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相続とは?初めてでもわかりやすく基本の仕組み・手続き・注意点を解説

身近な人が亡くなったとき、必ず向き合うことになるのが「相続」です。相続は一生のうちに何度も経験するものではないため、いざ当事者になると「何から始めればいいのかわからない」と戸惑う方が少なくありません。

相続とは、亡くなった方(被相続人)が持っていた財産や権利・義務を、配偶者や子どもなどの親族が引き継ぐことを指します。預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も対象になる点は、意外と知られていないポイントでしょう。

本記事では、相続の定義や法定相続人の範囲、遺産分割の方法、相続税の基礎知識、手続きの流れと期限まで、相続に関する基本を網羅的に解説します。「相続とは何か」を正しく理解し、いざというときに慌てず対応するための知識を身につけましょう。

相続の定義とは?民法上の意味をわかりやすく解説

相続とは、民法第882条以下で定められた制度であり、人が亡くなった際にその財産上の権利や義務を特定の親族などが承継する仕組みです。亡くなった方を「被相続人」、財産を引き継ぐ方を「相続人」と呼びます。

相続の最大の特徴は、プラスの財産もマイナスの財産もすべて一括で引き継ぐ点にあります。現金や不動産などの資産だけでなく、住宅ローンや未払金などの債務も相続の対象となるため、「財産をもらう」という単純な話では済まないケースも珍しくありません。

相続は法律上、被相続人が死亡した瞬間に自動的に開始されます。手続きの有無にかかわらず権利の移転が生じるため、「知らなかった」「手続きをしていなかった」という理由で相続を免れることはできない仕組みになっています。

「相続」と「遺贈」の違い

相続は法律の規定によって自動的に発生するものですが、遺贈は被相続人が遺言書によって特定の人に財産を譲り渡す行為を指します。相続人以外の第三者へ財産を渡したい場合は、遺言書を作成して遺贈という形をとる必要があるでしょう。

一方、法定相続人であっても遺言書によって取り分を指定されるケースがあり、遺言相続と法定相続の優先順位を正しく理解しておくことが大切です。

日本における相続制度の歴史

日本の相続制度は時代とともに大きく変遷してきました。戦前は家督相続制度のもと、長男が家の財産をすべて引き継ぐのが一般的でした。

戦後の1947年(昭和22年)に施行された新民法により、現在の「均分相続」の考え方が導入されています。配偶者や子どもが平等に相続する権利を持つ現行制度は、すべての人が公平に財産を受け取れるよう設計されたものです。近年も配偶者居住権の創設(2020年施行)や相続登記の義務化(2024年施行)など、社会の変化に合わせた改正が続いています。

相続が開始するタイミングと発生する場面

相続は被相続人の死亡によって自動的に始まりますが、「いつ」「どのような場面で」発生するのかを正確に理解している方は多くありません。相続開始のタイミングを把握しておくことは、その後の手続きを円滑に進めるうえで欠かせない知識です。

相続はいつ始まるのか

相続は被相続人が亡くなった時点で開始されます。民法第882条には「相続は、死亡によって開始する」と明記されており、届け出や手続きを待つ必要はありません。

失踪宣告を受けた場合も法律上の死亡と同じ扱いになり、相続が開始されます。普通失踪の場合は行方不明から7年後、危難失踪の場合は危難が去ってから1年後に死亡したとみなされ、相続が始まる流れです。

人生で相続に出会うのはどんなとき?

多くの方が相続に直面するのは、親の死亡時が最も一般的でしょう。ほかにも、配偶者や兄弟姉妹の死亡、祖父母の死亡に伴う代襲相続など、さまざまな場面で相続は発生します。

日本では年間約150万人以上が亡くなっており、それだけ多くの相続が毎年発生していることになります。相続は決して特別な出来事ではなく、誰もがいずれ当事者になりうる身近な法律問題といえるでしょう。

法定相続人の範囲と順位|誰がどのくらい相続するのか

相続において「誰が財産を受け取れるのか」は民法で明確に定められています。法定相続人には優先順位があり、被相続人との続柄によって相続できる割合も変わっていくのです。ここでは、相続人の範囲と順位、そして法定相続分について整理します。

