土地建物を相続したときの手続きは?手続きの流れから必要書類まで解説!
土地や建物といった不動産を相続した場合、どのような流れで手続きをおこなえばよいかと疑問に思う方が多いでしょう。相続人や相続財産の確認・相続登記・相続税の申告と納付など、順を追って手続きしなければならないことが多くあります。
特に2024年4月からは相続登記が義務化され、手続きを放置すると過料が課される可能性もあるため、早めの対応が重要になっています。
そこで本記事では、土地建物の相続手続きの一連の流れだけでなく、それぞれに必要な書類やかかる費用・注意ポイントまで詳しくまとめました。これから土地・建物といった不動産の相続手続きをする方は、ぜひ参考にしてください。
土地建物の相続手続きの流れ
土地や建物といった不動産の所有者が亡くなった場合、誰がどのように相続するかを明確にし、所有権移転の登記を行わなければなりません。土地建物の相続手続きの流れは、以下のとおりです。
・相続人や相続財産の確認 ・遺産分割協議 ・相続登記 ・相続税の申告・納付 |
これらについて、詳しくみていきましょう。
相続人や相続財産の確認
土地や建物といった不動産を相続するには、相続人や相続財産を明らかにする必要があります。相続人・相続財産それぞれの確認方法は、以下のとおりです。
相続人 | 亡くなった方の戸籍謄本 |
相続財産 | 固定資産税課税明細書または・固定資産評価証明書 |
相続人は、配偶者・亡くなった方の子供・父母や祖父母などの直系尊属・兄弟姉妹となります。養子や婚外子も相続人になるため、戸籍謄本で確かめる必要があるのです。
相続財産については、年に1回送付されてくる固定資産税課税明細書で確認が可能です。固定資産税課税明細書が見つからなければ、市区町村の役所で固定資産評価証明書を取得することで確認できます。
ただし、複数の市区町村に土地や建物を所有している場合、それぞれの役所にて固定資産評価証明書の取得が必要です。
被相続人の戸籍謄本は、出生から死亡までの連続した戸籍が必要となります。以下の手順で取得しましょう。
・被相続人の最後の本籍地の市区町村役場で、現在の戸籍(除籍)謄本を請求 ・その戸籍に「本籍」として記載されている場所の市区町村役場で、さらに過去の戸籍謄本を請求 ・出生まで遡って、すべての戸籍を取得 |
なお、相続人全員の現在の戸籍謄本も必要です
遺産分割協議
土地建物について記された遺言書がある場合、遺言書の内容に沿って相続登記の手続きを行うとスムーズです。しかし遺言書がない場合には、法定相続人で話し合い、遺産を分け合う必要があります。
法定相続人とそれぞれの遺産の持分については法律で定められており、国税庁の「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」で法定相続分を確認できます。
・配偶者と子どもがいる場合:配偶者1/2、子どもで1/2(子どもが複数いる場合は均等に分ける) ・配偶者と親がいる場合(子どもがいない場合):配偶者2/3、親で1/3 ・配偶者と兄弟姉妹がいる場合(子どもも親もいない場合):配偶者3/4、兄弟姉妹で1/4 |
法定相続分とは異なる持分の割合で相続したいとなったら、遺産分割協議をして遺産の持分を決定しましょう。遺産分割協議を用いて遺産を分ける場合、相続人にあたる全員が協議の結果に同意する必要があります。
なお、遺産分割協議書の作成の際には、他にも以下の点に注意してください。
・相続人全員の署名・押印(実印)が必要 ・各相続人の印鑑証明書の添付が必要 ・相続する不動産の所在地・地番・面積などを明確に記載 ・誰がどの財産をどのような割合で相続するかを明記 ・作成日を必ず記入 |
相続登記
誰がどのように遺産を相続するか決定したら、相続登記を行います。相続登記とは、亡くなった方の名義で登記されていた土地建物の所有者を、相続人へと名義変更する手続きです。
2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
なお、2024年4月1日より前に相続が発生していた場合でも、2027年3月31日までに相続登記を申請しなければなりません。
不動産の相続登記には、登記事項証明書や相続人全員の戸籍謄本・固定資産評価証明書など、複数の書類が必要になります。相続人それぞれの住まいの役所や、不動産所在地の市区町村の役所で入手する書類もあるため、事前にしっかりと準備しておきましょう。相続登記に必要な書類の詳細は、後述します。
相続税の申告・納付
