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不動産を共有名義で相続することのメリット・デメリット|不動産を相続した際の対処法

人の資産を相続する際、不動産が他の人と共有名義のものになるという状況は、意外にも少なくありません。一般的には被相続人ひとりに対し、相続人は複数居るものであるためです。

一方で、自分だけではなく他の人と共有で不動産を持つという状態は、相続人に戸惑いやリスクを生む傾向にあります。相続した後すべき行動や、注意点がわからないという人は後を絶ちません。

本記事では、共有名義での不動産相続について解説します。参考にして、共有名義の不動産を上手く運用できるようになりましょう。

不動産の共有名義とは

不動産の共有名義とは、1つの不動産に対し名義人が複数居る状態のことです。

現実として、共有名義となっている不動産は世の中にありふれています。例えば夫婦共同で住宅を購入したり、元々の名義人が死亡し残された配偶者と子供が不動産を相続したりすると、共有名義の不動産が発生します。

一方で不動産は分配することになっても、実際に切り分けして配れるわけではありません。ひいては揉める元になりやすいため、共有名義での不動産管理は避けたいと考える人も多いです。

不動産を共有名義で相続することのメリット

不動産を共有名義で相続することには、以下のようなメリットがあります。

  • ● 相続人間に公平感がある
  • ● 収益不動産であれば収入を平等に分けられる

共有名義のもっとも魅力的な点は、名義人同士の立場を法的に対等とできる点です。現在単独名義の不動産相続を考えている人も、「共有名義で管理するという方法もある」と知っておくことで、選択の幅が広がります。

相続人の間に公平感がある

不動産を共有名義で相続すると、相続人の間に公平感が生まれます

たとえば、相続できる資産が不動産1つしかないという場合、共有名義にすることで1つの資産を複数人に対し公平に分けられます。相続人に対しても「資産を平等に分配する」と言えるため、理解と納得を得られやすく、相続先の決定がしやすいです。

公平かどうか、という点は遺産の相続にあたり揉めがちなポイントの1つです。共有名義はその公平感をサポートできる方法と捉えましょう。

収益不動産であれば収入を平等に分けられる

相続対象が収益の生まれる不動産である場合、発生する収入を平等に分けることができます。法的にも、不動産収入の権利は共有名義人同士平等であるため、公平な分配をすることに問題はありません。

前述しましたが、相続人が複数で不動産が1つだった場合、現実として不動産を切り分けられるわけではありません。しかし収益はお金であるため容易に分けることができ、より公平感が増すため揉める可能性が低減されます。

不動産を共有名義で相続するデメリット

不動産を共有名義で相続するには、以下のようなデメリットもあります。

  • ● 管理・売却の意見が食い違うと膠着状態になりかねない
  • ● 他の共有者と普段から連絡を取り合わなければならない
  • ● 持分の細分化が起きてしまう

不動産はお金と異なり、物理的に分けることができません。そのため、不動産に対してのスタンスが異なると、トラブルになる可能性が高まります。また、年月が経つにつれ相続人が増えると、ますます持ち分と意見の細分化が進み、まとまるのが難しくなります。

管理・売却の意見が食い違うと膠着状態になりかねない

不動産に対し、管理や売却に対してなど意見が食い違うと膠着状態になりかねない点は、共有名義のデメリットです。不動産はお金と異なり経年劣化が進むため、放っておき続けるわけにもいきません。

不動産に対する一般的なアクションと、決定権の扱いは以下のとおりです。

不動産に対するアクション具体例同意が求められる人間
不動産の状態変更大規模改修・建替え不動産の売却建物の新築抵当権の担保への設定共有名義人全員
不動産の管理小規模改修賃料変更賃貸借契約の更新・解除共有名義人の過半数
不動産の維持・保存軽微改修清掃独断で可能

同じ不動産に対しても、人が集まると出る意見もさまざまです。皆の意見が合致していれば、問題はありません。しかしスタンスが違う場合、法的に立場が対等な人同士でぶつかってしまうため、決断する権利を持つ人がおらず結論が出しにくくなります。

対策としては多数決を取って決めたり、話し合いの場を設けたりということが挙げられます。あまりに話がこじれそうな場合は、専門家に間に入ってもらうのもひとつの方法です。ひろしま相続・不動産ホットラインでも、相続トラブルの相談を受け付けているため、お気軽にご連絡ください。

他の共有者と普段から連絡を取り合わなければならない

不動産を共有名義で所有する場合、他の名義人とは普段から連絡を取り合わなければなりません。法的な義務はありませんが、報連相を普段から行っていない場合、いざというときに揉める可能性が高いです。

不動産は維持管理に対し、手間やお金がかかります。本来は共有名義人同士で負担も分け合うべきですが、現実として維持管理の手間を割くのがいつも特定の人であったり、誰かがいつまでも維持管理費用を支払わなかったりということは起こり得ます。ひいては、権利は平等でありながら義務は平等になっておらず、何らかの形でトラブルになりやすいのです。

お互いの状況を掴むためにも、連絡はまめに取るのがおすすめです。仮に不義理な人が混じっていても、逐一負担を報告しておけば、大変さは伝わるでしょう。

持分の細分化が起きてしまう

共有名義の不動産は、持分が細分化しやすいです。

そもそも資産は、どんなものでも年月が経つと細分化しやすい傾向にあります。たとえば単なるお金の財産でも、被相続人が死亡して配偶者と子供で分けると、2以上に細分化されるわけです。

