定期借地権とは?特徴からメリット・デメリットを解説
定期借地権は、期間を決めて貸し出した土地に、借主が建物を建てて利用する制度です。借主にとっては、固定資産税の減税・相続税評価額の減額に期待できるうえ、更地の土地を貸し出すことから初期費用もかからないメリットがあります。そのため、相続した土地の活用方法として検討する方も多いでしょう。
定期借地権には3種類と付随する1つの種類があり、それぞれの種類によって契約期間や利用用途・契約終了時の土地の状態など、契約内容はそれぞれ異なります。
本記事では、定期借地権の概要やそれぞれのメリット・デメリットを解説します。定期借地権で土地活用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
定期借地権とは
定期借地権は、建物を建てるという目的のある借主に対して、期限付きで土地を貸し出せる制度のことです。1992年に施行された借地借家法内に、創設されました。
従来の借地権では期間満了後も更新が可能でしたが、定期借地権は定めた期間で契約が終了します。定期借地権の中にも3種類あり、期間や用途・契約終了時の変換方法などが異なります
定期借地権の種類
定期借地権には、大きく分類して4つのタイプがあります。以下の表は、定期借地権の種類と、それぞれの特徴をまとめました。
種類 | 特徴 |
一般定期借地権 | 存続期間:50年以上 利用用途:制限なし 契約終了時:基本的に更地で土地返還 契約内容:契約更新・建物の買取請求なしの特約をつけられる 契約:書面で行う |
事業用定期借地権 | 存続期間:10年以上50年未満 利用用途:事業のみ 契約終了時:基本的に更地で土地返還 契約内容:契約更新・建物の買取請求なしの特約をつけられる 契約:公正証書が必須 |
建物譲渡特約付借地権 | 存続期間:30年以上 利用用途:制限なし 契約終了時:貸主は建物の買い取りが必要 契約:規定なし |
一時使用目的 | 存続期間:規定なし 利用用途:制限なし 契約終了時:借主の申し出で賃貸契約に移行可能 契約:規定なし |
それぞれの特徴について、より詳しく解説していきます。
一般定期借地権
一般定期借地権とは、50年以上の契約ができる借地権です。契約の延長や更新はしない旨の特約を定められます。また、土地に建てられた建物の買取を、返還時に土地所有者へ請求しないとする旨も、特約として定めることが可能です。
建物買取の請求をしない特約を定めた場合、契約終了後には土地を更地にして返還する必要があります。
事業用定期借地権
事業用定期借地権とは、事業目的の建物を建てられる借地権です。事業用の場合、10~50年未満の範囲内で定期借地が可能となります。
借地借家法の第23条「事業用定期借地権等」に定められているとおり、借地期間により建物の買取請求権などの内容が異なります。大まかな内容は、以下のとおりです。
借地期間 | 内容 |
長期:30年以上50年未満 | ・契約更新や期間の延長はしないよう定められる ・建物の買取請求はできないように定められる |
短期:10年以上30年未満 | ・契約更新や期間の延長なし ・建物の買取請求なし |
長期借用と短期借用の主な違いは、契約の更新や延長・建物の買取請求の特約を定められるかどうかという点です。
長期タイプは、特約を定めなければ「更新はできる、買取請求権は認めない」といった契約も可能です。しかし短期タイプは、権利内容の調整はできません。
建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権は、契約期間が終了する際、「土地の借主が建てた建物を、貸主が買い取る」という特約付きの借地権です。借地権は、30年以上に設定が必要となります。
貸主は、土地を返還してもらうには建物の買取が必要であり、借主は自分で建てた建物は売却の必要があるという部分がポイントです。
また、借地権の契約が終了した際に土地の貸主から請求があれば、貸主は建物を賃貸として使い続けられます。その際、期間の定めはありません。賃貸料は、貸主の請求により裁判所が定めることになります。
一時使用目的とは
定期借地権の一種として、一時使用目的があります。一時使用目的とは、1年未満でも契約可能な借地権のことです。そもそも、借地借家法では30年以上、定期借地権は一番短くて10~30年の事業等借地権となります。一時使用目的が適用になれば、数か月などの短い期間でも契約が可能です。
博覧会場や祭典式場など建物を所有するかつ一時的な利用が目的の場合でも、借地権で契約を結べます。貸主・借主の双方は、契約期間中に正当な利用なく解約の申し入れを行えるのも特徴です。
土地を借地にする基本的なメリット
定期借地権を用いて取り活用するメリットを解説する前に、まずは貸主の目線から見た際の、土地を借地にする基本的なメリットを解説します。主なメリットは、以下の2つです。
- ● 固定資産税の減税
- ● 相続税評価額の減額
それぞれの内容について、詳しく見てみましょう。
固定資産税の減税