土地建物の相続登記が完了したら終わりではなく、その後は相続税の申告・納付を行わなければなりません。国税庁で定められている相続税申告書の提出期限と提出先は、以下のとおりです。
申告期限 | 相続の開始があったことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月目の日 |
提出先 | 被相続人の死亡時の住所を管轄する税務署 |
相続税は土地建物の遺産の総額に対して算出されることとなり、それぞれの相続人が受け取った分の割合を納付します。電子納付やクレジットカード納付・金融機関や税務署の窓口納付が可能です。
相続した土地建物の分け方
複数の相続人がいる場合には、相続する土地建物を分けなければなりません。相続した土地建物を分ける方法には、大きく分けて以下の4つあります。
・現物分割 ・代償分割 ・換価分割 ・共有名義 |
それぞれの方法について、詳しくみていきましょう。
現物分割
土地建物の形状を変えず、現物のままの状態で分割する方法を現物分割といいます。例えば、被相続人が以下の不動産を所有していた場合を想定してみましょう。
・自宅(土地・建物):2,000万円 ・賃貸アパート:3,000万円 ・別荘:1,000万円 |
相続人が3人(子A、子B、子C)いる場合、それぞれの不動産を以下のように分割することが考えられます。
・子A:自宅(2,000万円) ・子B:賃貸アパート(3,000万円) ・子C:別荘(1,000万円)+ 現金2,000万円 |
この例では、子Cが受け取る不動産価値が低いため、現金を追加して公平になるよう調整しています。
それぞれの土地や建物を相続人が1人で引き継ぐだけであるため、手続きは比較的かんたんになります。しかし、価値や大きさといった観点で不公平になりかねません。相続人全員が納得できず、トラブルになることも考えられるでしょう。
代償分割
代償分割とは、誰か1人が土地や建物といった不動産を相続する代わりに、ほかの相続人に対して金銭などを支払う方法です。代償分割には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
・不動産を分割せずに一人が相続できる ・不動産の価値を維持できる ・土地や建物の共有による将来の紛争を防げる | ・不動産を相続する人は大きな現金を用意する必要がある ・不動産の評価額について相続人間で合意が必要代 ・償金の支払い時期や方法で揉めることがある |
本来、相続して得られる遺産分の代償金を金銭などで支払い、現物を相続しなかった相続人が不利にならないようにする制度です。
例えば、自宅不動産を長男がすべて相続するとします。代償分割である場合、長男の兄弟である次男には、法定相続分に見合った金額を長男が金銭で支払うことになるのです。
山・土地建物がひとつのみなど現物では分割しづらい場合に、代償分割が用いられることが多くなります。
換価分割
土地建物をすべて売却し、得た現金を相続人で分ける方法を換価分割といいます。誰も不動産の相続を望まない場合や、相続したのちの相続税が準備できないといった場合に多く用いられる方法です。
売却までに時間がかかる・売却にあたって譲渡所得税が相続税のほかにかかるといった注意点があります。しかし、現物分割や代償分割よりも公平に遺産分割をできる方法です。換価分割を検討する際の注意点は以下のとおりです。
・売却までの管理 不動産が売れるまでの間の固定資産税や管理費の負担を誰がするか決めておく必要がある ・売却価格の決定方法 「いくらで売るか」について、相続人全員が合意できる基準を事前に決めてお区必要がある ・譲渡所得税の問題 相続した不動産を売却すると、相続税とは別に譲渡所得税がかかる場合がある。ただし、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を適用すると税負担を軽減できる可能性がある。 |
相続した不動産を売却すると、相続税とは別に譲渡所得税がかかる場合がある。ただし、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を適用すると税負担を軽減できる可能性がある。
共有名義
共有名義(共有分割)は、土地や建物を相続人同士で共有し相続する方法です。複数の相続人それぞれが所有している持分の割合を登記することとなります。
遺産分割を公平におこなえるメリットの一方で、デメリットも考えられます。売却・活用時に全員の同意が必要であるため、誰か1人と連絡が取れないというだけでスムーズな不動産活用はおこなえません。