法定相続人とは

法定相続人とは、民法で定められた相続の権利を持つ人のことです。被相続人の配偶者は常に相続人となり、それ以外の親族は優先順位に従って相続人が決まります。

配偶者以外の法定相続人には以下の順位が定められています。

第1順位:子ども(直系卑属) 被相続人の子どもが最優先で相続人となります。子どもが先に亡くなっている場合は、その子ども(被相続人の孫)が代わりに相続する「代襲相続」が発生します。

第2順位:父母(直系尊属) 子どもがいない場合に、被相続人の父母が相続人となります。父母がすでに亡くなっている場合は祖父母が相続人になることもあります。

第3順位:兄弟姉妹 子どもも父母もいない場合に、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は、その子ども(甥・姪)が代襲相続しますが、甥・姪の子どもまでは代襲されません。

法定相続分の割合

法定相続人の組み合わせによって、それぞれが受け取る相続分の割合は変わります。代表的なパターンは以下のとおりです。

配偶者と子どもが相続人の場合 配偶者が2分の1、子ども全員で2分の1を均等に分けます。子どもが2人であれば、配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつとなります。

配偶者と父母が相続人の場合 配偶者が3分の2、父母全員で3分の1です。

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合 配偶者が4分の3、兄弟姉妹全員で4分の1を分けることになります。

ただし、法定相続分はあくまで目安であり、遺言書や遺産分割協議によって異なる割合にすることも可能です。

代襲相続とは

代襲相続は、本来の相続人が被相続人より先に死亡していた場合に、その子どもが代わりに相続する制度です。たとえば被相続人の子どもがすでに亡くなっていれば、孫が相続人の地位を引き継ぎます。

第1順位の子どもについては再代襲(ひ孫への相続)も認められますが、第3順位の兄弟姉妹については甥・姪までで代襲相続は打ち切られます。相続人の確定にあたって見落としやすいポイントであるため、注意が必要です。

相続財産の範囲|プラスの財産とマイナスの財産

相続の対象となる財産には、現金や不動産などの「プラスの財産」だけでなく、借金やローンなどの「マイナスの財産」も含まれます。相続するかどうかを判断するためにも、どのような財産が対象になるのかを正しく把握しておく必要があります。

遺産とは何か?相続の対象となる財産

相続財産(遺産)とは、被相続人が亡くなった時点で保有していた一切の財産的権利・義務を指します。具体的には、大きく「プラスの財産」と「マイナスの財産」の2種類に分かれます。

プラスの財産の例 現金、預貯金、有価証券(株式・投資信託など)、不動産(土地・建物)、自動車、貴金属・宝石、ゴルフ会員権、著作権や特許権、売掛金・貸付金など

マイナスの財産の例 住宅ローン、クレジットカードの未払金、借入金、未払いの税金、保証債務(連帯保証人としての責任)、損害賠償義務など

プラスの財産だけを選んで引き継ぐことは原則としてできません。相続するならプラスもマイナスも一括で引き受ける必要があり、マイナスの財産が大きい場合は「相続放棄」や「限定承認」を検討することになります。

相続の対象とならない財産

被相続人に帰属していた権利や義務であっても、相続の対象とならないものがあります。

被相続人の一身に専属する権利(一身専属権)は相続されません。たとえば、生活保護の受給権、運転免許、国家資格、扶養を請求する権利などがこれにあたります。身元保証債務も原則として相続の対象外です。

また、死亡退職金や生命保険の死亡保険金は、受取人が指定されている場合は受取人固有の財産とされ、遺産分割の対象にはなりません。ただし、相続税の計算上は「みなし相続財産」として課税対象に含まれるため、税務上の取り扱いには注意しましょう。

遺産の相続方法|遺言相続と法定相続の違い

相続には大きく分けて「遺言による相続(指定相続)」と「法定相続」の2つの方法があります。遺言書がある場合は原則として遺言の内容が優先され、遺言書がない場合や遺言で指定されていない財産については法定相続のルールが適用されます。

遺言書による相続(指定相続)