借地として居住用建物の敷地に活用する場合、固定資産税が軽減されます。200平方メートルまでの土地については、固定資産税課税台帳に登録されている価格の6分の1が課税標準となります。また、200平方メートルを超える部分については3分の1が課税標準となります。
ただし、更地の状態では軽減措置は適用されません。
相続税評価額の減額
借地権を設定することで、土地の相続税評価額を下げられます。例えば、借地権割合が70%のエリアでは、底地(借地権が設定された土地)の評価額は土地価格の30%となります。広大な土地を所有している場合、通常であれば多額の相続税が発生しますが、借地権を設定することで底地評価額のみが相続税の対象となり、相続税負担の軽減に期待できます。
定期借地権で土地活用するメリット
定期借地権は、般定期借地権・事業用借地権・建物譲渡特約付き借地権、さらに一時使用目的と、4種類のタイプがあります。
借地権の存続期間や権利の内容・契約期間終了の際の対応方法や契約の放棄などの特徴がそれぞれ異なるため、メリット・デメリットにも違いがでます。
まずは4種類の権利について、それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
一般定期借地権のメリット
一般定期借地権は、貸主と借主の双方にとってメリットの多い定期借地権となります。
- ● 更地で返還されるため土地活用計画が立てやすい
- ● 安定した収入が見込める
- ● 固定資産税の節税も見込める
- ● 利用用途の制限がなく貸し借りしやすい
貸主としては、貸した土地が更地になって返ってくることが最大のメリットです。更地で返還されることから、土地活用の計画が立てやすくなります。また、50年以上の契約が可能なため、長期間に渡り安定した収入が見込めるでしょう。
さらに、定期借地として貸し出した土地には、税制の優遇があります。長期間の節税対策として、一般定期借地権は有効です。
貸主・借主ともにメリットとなる部分が、利用用途の制限がない点です。マンションやアパートといった賃貸・お店を建てるなど、土地に合わせた活用が可能となります。
事業用定期借地権のメリット
事業用定期借地権は、10年以上50年未満の存続期間である、事業用という用途に限られるという2つが大きなポイントです。特徴から考えられるメリットは、以下のとおりです。
- ● 契約期間の調整がしやすい
- ● 賃貸などに向かない土地でも活用しやすい
- ● 居住用に比べると高い賃料が見込める
一般定期借地権は50年以上・建物譲渡特約付借地権は30年以上に比べ、事業用定期借地権は10年以上50年未満と契約期間が調整しやすくなっています。貸主は土地活用の計画がしやすくなります。
また、立地的に賃貸などに向かない場所であっても、事業用であれば活用できる場合があるでしょう。土地活用できる可能性が広がると同時に、事業用のほうが賃料も高い傾向にあるため、高い収入が期待できます。
建物譲渡特約付借地権のメリット
建物譲渡特約付借地権のメリットは、建物を買い取る契約であるというポイントが大きく関わります。考えられるメリットは、以下のとおりです。
- ● 買い取った建物を再利用できる
- ● 建物があることで固定資産税を節税できる
ほかの定期借地権と異なるのは、契約が終了したのちも建物が残り続けるという点です。建物自体を買い取る費用は必要ですが、買い取った建物は賃貸などで再利用できる可能性があります。継続して収入を得やすいでしょう。
また、建物があることにより、更地の場合よりも固定資産税が安くすみます。更地の期間がないため、継続した節税が可能です。
一時使用目的のメリット
一時使用目的は、契約期間や利用用途の制限がありません。このことから、具体的には、以下のメリットが挙げられます。
- ● 契約期間が自由である
- ● いつでも解約を申し入れられる
ほかの定期借地権は契約の期間がありますが、一時使用目的なら自由に契約期間を設定できます。さらに、正当な理由がなくても、貸主も借主も解約の申し入れが可能です。
貸主としては、土地活用の予定が変わったなどで解約できる点はメリットとなります。貸主も同様で、借りたい期間が変わった場合、いつでも解約が可能です。
定期借地権で土地活用するデメリット
定期借地権それぞれのメリットを解説しましたが、反対にデメリットもあります。定期借地権の種類ごとのデメリットも、見ていきましょう。
一般定期借地権のデメリット
一般定期借地権のメリットとしてあげた契約期間が50年以上という点は、貸主・借主ともにデメリットになり得ます。また、契約も書面で行わなければなりません。これらを踏まえ、一般定期借地権のデメリットは以下のとおりです。
- ● 契約期間中は原則として途中解約はできない
- ● 書面で契約を交わすための時間・費用がかかる
契約期間中は基本的に途中で契約の解除はできません。何らかの事情があったとしても、借主は途中で支払いをやめることや、貸主はほかの契約で土地活用はできなくなります。