また、次の代へ相続する場合、相続人それぞれの子供の人数分、次の相続人が増え続けることになります。そのうちに誰が共有者なのかを把握することが困難になる可能性が高まります。具体的には、以下のようなリスクがあります。
・所有者不明土地問題 相続が繰り返されると、共有者がどんどん増えて、最終的に「所有者不明土地」になる可能性がある ・管理・処分の制限 不動産の管理は共有持分の過半数、処分(売却・担保設定など)は全員の同意が必要となるため、共有者が多いほど意思決定が困難になる ・共有者間の紛争 利用方法や修繕費用の負担などで意見が合わず、トラブルになることがある ・共有物分割請求のリスク 共有者はいつでも共有物分割請求ができるため、突然の売却を迫られる可能性がある |
これらのリスクを加味したうえで、共有名義にするか否かを決定しましょう。
相続登記の方法
土地・建物の相続が決定した際には、相続登記が必要となります。相続登記の主な手順は、以下のとおりです。
1.相続が決定した土地・建物(不動産)を確認する 2.相続登記に必要な書類を準備する 3.不動産が管轄されている法務局へ申請する |
この中でも、ステップ2の相続登記に必要な書類、また相続登記にかかる必要について、詳しく解説します。
相続登記に必要な書類
相続登記に必要な書類は、大きく分けて戸籍関係の書類・登記関係の書類があります。誰のどのような書類が必要なのかわかりやすいよう、被相続人(亡くなられた方)と相続人(新しく登記名義人となる方)・その他に分け、必要書類を以下の表にまとめました。
被相続人(亡くなられた方) | ・戸籍謄本(出生から死亡まで) ・除籍謄本 ・本籍地記載の住民票除表または戸籍の附票 |
相続人(新しく登記名義人となる方、全員) | ・現在の戸籍謄抄本 ・住民票 ・相関関係説明図 ・遺産分割協議書 ・印鑑証明書(有効期限なし) |
そのほか | ・登記申請書 ・固定資産税納税通知書など(固定資産税評価額がわかるもの) |
上記は、遺産分割協議をおこなう場合に必要な書類となっています。それぞれの事情により上記以外の書類も必要な場合があるため、法務局や専門家に相談・確認してください。
法務局は全国に8ヶ所・地方法務局は42ヶ所あります。さらに、支局・出張所もあり、管轄の法務局は「法務局|管轄のご案内」にて調べられます。
もし遺言書がある場合は、遺産分割協議書の代わりに以下の書類が必要です。
・自筆証書遺言の場合:家庭裁判所の検認済証明書付きの遺言書謄本 (ただし、法務局保管の自筆証書遺言の場合は検認不要) ・公正証書遺言の場合:公証役場で発行された正本または謄本 ・秘密証書遺言の場合:家庭裁判所の検認済証明書付きの遺言書謄本 |
遺言書があれば、遺産分割協議書は不要です。
相続登記にかかる費用
相続登記は、自身で登記手続きをおこなうか専門家に頼むかにより、かかる費用が異なります。相続登記にかかる費用は、主に以下のとおりです。
・登録免許税 ・各書類の発行手数料 ・専門家への報酬 |
登録免許税と各書類の発行手数料については、どのような方でも相続登記の際にかかる費用となります。
また、相続人が多く手に負えない・時間がない・手続きが難しく感じるといった場合には、税理士や司法書士・弁護士などに依頼する方もいらっしゃるでしょう。その場合には、専門家への報酬も必要です。
法務局では、登録免許税の計算誤りが増えているとして「登録免許税|計算のポイント」といった資料を提供しています。ご自身で手続きするのが難しいと感じた場合、誤った申請をしてしまわないためにも専門家へ相談することがおすすめです。
土地建物の相続税評価方法
土地や建物の相続をおこなったら、相続税の支払いが必要になります。相続税を計算するには、相続した土地・建物の評価額が必要です。
相続税の算出に必要な評価額は、不動産を購入した際の価格や建築費用から算出するのではありません。時価によって現在の不動産を評価することとなるため、時価での評価方法を知る必要があります。
土地と建物それぞれの評価方法について、みていきましょう。
土地の評価方法
土地全体の評価額を算出するには、路線価方式と倍率方式という2種類の方法があります。路線価方式とは、国税庁の土地の評価基準書で定められている「路線価図」に示された評価額を使用する方法です。路線(道路)に面している宅地1平方メートル当たりの価額が、地域ごとの路線価図に記載されています。
上記の路線価図で価額が記載されていない地域では、「評価倍率表」を使用して価額を調べます。