被相続人が生前に遺言書を作成していた場合、その内容に従って財産が分配されます。遺言書には大きく3つの種類があり、それぞれ作成方法や効力が異なります。

自筆証書遺言は、遺言者が自分の手で全文・日付・氏名を書き、押印して作成するものです。手軽に作れる反面、形式不備で無効になるリスクもあるため注意が求められます。なお、2020年7月から法務局での保管制度が始まっており、紛失や改ざんのリスクを大幅に減らせるようになりました。

公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言です。証人2名の立ち会いが必要ですが、形式不備による無効のリスクが極めて低く、原本が公証役場に保管されるため最も安全性の高い方法といえます。

秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま遺言書の存在のみを公証人に証明してもらうものですが、実務上はあまり利用されていません。

法定相続

遺言書がない場合は、民法で定められた法定相続のルールに基づいて遺産が分配されます。前述の法定相続人の範囲と法定相続分に従い、相続人全員で遺産分割協議を行うのが一般的な流れです。

法定相続では、相続人全員が合意すれば法定相続分と異なる割合で分配することも認められています。重要なのは相続人全員の合意が得られることであり、1人でも反対すれば協議は成立しません。

遺産分割協議の進め方と遺産分割協議書

遺言書がない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合は、相続人全員で話し合って遺産の分け方を決める必要があります。この話し合いを「遺産分割協議」と呼び、合意内容を書面にまとめたものが「遺産分割協議書」です。

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、相続人全員が参加して「誰が・どの財産を・どのくらい取得するか」を話し合う手続きです。遺言書がない場合はもちろん、遺言書に記載のない財産がある場合にも行われます。

協議には相続人全員の参加が必須であり、一部の相続人を除外して行った協議は無効となります。未成年の相続人がいる場合は特別代理人の選任が、認知症など判断能力に問題がある相続人がいる場合は成年後見人の選任が必要になることもあるでしょう。

遺産分割協議書の作成

協議がまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」として文書化します。協議書には、各相続人が取得する財産の内容を具体的に記載し、相続人全員が署名・実印を押印する必要があります。

遺産分割協議書は法的な義務書類ではありませんが、不動産の相続登記、銀行口座の名義変更、相続税の申告など、さまざまな手続きで提出を求められる実務上不可欠な書類です。作成にあたっては、財産の特定が曖昧にならないよう、不動産であれば登記事項証明書の記載どおりに、預貯金であれば銀行名・支店名・口座番号まで正確に記載しましょう。

遺留分とは?相続トラブルを防ぐために知っておきたい制度

遺言書の内容によっては、特定の相続人が財産をほとんど受け取れないケースも起こり得ます。そのような事態から相続人を守るために設けられているのが「遺留分」という制度です。遺留分の仕組みと、侵害された場合の対処法を確認しましょう。

遺留分の意味と対象者

遺留分とは、一定の法定相続人に保障された最低限の相続分のことです。たとえ遺言書で「全財産を特定の人物に譲る」と書かれていても、遺留分を持つ相続人は最低限の取り分を主張できます。

遺留分が認められるのは、配偶者、子ども(直系卑属)、父母(直系尊属)です。兄弟姉妹には遺留分が認められていません。遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人の場合は遺産の3分の1、それ以外の場合は遺産の2分の1となり、各相続人の遺留分はここから法定相続分に応じて算出されます。

遺留分侵害額請求

遺言や生前贈与によって遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は「遺留分侵害額請求」を行うことで、侵害された金額に相当する金銭の支払いを請求できます。

2019年7月の民法改正以前は「遺留分減殺請求」として現物の返還を求める制度でしたが、改正後は金銭での精算に一本化されました。請求権には期限があり、遺留分の侵害を知ったときから1年以内、または相続開始から10年以内に行使しなければ権利が消滅するため、早めの対応が求められます。

相続の承認と放棄|3つの選択肢を理解する

相続が開始されると、相続人は相続を受け入れるか否かについて3つの選択肢を持ちます。選択の期限は「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」と定められており、熟慮期間と呼ばれるこの期間内に判断しなければなりません。

