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相続された土地は役所調査が必要|調査項目や代行の費用も解説

土地を相続した場合、ぜひ行いたいのが役所調査です。

・相続した土地を売りたい
・相続した土地にアパートを建てたい
・相続した土地に自宅を建てたい

相続した土地をどのように活用するかは人それぞれですよね。ただし大前提として、その土地についての詳細な情報や制限を知っておく必要があるでしょう。そのために必要なのが役所調査です。

この記事では、役所調査について詳しく解説します。調査項目や調査代行の費用についても紹介するので、土地を相続予定の方は、ぜひ参考にしてください。

役所調査は土地に対する法律上の制限を調べる調査

役所調査とは、土地に関する法律上の制限や所有権について調べることです。土地を活用する際に影響を及ぼすだけでなく、相続に際して土地評価にも関わってきます。

役所調査では、次のようなことがわかります。

・登記簿上の所有権
・隣との境界線
・抵当権の有無
・建築物を設計するうえでの制限
・接道状況
・インフラの引き込み状況
・災害リスク情報(ハザードマップ等)
・土壌汚染の履歴

これらの調査のため、法務局や市区町村の道路課、都市計画課、上下水道課、建築指導課などへの問い合わせが必要です。法務局では、土地・建物の登記簿謄本、公図、地積測量図、建物図面などを取得し、市区町村では、不動産にどのような法律上の制限がかかっているかについて調べます。

役所調査を実施する8つの項目

役所調査では、次の8つの項目について確認しましょう。

・都市計画法
・建築基準法
・道路
・建築確認証・検査済証
・都市計画法、建築基準法以外の法令
・ライフライン(電気・ガス・上下水道)
・防災
・土壌・水質汚染

それぞれ詳しく解説します。

都市計画法

都市計画法とは、1968年に制定された法律で、都市計画に関する制限や事業計画に関して定めたものです。その目的は、都市の健全な発展と秩序ある整備などで、道路の建設や土地の用途に大きく関わっている法律です。

役所調査では、相続した土地が都市計画法によって区分された地域のどれにあたるか、市街化調整区域または市街化区域か、などについて細かく調査します。とくに「都市計画道路」は、周辺環境の変化に大きく関わっているため重要です。

また、2022年の改正により、市街化調整区域における災害レッドゾーンでの開発許可が厳格化されました。そのため、該当地域では特に注意が必要です。

建築基準法

都市計画法の次に重要なのが建築基準法です。建築基準法では、建物の敷地、構造、設備、用途に関する最低の基準を定めています。例えば土地に関する下記のようなことがわかります。

・用途地域
・指定建蔽率・容積率
・高さ制限
・建材の種類(防火・準防火)
・地区計画(外壁の色味など)
・隣との距離
・日影規制
・敷地面積の最低限度
・前面道路幅員による容積率制限

ほかにも建築基準法上の道路に接しているかなども重要です。とくに道路に2メートル以上接地していない場合は、土地としての評価が大きく下がる可能性があります。さらに、2025年4月より施行される改正建築基準法では、省エネ基準への適合が義務化されるため、新築・増改築を検討する際は最新の基準を確認しなければなりません。

道路

道路調査は、土地の価値や建築可能性を左右する重要な調査項目です。建築基準法第42条に定められた道路種別(1項1号道路から5号道路、2項道路など)を確認し、接道義務を満たしているか調査します。特に注意すべき点は、以下のとおりです。

・2項道路(みなし道路)の場合のセットバック義務
・位置指定道路の場合の管理責任
・私道の場合の通行権や掘削承諾の有無
・角地における隅切りの必要性

判断が難しい場合は、土地家屋調査士などの専門家に相談しましょう。

建築確認証・検査済証

建築確認済証と検査済証は、相続した土地上の建物が、法令の制限の範囲内かどうかをチェックするためのものです。

確認済証は、特定行政庁や指定確認検査機関が設計図書をチェックし、建築基準法に適合したと確認した際に発行されます。また、検査済証は工事を完了した建築物が、確認申請図書通りに施行され、建築基準法に適合していると示すものです。

どちらが欠けても建築基準法において、必要な手続きが完了したとはいえません。確認証については、市町村役場の建築課に問い合わせましょう。

なお、検査済証がない既存建物については、「建築基準法適合状況調査」を実施することで、一定の適法性を証明できる場合があります。この制度は2014年から運用が開始され、既存不適格建築物の流通促進に寄与しています。一度確認するのがおすすめです。

都市計画法、建築基準法以外の法令

都市計画法や建築基準法以外にも不動産に関するさまざまな法令が存在します。例えば次のようなものがあります。

・土地区画整理法
・古都保存法
・都市緑地法
・特定空港周辺特別措置法
・景観法
・被災市街地復興特別措置法
・河川法
・土壌汚染対策法
・農地法(農地の場合)
・森林法(森林の場合)
・文化財保護法(埋蔵文化財包蔵地の場合)
・急傾斜地法(がけ地の場合)