また、書面での契約が必要になるため、書面作成の時間や費用がかかります。契約を継続したいとなっても、改めて契約書を交わさなければならないため、双方の負担になる場合もあるでしょう。
事業用定期借地権のデメリット
事業用定期借地権は、公正証書での契約が必須である点や、貸し出せるのが事業のみという点がデメリットになり得るポイントだと言えます。
- ● 契約は公正証書が必須のため公証人に書類作成を依頼する必要がある
- ● 建物内の一部に居住部分があると事業用に設定できない
- ● 借主が事業破綻しても勝手に建物を取り壊せない
契約の際に必要になる公正証書は、公証人という第三者に作成を依頼しなくてはなりません。そのため、公証人がいる役場などに出向く時間や手間も含め、自身で契約書を作成するよりも費用がかかるうえ、面倒に感じる方も多いでしょう。
また、一部でも居住区があると、事業用に設定できません。事業用に限定することで、借主が見つからない可能性も考えられます。
借主が見つかったとしても、契約期間の中で事業破綻するかもしれません。事業が破綻しても土地に残された建物は勝手に取り壊せず、更地にするには法的な措置が必要になります。さらに、建物の取り壊しは貸主が負担することになってしまいます。
手間もかかるうえ、契約以降の土地活用がスムーズにできない可能性がある点は、デメリットだといえるでしょう。
建物譲渡特約付借地権のデメリット
建物譲渡特約付借地権のメリットとなった「契約が終了しても建物が残る」というポイントですが、デメリットにもなり得ます。
- ● 建物が古くなっている可能性が高い
- ● 借主が建物に住んでいる場合は賃貸契約に移行する
建物譲渡特約付借地権は、30年以上の存続期間となります。土地を借り始めた当初に建物を建てていれば、契約終了時に建物は30年以上経った状態です。
古くなった建物は、再利用するにしても修繕などが必要な箇所があるかもしれません。利用価値が低い建物の買い取りは、デメリットになり得るでしょう。
また、借主からそのまま建物に住み続けたいなど請求があれば、賃貸契約に移行しなければなりません。賃貸契約に移行しなければなりません。その場合の期間の定めはなく、自由な土地活用はできなくなります。
一時使用目的のデメリット
一時使用目的は利用用途や契約期間・契約内容まで自由に決められます。そのため、細かく契約内容を決めておかなければ、のちのトラブルになりかねません。また、双方がいつでも解約の申し入れができることも、デメリットの大きなポイントとなります。
- ● 貸主は、突然収入が途絶える可能性がある
- ● 借主は、解約の申し入れがあったら迅速に引っ越しが必要になる
- ● 契約終了後の流れまで取り決めておかないと土地が取られる危険性がある
- ● さまざまなトラブルを予想して契約内容を決める必要がある
自由度が高いがゆえに、はじめに細かな契約内容を決めておかなければなりません。場合によっては、大きなトラブルになる可能性もあります。
メリットでもあるいつでも解約できるという点も、双方に不利益となる可能性がありデメリットになり得る部分です。
定期借地権の費用
更地の土地を定期借地権として貸し出す場合、土地整備や建物建築などの大きな初期投資は必要ありません。土地をそのまま貸し出すため、一般的な土地活用と比べて着手時の費用負担は極めて低く抑えやすいのが特徴です。
定期借地権の地代設定には、主に3つの基準が用いられます。固定資産税評価額、路線価額、そして実勢価格(時価)です。地代は地域によって算出基準が異なるため、一律の金額設定とはなりません。
特に実勢価格を基準とする場合は、土地の期待利回りや周辺の取引価格を考慮することで、より実情に即した地代設定が可能にです。これは固定資産税評価額や路線価額による算出よりも、現状の土地価値を正確に反映できる利点があります。
これらの価格情報は自身で調査することも可能ですが、適切な地代算出には専門的な知識が必要です。そのため、一般的には不動産鑑定士に依頼して、土地の評価や適切な地代の算定を行うことになります。その際の鑑定費用が、貸主の主な初期費用となります。
相続した土地の活用は様々!節税のためにも専門家に相談を
定期借地権は、期間を決めて貸し出した土地に、借主が建物を立てて土地を利用できる制度です。一般定期借地権・事業用定期借地権・建物譲渡特約付借地権、さらに一時使用目的の4つのタイプがあります。タイプごとに存続期間や契約の更新・建物買取請求の特約がつけられるか、契約方法、メリット・デメリットなど、特徴はさまざまです。
相続した土地は更地にしておくよりも、建物が建っていたほうが固定資産税が安くなります。定期借地権は節税効果も見込めるため、早めに専門家への相談がおすすめです。
「ひろしま相続・不動産ホットライン」では、相続専門の税理士をはじめ、不動産鑑定士も在籍する税理士事務所です。定期借地権を活用するための地代の算出も承っています。相続した土地を定期借地権で活用したい場合、ぜひ不動産のプロである「ひろしま相続・不動産ホットライン」にご相談ください。