単純承認

単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産もすべて無限に引き継ぐ方法です。3か月の熟慮期間内に何の手続きもしなければ、自動的に単純承認したものとみなされます。

相続財産を使ったり処分したりした場合も、法定単純承認が成立し、その後に相続放棄や限定承認を選ぶことはできなくなります。安易に被相続人の財産に手を付けないよう注意しましょう。

限定承認

限定承認は、相続で得たプラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産を引き受ける方法です。被相続人に多額の借金があるか不明な場合や、プラスとマイナスのどちらが大きいか判断がつかない場合に有効な選択肢となります。

ただし、限定承認は相続人全員が共同で行わなければならず、1人でも反対する相続人がいると選択できません。家庭裁判所への申述も必要であり、手続きが煩雑なため実務上の利用件数は多くないのが現状です。

相続放棄

相続放棄とは、被相続人の財産を一切引き継がないことを選択する手続きです。家庭裁判所に相続放棄の申述を行い、受理されれば最初から相続人ではなかったものとして扱われます。

被相続人の借金がプラスの財産を明らかに上回る場合や、特定の相続人に財産を集中させたい場合などに選択されるケースが多いでしょう。相続放棄をすると代襲相続も発生しないため、自分の子どもに借金の負担が回ることもありません。

注意点として、一度受理された相続放棄は原則として撤回できないため、慎重な判断が求められます。

相続税の基礎知識と計算方法

相続によって一定額以上の財産を取得した場合、相続税の申告・納付が必要になります。ただし、すべての相続に相続税がかかるわけではなく、基礎控除額を超える場合にのみ課税される仕組みです。相続税の基本的な考え方と計算方法を理解しておきましょう。

そもそも相続税とは

相続税は、被相続人から相続や遺贈によって財産を取得した人に課される国税です。相続税が存在する主な理由として、富の集中による社会的な不公平を是正する目的や、生前の所得税で捕捉しきれなかった部分を補完する機能が挙げられます。

ただし、すべての相続に相続税がかかるわけではありません。相続財産の総額が「基礎控除額」を超える場合にのみ課税される仕組みであり、実際に相続税の申告が必要になる割合は全体の約9%前後とされています。

相続税の基礎控除額

相続税の基礎控除額は以下の計算式で求められます。

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、基礎控除額は3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円です。相続財産の総額が4,800万円以下であれば、相続税はかからず申告も不要となります。

相続税計算の基本的な流れ

相続税の計算は、概要としては以下の手順で進みます。

まず、被相続人のすべての相続財産を洗い出し、評価額を算出します。不動産は路線価や固定資産税評価額をもとに、有価証券は相続開始日の時価をもとに評価するのが原則です。

次に、相続財産の合計額から基礎控除額を差し引いて「課税遺産総額」を算出します。課税遺産総額を法定相続分で按分し、それぞれに税率を掛けて相続税の総額を求めたうえで、実際の取得割合に応じて各相続人の納税額を確定させる仕組みです。

配偶者には「配偶者の税額軽減」として法定相続分または1億6,000万円までのいずれか大きい金額まで非課税とする特例があり、配偶者の税負担は大幅に軽減されます。

相続税を軽減できる主な制度

相続税の負担を抑える方法として、生前贈与の活用が挙げられます。暦年課税制度では年間110万円までの贈与が非課税であり、長期的に計画することで相続財産を減らす効果が期待できるでしょう。

生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を活用する方法や、小規模宅地等の特例によって自宅の土地の評価額を最大80%減額する制度なども、相続税対策として広く利用されています。

相続手続きの全体の流れと期限

相続が発生すると、さまざまな手続きを定められた期限内に進める必要があります。期限を過ぎるとペナルティが生じたり、選択肢が狭まったりするため、全体のスケジュール感を把握しておくことが重要です。

死亡から7日以内|死亡届の提出

被相続人が亡くなったら、まず7日以内(国外で亡くなった場合は3か月以内)に市区町村役場へ死亡届を提出します。死亡届を提出しないと火葬許可証が発行されず、葬儀の手配にも支障が出るため、最優先で対応すべき手続きです。

