相続税の還付とは?払い過ぎた税金は請求できる!
本来の税額よりも多くの税金を徴収された場合、申告によって税金が返金されるのか還付です。年末調整などにより払い過ぎた所得税が還付された経験がある方は多いはず。
相続税の場合も同じで、一度支払った相続税でも払い過ぎが判明すれば還付が可能です。「どのような場合に還付が可能?」「手続き方法は?」など、相続税の還付に関する疑問について解説します。
すでに相続税を支払ったけれど、適正だったのか不安が残る方は参考にしてください。
相続税の還付とは?払い過ぎた税金は請求できる!
相続税の還付とは、相続税申告書の内容を見直し、相続税の金額を下げられるとわかった場合に、所定の手続きをして差額分を税務署から返金してもらうことです。そのための請求手続きを「更正の請求」といいます。
相続税の払い過ぎが起こるのは、相続する土地の評価を高く見積もりすぎたなどのケースが多いようです。見積もりの差が生まれやすい土地の特長には以下のようなものがあります。
- ● 1,500平米以上の広大地
- ● 不整形地・高低差がある土地
- ● 埋蔵文化財包蔵地
- ● 間口が狭い土地
- ● 駐車場や車庫に使われている土地
- ● 公共の施設が立っている土地
- ● 道路に接していない
- ● 崖や斜面がある
- ● 山林や田畑
- ● 空き地
以上のような評価が難しい土地を相続する場合は、見積もりの落差が生まれやすいため注意が必要です。国税庁のデータによれば、平均で1件につき250万円もの還付金が発生しているといわれています。
ほかにも権利や法令法規についても詳しく見る必要があります。とくに借地権がある土地に建てた家など、第三者の権利が付着している場合は、土地の評価に影響を及ぼしやすくなるでしょう。
相続税還付の期限
相続税還付の請求には期限があります。国税法通則法第23条又は第32条により、更正の請求の期限は法定申告期限から5年以内です。相続税の申告期限が10か月のため、相続税還付の期限は、相続が発生した日から数えて5年10か月以内となっています。もし相続税の見直しをして、還付金を受けるのであれば、期限内に手続きできるよう5年以内に適正な土地評価をしてもらう必要があります。
ただし5年を過ぎてしまえば、更正の請求ができなくなります。評価の見直しを考えている方は、期限を意識して準備を進めましょう。
相続税を払い過ぎてしまう理由
相続税を払い過ぎてしまう理由はいくつかありますが、次の3つが大きな原因です。
- ● 土地の評価が難しい
- ● 相続税の申告期限が10か月以内と短い
- ● 相続税に関して税理士の経験が少ない
- ● 控除の適用漏れがあった
- ● 税務署は相続税の払い過ぎを教えてくれない
順に見ていきましょう。
土地の評価が難しい
土地の相続の際、基本的には毎年7月1日に国税庁が発表する「路線価」をもとに相続税を計算します。ただしさまざまな減額要因があるため、路線価などの原則的な土地評価だけでは正確な相続税が算出できない場合も。
当該地のエリア、周囲の状況、土地の大きさ、形、間口幅など評価要因は複雑で難解です。状況に応じて適切な価格補正が必要で、地図計算だけでは正確な評価ができないケースも多々あります。正確な土地評価のためには、豊富な経験と知識を持つ専門家に依頼する必要があるでしょう。
相続税の申告期限が10か月以内と短い
相続税の申告期限は、相続が発生したとわかった日から10か月以内です。被相続人が死亡すると、大切な家族が亡くなった悲しみに暮れている暇もなく葬儀や埋葬などに追われます。さらに、相続人の確定、遺産分割協議、相続税の確定・申告と次々に手続きや事務処理が押し寄せてきます。
そのような中、不動産の価値をじっくり精査する暇がないのが現実です。多くの場合、慌てて査定してもらった不動産価格が適正かを精査する暇もなく相続税を納めることになります。
相続税に関して税理士の経験が少ない
税理士が10人いれば10通りの評価額が出るくらいに土地の評価は難しいといわれています。また税理士の業務は、所得税・消費税・法人税・相続税など多岐にわたり、依頼した税理士が相続税に精通しているとは限りません。
