漏れのないように注意してください。

遺言書の本文はすべて自筆する

自筆証書遺言の場合、本文はすべて自筆が原則です。パソコンなどデバイスを利用した入力や、他人の代筆は認められません。

本文の内容は以下のとおりです。

  • ● 遺言の内容(誰に何を相続させたいのか)
  • ● 記載日の日付
  • ● 署名
  • ● 押印

遺言の内容は「誰」に「何」を相続させるのか、特定できるように記載してください。財産目録と内容が合致しているかの確認も重要です。

記載日の日付は、特定できるよう年月日を漏れなく記載してください。日付が特定できれば認められるため「〇歳の誕生日」などの書き方でも構いません。

財産目録はパソコンでも作成できる

財産目録とは、被相続人の相続財産を一覧にしたものです。

財産目録は、遺言書の本文と異なり、パソコンでの入力や第三者の代筆が認められています。ただし、手書きの本文とは用紙を分けたうえで作成してください。

また、財産目録は、預金通帳や登記事項証明書等のコピーなどを添付する方法も認められています。その場合、各ページに自筆の署名と押印が必要であるため、忘れないようにしましょう。

修正方法にも決まりがある

遺言書の内容を修正する場合も、決まりがあります。

具体的には該当箇所に二重線を引き、訂正のための押印を行います。さらに、変更場所の指示、変更内容、署名が必要です。いずれかの手順が抜けていると、修正の要件を満たさないとされるリスクがあるため、丁寧に行いましょう。

修正が過度に多い場合は、混乱やミスを招くおそれがあるため、一から作成し直すのも一つの方法です。

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合の遺言書の書き方

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合、受け付けてもらえる遺言書の様式があらかじめ決まっています。

具体的には、以下の画像を参照してください。

【引用:法務省 URL:https://www.moj.go.jp/MINJI/03.html
【引用:法務省 URL:https://www.moj.go.jp/MINJI/03.html

なお、制度を利用しない場合でも、上記の形式に沿って作成すると抜け漏れが発生しにくくなるため、おすすめです。

自筆証書遺言書保管制度は法務局に申請が必要

自筆証書遺言書保管制度の利用には、法務局に申請が必要です。以下のステップに沿って、申請を行ってください。

  1. 1. 申請する法務局を選ぶ
  2. 2. 申請書を記入する
  3. 3. 事前予約をする
  4. 4. 申請する

1. 申請する法務局を選ぶ

まずは法務局を選びましょう。

前述しましたが、自筆証書遺言書保管制度が利用できる法務局は、全国に312か所あります。その中から、次のいずれかに合致する法務局で手続きを行います。

  • ● 遺言者の住所地にある法務局
  • ● 遺言者の本籍地にある法務局
  • ● 遺言者が所有する不動産所在地にある法務局

法務まであればどこでも良いわけではありません。条件を満たし、かつ自分に利便性が高い法務局を探してください。

2. 申請書を記入する

次に申請書を記入します。

申請書は法務省のWebサイトからダウンロードする方法と、法務局で直接用紙をもらう方法があります。用紙自体はどこの法務局でも入手できるため、必ずしも申請予定の法務局まで出向く必要はありません

申請書には以下の項目を記載します。

  • ● 被相続人の氏名、生年月日、住所など
  • ● 相続人の氏名や住所など
  • ● 死亡時の通知希望

死亡時の通知希望にチェックを入れておくと、被相続人が死亡した際、指定した人に対し遺言書が存在している旨が法務局より通知されます。相続人が遺言書を探す手間が省けるため、特別な理由が無いのであれば通知をおすすめします。

3. 事前予約をする

申請書が記載できたら、事前予約を行います。方法は、以下2種類です。

方法問い合わせ先受付時間
Webサイトhttps://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu.home-t/top/portal_initDisplay24時間365日
電話予約・窓口予約https://www.moj.go.jp/MINJI/minji10.html(各法務局の電話番号記載)平日8:30から17:15(土曜・日曜・祝日・年末年始を除く)

Webサイトであれば、任意のタイミングで予約が可能です。電話または窓口の場合、受付時間が限定されているため注意してください。

4. 申請する

必要書類を持参して、予約日時に法務局を訪れ手続きを行います。必要書類は以下のとおりです。

  • ● 自筆証書遺言書
  • ● 申請書
  • ● 本人確認書類(官公庁から発行された顔写真付きの身分証明書)
  • ● 本籍と戸籍筆頭者の記載がある住民票の写し等
  • ● 遺言書が外国語により記載されているときは日本語による翻訳文
  • ● 3,900円分の収入印紙(遺言書保管手数料)

身分証は顔写真が必須であるため、保険証は利用できません。運転免許やマイナンバーカードがおすすめです。

無事申請を受け付けられれば、保管と引き換えに保管証が発行されます。保管証は紛失しても再発行できないため、大切に保管してください。

遺言書の書き方で迷ったら専門家に相談を

遺言書の書き方で迷ったら、無理に自力で解決するのではなく、専門家に相談するのがおすすめです。専門家は遺言書作成のプロであり、どのような書き方をすれば良いのか熟知しています。

ひろしま相続・不動産ホットラインは、遺言書の作成だけでなく内容に対する相談や、相続関連の悩みごとをトータルサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

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監修者 相続・遺言アドバイザー 大野博満