死亡から14日以内|年金や健康保険の届出

国民健康保険や介護保険の資格喪失届、年金受給権者死亡届などの届け出を14日以内に行います。世帯主が亡くなった場合は世帯主変更届も必要です。

3か月以内|相続放棄・限定承認の判断

相続の承認・放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内です。相続財産の調査を急ぎ、プラスの財産とマイナスの財産を把握したうえで判断する必要があります。期限に間に合わない場合は、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てることも可能です。

4か月以内|準確定申告

被相続人がその年に所得を得ていた場合、相続人は相続開始を知った日の翌日から4か月以内に被相続人の所得税の確定申告(準確定申告)を行わなければなりません。事業所得や不動産所得があった場合は特に注意が必要です。

10か月以内|相続税の申告と納税

相続税の申告・納税の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。この期限は延長が認められないケースがほとんどであり、遺産分割協議が難航していても申告期限は変わりません。

分割が未了の場合は、法定相続分で仮に取得したものとして申告し、協議がまとまった後に修正申告や更正の請求を行う方法がとられます。

期限のない手続き

不動産の相続登記については、2024年4月から義務化され、相続を知った日から3年以内に登記申請を行う必要が生じました。正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料が科される場合があるため、速やかに対応するのが望ましいでしょう。

預貯金の払い戻しや株式・自動車の名義変更などには法律上の期限はありませんが、手続きが遅れるほど書類の収集が困難になる傾向にあります。相続手続きは全体として、できるだけ早期に着手するのが鉄則です。

相続でよくあるトラブルと予防策

「相続」は「争族」とも揶揄されるほど、親族間のトラブルが起こりやすい場面です。どのような問題が発生しやすいのかを事前に知っておくことで、予防策を講じたり、万が一の際にも冷静に対処したりできるようになります。

遺産分割の話し合いがまとまらない

相続トラブルで最も多いのが、遺産分割協議の不成立です。「相続」が「争族」と表現されることがあるように、それまで良好だった親族関係が遺産を巡って一変するケースは珍しくありません。

特に不動産のように分割しにくい財産が遺産の大半を占める場合や、相続人の間で被相続人への貢献度(寄与分)に対する認識が異なる場合にトラブルが発生しやすくなります。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での調停や審判を利用する方法が用意されています。

遺言書がないことによる混乱

遺言書が存在しない場合、相続人同士で一から分け方を決めなければなりません。被相続人の意思が不明なまま協議を進めることになるため、各相続人の主張が衝突しやすい状況が生まれます。

トラブルを未然に防ぐためには、被相続人が元気なうちに遺言書を作成しておくことが最も効果的な対策です。公正証書遺言であれば確実性が高く、家族への配慮を「付言事項」として添えることで相続人の納得感も得やすくなるでしょう。

生前贈与をめぐる不公平感

一部の相続人が生前に多額の贈与(特別受益)を受けていた場合、他の相続人から不満が生じることがあります。民法では特別受益の持ち戻しという制度があり、公平を保つ仕組みが用意されていますが、贈与の事実認定や金額の評価をめぐって争いに発展するケースも見られます

相続人の所在が不明

相続人の中に行方不明者がいると、遺産分割協議自体を進めることができません。不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てるか、失踪宣告の手続きが必要となり、解決まで長期間を要する場合があります。

相続の準備に役立つ対策と制度

相続を円滑に進めるためには、事前の準備や各種制度の活用が有効です。近年は手続きを簡素化する制度や、配偶者の生活を守る仕組みなど、相続に関する法整備も進んでいます。知っておくと役立つ主な対策と制度を紹介します。

法定相続情報証明制度の活用

法定相続情報証明制度は、法務局に戸籍謄本等を提出して認証を受けると、相続人の一覧図(法定相続情報一覧図)を無料で発行してもらえる制度です。銀行口座の解約や不動産登記など、複数の手続きで戸籍一式を何度も提出する手間を省くことができます。