それぞれの方法で土地全体の評価額を計算するための計算式は、以下のとおりです。
【路線価を用いた土地の評価額の計算式】路線価 × 地積 × 補正率
【倍率方式を用いた土地の評価額の計算式】評価倍率 × 土地の固定資産税評価額
いずれの評価方法にしても必要情報を正しく入手し、上記の計算式に当てはめて評価額を算出しましょう。
土地の評価減が可能なケース
以下のような場合、土地の評価額が減額される可能性があります。
・間口が狭い土地(奥行価格補正) ・不整形地 ・高低差のある土地 ・セットバックが必要な土地(道路に面していない部分) ・私道負担がある土地 |
これらの評価減は、専門家に相談するとより正確に算出できます。
建物の評価方法
建物の評価には、固定資産税評価額をそのまま用います。固定資産税評価額は市区町村から毎年送られてくる通知に記載されており、記載されている固定資産税評価額=相続税評価額です。
【建物の評価額の計算式】固定資産税評価額 × 1.0
万が一、手元に納税通知書がない場合、市区町村の役場の窓口で確認することも可能です。
建物の評価に関する注意点
以下のような場合、建物の評価額に影響が出る可能性があります。
・未登記建物がある場合 ・建物が老朽化している場合 ・賃貸に出している建物 |
固定資産税評価額は通常、建物の老朽化を考慮していますが、実際の状態がそれ以上に劣化している場合は、別途評価減を検討できる場合があります。また、貸家の場合、賃貸借契約の存在により評価減(貸家建物の評価減)が適用される場合があります。
これらの注意点は個人では気が付けないことも多いため、専門家の判断を仰ぐのがベストです。
相続税の節税対策
相続税を節税するためには、さまざまな特例や制度を活用することが重要です。具体的には、以下の特例が利用できるかもしれません。
・小規模宅地等の特例 ・配偶者の税額控除 |
上記以外にも、いくつかの方法が考えられます。詳しく見てみましょう。
小規模宅地等の特例
相続税において最も重要な節税対策のひとつが「小規模宅地等の特例」です。この特例を利用すると、一定の条件を満たす土地について、評価額を最大80%減額することができます。
主な特例の種類と減額率は以下のとおりです。
・特定居住用宅地:被相続人が住んでいた自宅の敷地(330㎡まで)→80%減額 ・特定事業用宅地:被相続人が事業用に使っていた土地(400㎡まで)→80%減額 ・貸付事業用宅地:被相続人が貸付事業用に使っていた土地(200㎡まで)→50%減額 |
この特例を適用するには、相続人が一定期間その土地を保有することなどの要件があります。特例の適用条件は複雑なため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
配偶者の税額軽減
配偶者が相続する財産については、以下のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。
1. 1億6,000万円 2. 配偶者の法定相続分相当額 |
例えば、相続財産が3億円で、配偶者と子ども1人の場合、配偶者の法定相続分は1/2なので1億5,000万円となります。この場合、配偶者は1億6,000万円まで相続税がかからないことになります。
この軽減措置を利用するには、相続税の申告が必要です。また、一定の条件があるため、事前に確認しておくことが大切です。
その他の相続税対策
その他の主な相続税対策としては、以下のようなものがあります。
・生前贈与の活用:年間110万円までの基礎控除を利用した計画的な贈与 ・相続時精算課税制度:60歳以上の親から18歳以上の子への2,500万円までの特別控除がある贈与 ・不動産の共有化:不動産を複数人で共有することによる評価減 ・不動産の有効活用:賃貸アパートなどに建て替えて、貸付事業用宅地にする ・家族信託の活用:認知症対策を兼ねた資産管理と承継の仕組み |
相続税対策は個人の状況によって最適な方法が異なります。早めに専門家に相談し、計画的に進めることが重要です。
土地建物相続でよくあるトラブルと対処法
相続は家族間のトラブルに発展することも少なくありません。特に不動産は価値が高く、分けにくいため、トラブルが生じやすい財産です。ここでは、よくあるトラブルとその対処法について解説します。
遺産分割協議がまとまらないケース
相続人間で意見が対立し、遺産分割協議がまとまらないことがあります。このような場合の対処法としては、次のような流れで対処しましょう。
