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生前贈与をするメリットは?相続税や贈与税を節税できるやり方も解説

近年、相続税対策として注目されているのが生前贈与です。生前贈与とは、生きている間に財産を贈与することです。被相続人が亡くなる前に財産を移転できるため、多くのメリットがあります。ただし、相続よりも税金が高くなる可能性もあるため注意が必要です。

本記事では、生前贈与のメリットと節税に効果的な方法について詳しく解説します。生前贈与について、そろそろ考えようと思っている方は、ぜひ参考にしてください。

生前贈与は生きている間に財産を贈与すること

生前贈与は、生きている間に財産を贈与することで、民法で定められた財産移転の方法のひとつです。被相続人が亡くなる前に、財産を贈与することで相続発生時の財産を減らせるため、相続税対策にもつながります。

贈与できる財産は、不動産・預貯金・株式など相続の対象となるあらゆるものです。ただし、贈与によって得た財産は、贈与を受けた人の所得となるため注意が必要です。

生前贈与を行う3つのメリット

生前贈与をおこなうメリットについて3つ紹介します。

  • ● 節税効果が期待できる
  • ● 贈与する時期や相手を自分で選べる
  • ● 相続トラブルを防げる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

節税効果が期待できる

生前贈与は、相続税や贈与税の節税効果があります。相続税は、相続財産の合計額に対して課税される税金で、贈与税は一度に贈与する財産の金額に対して課税される税金です。生前贈与は、相続時の財産を分散できるだけでなく、控除を活用することで、トータルでの税金負担軽減の効果が期待できます。

次のようなケースは、生前贈与が効果的である可能性が高いので、検討してみましょう。

  • ● 財産に余裕がある
  • ● 受贈者が多い
  • ● 相続予定の財産がすでに決まっている

ただし、贈与するタイミングや額によっては節税効果が期待できません。特例などの制度を知り、適切なタイミングや手順で行うことが重要です。

贈与する時期や相手を自分で選べる

生前贈与は、被相続人の意思に基づいて行えるため、贈与する時期や相手を自由に選べます。遺言でも、財産を譲りたい相手を指定できますが、生前贈与は自分で実行するため確実に渡せるといった満足感があるでしょう。例えば、子どもや孫が結婚やマイホーム購入資金が必要な場合など、贈りたいタイミングでの贈与が可能です。

相続トラブルを防げる

相続発生時は、親族間で感情的な対立が起こりやすく、誰がどれだけ相続するかでもめがちです。遺言を残していても内容の不備で無効になることも少なくありません。相続時にトラブルのもとになりそうな財産を生前贈与で分配しておけば、相続時に揉めるリスクを減らせるでしょう

また、被相続人が元気なうちに、財産について話し合うきっかけにもなります。その結果、親族間で互いの理解が深まり、円満な相続の実現につながるでしょう。

生前贈与を行う上での注意点

生前贈与にはメリットがある一方、注意点もあります。ここでは、生前贈与を行う上で注意すべき3つのポイントについて解説しましょう。

  • ● 相続よりも税金が高くなる可能性がある
  • ● 定期贈与は贈与税の対象になる
  • ● 被相続人が亡くなる7年以内の贈与は相続税の対象になる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

相続よりも税金が高くなる可能性がある

生前贈与は、相続税ではなく贈与税の対象です。基礎控除を利用して贈与すれば、一定の節税効果があります。しかし、一度に多くの財産を贈与すると、かえって税金が高くなる場合があります

具体的には以下のような事例です。

  • ● 贈与財産:1億円
  • ● 相続人:子2人

相続税の場合は、基礎控除として4,200万円を引いた金額に相続税率30%を掛けて、相続税は1,740万円です。贈与税の場合は、控除額110万円×2人分を引いた9,780万円に贈与税率40%を掛けて、贈与税3,912万円となります。

このように、生前贈与が増税につながるケースもあるので注意しましょう。

定期贈与は贈与税の対象になる

生前贈与には、一括贈与と定期贈与の2種類があります。一括贈与とは、一度にまとまった財産を贈与する方法で、定期贈与とは、毎年一定額の財産を贈与する方法です。定期贈与は、毎年の贈与額が非課税枠(110万円)を超えない限り、贈与税は課税されません。定期贈与とみなされるケースは、最初に贈与総額が決まっている場合などです。

例えば、1,000万円を贈与することが決まっており、毎年100万円ずつ10年間贈与した場合などです。具体的には、子どもの住宅ローンを親が代わりに返済するようなケースです。基礎控除110万円の範囲内であっても、総額1000万円を贈与する契約が先にある場合は贈与税がかかります。

被相続人が亡くなる7年以内の贈与は相続税の対象になる

年間110万円までであれば、贈与税は非課税です。これを暦年課税制度といいます。しかし、被相続人が亡くなる7年以内の贈与財産は、さかのぼって合算され相続財産とみなされます。

具体的には、父が息子に毎年100万円ずつ贈与して7年後に亡くなった場合、息子が受け取った700万円は、すべて相続財産に含まれます。非課税となる生前贈与は、被相続人が亡くなる7年以上前のものが対象となるため、できるだけ早く始める必要があるでしょう。

税金がかからない生前贈与の8つのやり方

生前贈与は、税金がかからない方法を選択することが重要です。その方法を8つ紹介します。

  • ● 生活費として贈与する
  • ● 教育資金を一括贈与する
  • ● 結婚・子育て資金を一括贈与する
  • ● 住宅取得等資金として贈与する
  • ● 障がい者に贈与する
  • ● 暦年贈与の非課税枠の範囲内で贈与する
  • ● 贈与税の配偶者控除を利用する
  • ● 相続時精算課税制度を利用する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