共有名義の不動産は最初から2人以上の人間が1つの資産を分けている状態ですが、さらに相続を重ねると共有名義人の人数が増えていきやすくなります。ひいては、不動産の扱いや維持管理について意見する権利を持つ人間が増えるため、まとまるのは難しくなりトラブルを招きやすくなるのです。

そのため、人数が膨らみ過ぎる前に押さえておく必要があります。被相続人はどの財産を誰に相続させるか、遺言書を用いて決定する権利があるため、遺言書を活用して相続する人数を絞っておくのもひとつの方法です。

不動産を共有名義にしないための対処法

不動産をそもそも共有名義にしないための方法もあります。

前述のデメリットを読み、「不動産はできる限りひとりで管理した方が楽なのでは?」という考えが生まれるのは無理もないことです。その際、以下の方法で他の人の納得を得られれば、不動産をひとりで管理したり、名義人の数を減らしたりできます。

  • ● 代替分割を行う
  • ● 不動産を売却して現金で分割
  • ● 土地を相続人分に分筆して所有する
  • ● 共有持分を放棄もしくは譲渡・買取をしてもらう
  • ● 自分の共有持分だけ売却する

具体的にどの方法を取るかは、自分の状況や不動産に対する意見と照らし合わせて決定しましょう。もし自分では決定できないと感じたら、専門家に相談するのも方法のひとつです。ひろしま相続・不動産ホットラインでも相談を受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。

代替分割を行う

代替分割を行うと、不動産の名義人を絞ることができます。場合によっては、単独名義人とすることも可能です。

代替分割とは簡単に言うと不動産を分けずに名義人を絞り、名義人になれた人は他の人にお金を渡すシステムです。

代替分割は、メリットを受ける人が偏っているときに便利です。

たとえば相続する不動産が住居であり、共有名義人の中で実際に住むのは1人だけなどという状況の場合、住む本人の単独名義不動産にした方が、維持・管理を楽に行えます。他の名義人としても、「活用できないのであれば相続の権利をお金に換えたい」と考えるケースは多く、お互いに納得しやすいです。

ただし、具体的な金額は不動産の価値に左右されます。名義人の経済状況によっては、他の名義人に払う金額が負担になってしまうケースもあります。

不動産を売却して現金で分割

不動産を売却し、現金で分割して配分する、というのもひとつの方法です。

お金は分けることができるため、この方法であれば、全員が公平に得をすることができます。

一方で、売却すると不動産は完全に他人の資産になってしまいます。そのため、誰も不動産を活用する予定が無い、という場合に適している相続方法です。

土地を相続人分に分筆して所有する

土地を相続人分に分筆して所有する、という方法もあります。相続した不動産が土地のみであった場合、土地を法的に分割(文筆)して、ひとりひとり登記を行い相続するのです。

お互い納得の上で分筆できれば、公平感を保ちつつ不動産も手離さずに済みます。

ただし元の土地が狭い場合、分けることでさらに小さくなってしまい、運用・売却が難しくなるケースもあります。また、建物がすでにある場合建物を分けることはできないため、この相続方法は適していません。

そのため、不動産が土地のみであり、十分な広さを持っている場合に検討しましょう。

共有持分を放棄もしくは譲渡・買取をしてもらう

共有持分を放棄もしくは譲渡・買取をしてもらうという方法もあります。不動産は物理的に分けられないため、正確には持分の「権利」を放棄したり譲渡したりということになります。主に、自分自身に不動産を運用する気が無いという場合におすすめです。

捉え方としては、以下のようなイメージです。

持分の権利を放棄する場合、遺産分割協議書にその旨を記載するだけで構いません。相続放棄の手続きが不要となるため、事務処理が少し楽になります。放棄された権利は他の名義人に引き継がれるため、権利が宙に浮くこともありません。また、身内に対して譲渡・買取してもらうことも可能です。

ただし、持分を無条件に放棄したり極端に安い価格で譲渡すると、譲渡された方に贈与税がかかるケースもあります。そのため、身内が相手でもある程度のお金を受け取った方が良いでしょう。

自分の共有持分だけ売却する

一度共有名義で相続した後、共有持分の権利を売却することも可能です。名義人の輪から自分が外れ、権利を買った人が入れ替わりに名義人の輪に入るイメージです。

自分の持分の権利だけであれば、扱いは自由であるため、誰に売却しても構いません。何らかの事情で身内に譲れなかったり、相続後に権利を手離したいと考えた時に適した方法です。

ただし、売れるのは持分の「権利」だけとなります。実際に土地や建物の一部を切り売りするわけではなく、共有名義の不動産は何かと制限も多いため、資産価値以上に安い価格で取引されることがほとんどです。妥当な額で買取をして欲しいのであれば、相手を相続人にした方が良いでしょう。

不動産を共有名義で相続するのはリスクが伴う!相続の際は専門家に相談を

不動産を共有名義で相続することは、メリットもあるもののリスクも大きく、何かとできることに制限が増えます。そのため、安易に共有名義での相続を決断するのはおすすめしません。専門家によく相談しつつ検討した方が良いでしょう。

ひろしま相続・不動産ホットライン」では、不動産の共有名義での相続問題をはじめ、不動産・遺産相続に関わるさまざまな相談を受け付けています。具体的な手続きの処理なども可能であるため、お困りの際は問題の大小に関わらず、お気軽にご連絡ください。

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相続・遺言アドバイザー、大野博満、監修者