1.専門家による調停:弁護士や司法書士など第三者のアドバイスを受ける 2.家庭裁判所の調停:家庭裁判所に調停を申し立てる 3.審判への移行:調停でも解決しない場合は審判に移行する |
特に相続人間の感情的な対立がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
相続人の中に行方不明者がいるケース
相続人の中に長年連絡が取れない人がいる場合、遺産分割協議が進められなくなります。このような場合、以下の流れで対処をしてください。
1.不在者財産管理人の選任:家庭裁判所に申し立てて、不在者の財産を管理する人を選任してもらう 2.失踪宣告:7年以上行方不明の場合、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てる |
これらの手続きには時間と費用がかかるため、早めに法律の専門家に相談することが重要です。
相続放棄をした人がいるケース
相続放棄をした場合、その人は初めから相続人ではなかったものとみなされます。相続放棄は被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
相続放棄があった場合の遺産分割では、放棄した人を除いた相続人で協議を行います。相続放棄があると法定相続分も変わるため、注意が必要です。
遺言書と異なる分割を希望するケース
有効な遺言書がある場合、原則としてその内容に従って相続が進められます。ただし、相続人全員の合意があれば、遺言書と異なる分割も可能です。
遺言書の内容に不満がある場合でも、まずは相続人間で話し合い、全員が合意する形での解決を目指すことが望ましいでしょう。
相続登記をしないまま放置してしまったケース
相続登記を長期間放置すると、以下のようなリスクがあります。
・所有者不明土地問題:次の世代でさらに相続が発生すると相続人が増え、手続きが複雑化する ・不動産の売却や活用ができない:名義が変更されていないと、売却や建替えなどの手続きができない ・過料のリスク:2024年4月からの義務化により、期限内に登記しないと過料が課される可能性がある |
相続が発生したら、できるだけ早く相続登記を行うことをおすすめします。
土地建物を相続する前にできる対策
相続トラブルを防ぐためには、被相続人が生前から対策を講じておくことが重要です。具体的な方法しては、以下の4つです。
・遺言書の作成 ・生前贈与の活用 ・家族信託の活用 ・不動産の共有持分の整理 |
それぞれ詳しく解説します。
遺言書の作成
遺言書を作成しておくことで、自分の意思に沿った財産分与が可能になります。遺言書には主に以下の種類があります。
・自筆証書遺言:全文を自筆で書く遺言書(法務局保管制度も利用可能) ・公正証書遺言:公証役場で公証人が作成する遺言書 ・秘密証書遺言:内容を秘密にしたまま公証役場で手続きする遺言書 |
特に不動産を含む財産が多い場合や、相続人間でトラブルが予想される場合は、法的効力の高い公正証書遺言がおすすめです。
生前贈与の活用
生前贈与を計画的に行うことで、相続財産を減らし、相続税の負担を軽減することができます。年間110万円までの基礎控除を活用した贈与や、相続時精算課税制度を利用した一括贈与などの方法があります。
ただし、生前贈与には「死因贈与」とみなされるリスクもあるため、計画的かつ継続的に行うことが重要です。
家族信託の活用
家族信託とは、財産を信頼できる家族に託し、管理・処分を任せる仕組みです。特に認知症などで判断能力が低下した場合の資産管理対策として注目されています。家族信託のメリットは以下のとおりです。
・認知症になっても信託した財産は受託者が管理できる ・相続発生時にスムーズに財産を引き継げる ・遺言では難しい「条件付き相続」なども可能 |
家族信託は比較的新しい制度のため、専門的な知識を持った弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
不動産の共有持分の整理
相続により不動産が共有状態になっている場合、生前のうちに共有持分を整理しておくことも重要です。共有者間で持分を売買したり、代償分割により一人の所有にまとめたりすることで、次の相続時のトラブルを防ぐことができます。
特に共有者が多い場合や、共有者間で利用方法について意見が合わない場合は、早めに整理することをおすすめします。
土地建物相続におけるQ&A
ここでは、土地建物の相続に関してよくある質問に回答します。
Q.相続登記は自分でもできますか?