生活費として贈与する

夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるための援助は、贈与税がかかりません。生活費の内訳としては、日常生活に必要な費用で、治療費や養育費なども含みます。教育費の内訳としては、学費・教材費・文具費などです。

ただし、生活費や教育費の名目で贈与したのち、その資金を預金したり株や不動産などの購入に当てたりした場合は、贈与税の対象となります。

参照:国税庁|贈与税がかからない場合

教育資金を一括贈与する

30歳未満の子や孫のために、教育資金の名目で一括贈与した場合も、贈与税がかかりません。ただし以下のような条件があります。

  • ● 教育資金非課税申告書を提出
  • ● 教育資金専用口座を開設
  • ● 非課税枠は1500万円まで

金融機関での手続きが必要で、対象期間は平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間です。入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費、入学試験検定料、学用品購入費、修学旅行費、学校給食費、通学定期券代、留学費用など、教育にまつわる費用すべてが対象です。また、学習塾や習い事のための費用も含まれます。受贈者が30歳に達したり、死亡したりすると、この契約は終了です。

参照:国税庁|祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし

結婚・子育て資金を一括贈与する

祖父母や両親が18歳以上50歳未満の子や孫名義の金融口座に、結婚・子育てを支援する費用として一括拠出するものです。非課税枠は1,000万円までで、うち結婚関係で支払われるものについては300万円までとなっています。

資金の使途は、金融機関が領収書などをチェックし、書類保管されます。子や孫が50歳に達した日に終了し、使い残しがあれば贈与税の対象となるため注意が必要です。また、受け取る子や孫の前年所得額が1,000万円以上の場合は適用不可となっています。

参照:こども家庭庁|結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の概要

住宅取得等資金として贈与する

祖父母や両親など直系尊属からの贈与で、子や孫が住居用の家を新築・取得・増改築する際の費用については、贈与税が免除されます。その非課税限度額は以下のとおりです。

  • ● 省エネ・耐震・バリアフリー住宅:1,000万円まで
  • ● それ以外:500万円まで

省エネ等住宅と認められるためには、断熱性能・耐震性能・高齢者配慮などの条件をクリアしており、性能証明書と申告書が必要です。対象期間は、令和4年1月1日から令和8年12月31日までとなっています。

参照:国税庁|直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

障がい者に贈与する

特定障がい者であれば、その生活費のための信託財産6,000万円までは贈与税がかかりません。特定障がい者とは、特別障がい者もしくは、それ以外の障がい者のうち精神に障害がある人を指します。特別障がい者以外の特定障がい者であれば、3,000万円までが非課税枠です。

参照:国税庁|障害者と税

暦年贈与の非課税枠の範囲内で贈与する

暦年贈与とは、1年間に贈与を受けた財産のうち110万円までは非課税となる制度です。この場合の申告は不要となっています。

注意点としては、被相続人が亡くなる7年前までは贈与税の対象となる点です。死亡までの7年間に贈与した財産は、さかのぼって合算・課税されます。亡くなる時期を予想できないため、暦年贈与の利用を検討している場合は、できるだけ早く始める必要があるでしょう。

参照:国税庁|贈与税がかかる場合

贈与税の配偶者控除を利用する

結婚して20年以上の夫婦の間で、住んでいる住居や居住用不動産を購入するための贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除されます。条件としては以下のとおりです。

  • ● 婚姻期間20年以上の夫婦間の贈与
  • ● 居住用不動産もしくは居住用不動産購入のための資金
  • ● 贈与を受けた翌年3月15日までに住んでいること

この贈与は、同じ配偶者から一生に一度しか受けられません。また、適用のためには、指定された書類の添付と贈与税の申告が必要です。

参照:国税庁|夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

相続時精算課税制度を利用する

一定の書類を添付すると、60歳以上の祖父母や両親から18歳以上の子または孫への贈与が2,500万円まで非課税となります。この制度利用の条件は、下記のとおりです。

  • ● 相続時には加算される
  • ● 相続時精算課税制度選択届出書が必要
  • ● 計2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税
  • ● 年110万円までの贈与は再計算されたときも非課税
  • ● 暦年課税と併用は不可

一度選択すると暦年課税と併用はできないため、被相続人が長生きする場合は暦年課税を選択したほうが非課税で受け取れる額が多くなる可能性があります。また、2,500万円を超える部分には一律20%の贈与税がかかります。贈与税の税率は累進課税のため、超過金額が少ない場合はかえって税率が高くなるかもしれません。逆に多い場合は20%で済むため節税対策となります。

この制度利用のメリットとしては、贈与時点の価値で評価される点です。不動産や有価証券など将来値上がりが予測されるような財産や賃貸物件などを早めに相続させたいときに節税効果が期待できます。

適切に生前贈与を行うなら専門家へ相談を

この記事では、適切に生前贈与を行えば節税効果が期待できることを解説しました。さまざまな制度や特例があるため、知っている場合と知らない場合とでは、将来払う予定の相続税額は大きく違ってくるでしょう。ただし、対策には専門知識が必要なため、相続税対策を個人が行うのは相当難しいかもしれません。なかでも不動産の相続対策は、非常に複雑です。

ひろしま相続・不動産ホットラインでは、不動産に特化した相続対策を得意としています。プロの不動産鑑定士が査定するため、将来課せられる予定の相続税額がわかり、生前から相続税対策が可能です。大切な家族の負担を減らしたいとお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。

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監修者 税理士 棚田秀利