地域によって関係する法律が異なるため、個別で対応する必要があります。特に2020年以降、災害リスクに関する法令が強化されており、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)では開発行為が原則禁止です。専門家に確認しておくことをおすすめします。

ライフライン(電気・ガス・上下水道)

ライフラインに関する調査は、不動産の価値に関連する重要な要素です。ライフラインには、電気・ガス・上下水道などがあり、次のような調査確認が必要です。

電気・引き込み可能な電線や電柱の有無
・電気工事車両が進入可能か
・太陽光発電のためのトランスの有無
・電力会社の供給エリア確認
ガス・都市ガスかプロパンか
・宅地までの引き込みの有無
・ガス管の位置
・ガス管の口径と圧力
上水道・引込可能か
・水道管の径(13mmか20mmか)
・水圧の確認
・引込工事の費用負担
下水道・公共下水道か浄化槽か
・引き込みの有無
・浄化槽の場合の処理方法
・下水道負担金の有無
通信・光ファイバーの整備状況
・5G対応エリアか

電線の位置などを確認するために、場合によっては現地調査も必要となる場合もあります。

防災

地震や津波、洪水・台風など、不動産と自然災害のリスクは密接な関係にあります。役所調査では、不動産周辺地域にどのような災害リスクがあるかも調べます。

・土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域
・津波災害警戒区域・津波災害特別警戒区域
・各種ハザードマップ(洪水・地震・火山など)
・がけ条例
・浸水想定区域(想定浸水深)
・液状化リスクマップ
・活断層の位置

また建物の耐震基準も1981年6月の確認申請分より変更されており、それ以前の建物の場合は注意が必要です。場合によっては耐震診断が必要となるでしょう。

さらに、2000年6月にも耐震基準が改正されており、木造住宅の場合は2000年基準への適合も重要な確認事項となります。2024年の能登半島地震を受けて、耐震診断・改修への補助制度も拡充されています。

土壌・水質汚染

土壌汚染とは、揮発性有機化合物や重金属などの有害物質が土壌に含まれている状態を指します。もし土壌汚染された土地であると判明した場合、利用価値が低い土地とされ土地評価が下がる可能性があります。

土壌汚染に関係する法令は、土壌汚染対策法、水質汚濁防止法、下水道法、環境条例など。問い合わせ窓口としては、市町村の環境保全課が想定されます。

綿密に調査するためには、過去の地歴などを調べる必要があります。土壌汚染の主な原因は、有害物質を取り扱う事業者や施設からの排水や漏水です。そのような業者の建物が建っていなかったかを調べるため、過去の住宅地図をさかのぼって調査します。その場合は、地域の図書館、都道府県立図書館、国会図書館などに納められている地図を直接確認しなければなりません。

また、2023年より土壌汚染対策法が改正され、一定規模以上の土地の形質変更時には届出が必要となっています。

役所調査での調査漏れを防ぐためにチェックシートを作るのがおすすめ

役所調査では確認事項が多いため、抜け漏れを防ぐためのチェックシートを用意するのがおすすめです。チェックシートの例としては次のようなものがあります。

所在、地番、地積、地目、家屋番号
所有権
相続登記の有無(2024年4月より義務化)
用途地域(制限・建ぺい率・容積率)
建築基準法や都市計画法による制限
道路の種類、接道義務
2項道路のセットバック要否
自治体の条例
区画整理事業の有無
地区計画・建築協定の有無
ライフライン(電気・ガス・上下水道)
通信インフラ(光回線等)
土壌汚染の有無
災害警戒区域かの有無
浸水想定区域の指定有無
液状化リスクの確認
確認済証・検査済証発行の有無
既存不適格建築物かの確認
埋没文化財包蔵地か
農地転用の必要性(農地の場合)

役所調査でわからない部分は、現地調査が必要となることも知っておきましょう。

役所調査の代行は3万円が相場

役所調査は調査項目が多く、個人でおこなうとしたら時間も手間も相当かかります。もし自分で調査をおこなうのが難しいと感じたのであれば、代行業者に依頼するのも選択肢のひとつです。

代行業者の料金の相場は3万円〜5万円程度。調査内容の複雑さや物件の所在地によって料金は変動します。別途交通費や郵送費がかかる場合もあります。簡易的な調査であれば、1万円から請け負っている代行業者もあるので問い合わせてみましょう。

相続された土地の役所調査に不安があるなら専門家に相談を

相続した土地を活用したいと思った場合、まず必要なのが土地の役所調査です。ただ、どの業者に依頼していいか迷う方が多いのも事実。経験豊富で多角的にアドバイスをもらえるような専門家を探したいですよね。

その点、ひろしま相続・不動産ホットラインでは、不動産相続に関するお悩みを丸ごと相談いただけます。税理士・不動産鑑定士・司法書士・遺言アドバイザー・不動産コンサルティングマスターが在籍しているため、さまざまな角度から最適なアドバイスをもらえるのがメリットです。土地の役所調査は、ぜひひろしま相続・不動産ホットラインにお任せください。

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監修 不動産鑑定士 河井猛