相続登記は専門知識があれば自分でも可能です。必要書類を揃えて法務局に申請することで登記できます。ただし、戸籍収集や登記申請書の作成など複雑な手続きが多いため、不慣れな場合は司法書士への依頼を検討するとよいでしょう。
Q.相続した不動産を売却する場合の税金はどうなりますか?
相続した不動産を売却した場合、取得費(購入価格)は相続時の価額となります。売却益がある場合は譲渡所得税がかかりますが、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を使うと、支払った相続税のうち一定額を取得費に加算できるため、譲渡所得税を軽減できる可能性があります。
また、相続開始から3年10ヶ月以内に売却すれば「相続した空き家の特別控除」(3,000万円控除)が適用できる場合もあります。
Q.土地と建物の名義が異なる場合はどうすればよいですか?
例えば、土地は親名義、建物は子名義という場合、親が亡くなった際には土地のみが相続対象となります。このような場合でも、通常の相続手続きと同様に、遺産分割協議を経て相続登記を行います。
ただし、名義が分かれている背景には贈与や他の取引があった可能性もあるため、事実関係をしっかり確認することが重要です。
Q.共有名義の不動産を相続する場合の注意点は?
被相続人が不動産の共有持分を持っていた場合、その持分のみが相続対象となります。例えば、被相続人が不動産の1/2の持分を持っていた場合、相続人はその1/2の持分を相続します。
共有持分を相続した場合、他の共有者との関係も重要です。不動産の売却や大規模な修繕には共有者全員の同意が必要となるため、他の共有者との良好な関係を維持することが大切です。
Q.相続した土地が「所有者不明土地」にならないためには?
所有者不明土地とは、相続登記がされないまま放置され、誰が所有者かわからなくなった土地のことです。このような事態を防ぐためには、以下の対策があります。
1.相続が発生したら早めに相続登記を行う 2.遺言書を作成して相続先を明確にしておく 3.生前に家族信託などの仕組みを活用する 4.不要な土地は生前に売却や寄付を検討する |
特に2024年4月からは相続登記が義務化されたため、期限内に適切に登記手続きを行うことが重要です。
土地建物の相続は色々と複雑!わからないことがあれば専門家に相談を
土地・建物を相続する際は、相続する不動産の割り振りだけでなく、その後の申請・相続税の納付までを行わなければなりません。所有不動産を正しく把握することから、相続登記のための書類の準備・登録免許税や相続税の計算まであるため、負担に感じる方も多いのではないでしょうか。
「ひろしま相続・不動産ホットライン」では、“相続に関わる、すべての人が幸せになる時代へ”と掲げ、相続専門税理士や不動産鑑定士など6名のプロフェッショナルが、相続問題を一貫してサポートしています。
土地・建物の相続において、相続人同士での分割方法や相続登記などにお困りでしたら、ぜひ「ひろしま相続・不動産ホットライン」までご相談ください。