配偶者居住権の活用

2020年4月に施行された配偶者居住権は、被相続人の配偶者がそれまで住んでいた自宅に、原則として終身で無償で住み続けられる権利です。所有権を他の相続人が取得しつつ、配偶者の住まいを確保できるため、高齢の配偶者の生活を守る有効な手段として注目されています。

生命保険の活用

生命保険の死亡保険金は受取人固有の財産として扱われるため、遺産分割協議の対象外となります。特定の相続人に確実に資金を渡したい場合や、相続税の納税資金を準備したい場合に有効な手段です。

相続税の計算上は「500万円×法定相続人の数」までが非課税となるため、この非課税枠を活用した節税対策も広く行われています。

戸籍証明書等の広域交付制度

2024年3月から開始された戸籍証明書等の広域交付制度により、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍謄本等を取得できるようになりました。相続手続きでは被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要になりますが、本籍地が複数ある場合でも最寄りの窓口で一括請求できるため、手続きの負担が大幅に軽減されています。

相続について相談・依頼できる専門家

相続の手続きは多岐にわたり、一人ですべてを進めるのは容易ではありません。内容に応じて適切な専門家に相談することで、手続きの正確性が高まり、トラブルの予防にもつながります。

弁護士は、遺産分割の紛争解決や遺留分侵害額請求など法的なトラブル全般に対応できる唯一の専門家です。相続人間で意見が対立している場合は、早い段階で相談するのが得策でしょう。

税理士は、相続税の申告・計算や生前の節税対策を専門とします。財産評価の適正化や各種控除・特例の適用判断には、相続税に精通した税理士のサポートが有効です。

司法書士は、不動産の相続登記を中心に、戸籍の収集や遺産分割協議書の作成など書類手続き全般を依頼できます。

行政書士は、遺産分割協議書の作成や自動車の名義変更など、裁判所や法務局以外の行政手続きに対応してくれます。

相談先に迷った場合は、各自治体が実施する無料相談会や、法テラス(日本司法支援センター)の無料相談を利用するのも一つの方法です。

遺産相続に関するよくある質問

相続に関しては、多くの方が同じような疑問を抱えています。ここでは、相続の基本を学ぶ中でよく寄せられる質問とその回答を紹介します。

相続手続きをしないとどうなる?

相続手続きを放置すると、不動産の相続登記義務違反による過料のリスクに加え、次の相続が発生した場合に権利関係がさらに複雑化する恐れがあります。預貯金も長期間放置すると休眠口座となり、手続きが煩雑になるため、速やかに対応しましょう。

遺産が3,000万円ある場合、相続税はいくらになる?

法定相続人が1人の場合、基礎控除額は3,600万円となるため、遺産が3,000万円であれば相続税はかかりません。法定相続人の数が多いほど基礎控除額は上がるため、一般的に3,000万円の遺産に対して相続税が発生するケースは限定的です。

二次相続とは?

二次相続とは、最初の相続(一次相続)で財産を引き継いだ配偶者が亡くなった際に発生する相続を指します。一次相続で配偶者の税額軽減を最大限活用すると、二次相続で子どもの税負担が大きくなるケースがあるため、一次相続と二次相続をトータルで考えた対策が重要です。

まとめ

相続とは、亡くなった方の財産上の権利や義務を親族が引き継ぐ制度です。プラスの財産だけでなくマイナスの財産も対象となる点、被相続人の死亡と同時に自動的に開始される点を正しく理解しておくことが大切でしょう。

法定相続人の範囲と順位、法定相続分の割合、遺言書の有無による手続きの違い、相続放棄や限定承認の選択肢など、相続に関する基本知識を身につけておけば、いざというときにも冷静に対応できるはずです。

相続税については基礎控除額を超える場合にのみ課税されるため、まずは自分のケースで申告が必要かどうかを確認することから始めましょう。手続きには期限が設定されているものが多く、特に相続放棄の3か月、相続税申告の10か月は見落とせないポイントです。

相続は金額の大小にかかわらず、家族の関係性や感情が複雑に絡むデリケートな問題でもあります。不安や疑問があれば、弁護士や税理士などの専門家に早めに相談し、円滑な相続の実現を目指しましょう。

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監修者 税理士 棚田秀利