特に相続は、人が死亡したときにしか起こらないため、ほとんど経験がないといった税理士もめずらしくありません。不慣れな税理士に依頼してしまった場合、適正な評価でなかったケースも多々あります。
控除の適用漏れがあった
相続税には、複数の控除や特例があり、活用すれば相続税の負担を減らせます。相続税で適用できる控除や特例には以下のようなものがあります。
- ● 小規模宅地等の特例
- ● 配偶者の税額軽減
- ● 葬式費用
- ● 債務
- ● 非課税財産の控除(墓・仏壇など)
- ● 生命保険金の基礎控除
- ● 死亡退職金の基礎控除
- ● 未成年者の税額控除
- ● 障害者の税額控除
- ● 外国税額控除
- ● 贈与税額控除
- ● 相次相続控除
相次相続とは、相続開始10年以内に相続人が死亡して二次相続が発生することを指します。相次相続が発生すると、前回の相続税のうち一定の相続税額を控除できます。前回の相続に課された相続税のうち、1年につき10%の割合で逓減した金額を二次相続に係る相続税額から控除できます。
参照:国税庁|No.4168 相次相続控除
税務署は相続税の払い過ぎを教えてくれない
相続税の申告の誤りにはふたつのケースがあります。不足している場合と多く払い過ぎた場合です。本来納めるべき税額よりも不足していた場合は、税務署から指摘があり、不足分の納税を促されます。期日までに納税しなければ、加算税や延滞税などのペナルティーが生じます。
反対に税金を多く納めた場合、税務署から「評価が高すぎますよ」「納税額が多いですよ」「この特例を使えば納税額が安くなりますよ」といった指摘はありません。そのため納税額が適切だったか、納め過ぎていないかは納税者自身が調べるほかないのです。
相続税還付の制度を利用すべき理由
相続税還付のためにおこなう「更正の請求」には、以下のようなメリットがあります。
- ● 納め過ぎた相続税が戻ってくる
- ● 次の相続の節税対策になる
- ● 相続税の延納に効果がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
納め過ぎた相続税が戻ってくる
相続税還付が認められると、納め過ぎた相続税は現金で振り込まれます。納めた金額が多ければ多いほど、還付金額も高額です。相続税を物で納付した場合でも、還付が認められると現金で戻ってきます。国税庁が公表した相続税の「申告・課税状況」によると平成3年分は、相続人589人に対して14億8,300万円を還付しています。平均すると一人当たりの還付金は251万8,000円となっています。
参照:国税庁|令和3年分の相続税の申告・課税状況(国税庁)
次の相続の節税対策になる
土地の価格を適正に評価しておくと、子や孫が相続する際の節税対策になります。不動産の価値を高いまま放置しておくと、子や孫が相続する際にそのままの価格で適用されてしまう可能性が高まります。還付手続きにより、相続財産の評価を下げておけば、次世代における相続税の過払いを防げるでしょう。
相続税の延納に効果がある
相続税の延納とは、相続税を申告時に一括で納められず分割支払いにすることです。不動産が多く現金が少ない相続の場合、相続税が高額であるにもかかわらず、納めるべき現金が手元にないといった事態がおこりがちです。延納を利用すれば、分割で納税できますが、利子税を課せられます。還付を受けた場合、未納の相続税を一括で納められる可能性もあります。
相続税還付を考えたときの税理士の選び方
相続税の還付のためには、次のような税理士に依頼するとよいでしょう。
- ● 相続税に詳しい税理士を選ぶ
- ● 不動産鑑定士と連携している
- ● 相続税申告の実績が豊富で還付申告の経験もたくさんある
順に見ていきましょう。
相続税に詳しい税理士を選ぶ
相続税を専門もしくは得意分野としている税理士に依頼するようにしましょう。探す際は、ホームページなどに記載されている情報を参考にします。
もし企業経営者や個人事業主で法人税や所得税の申告を依頼している顧問税理士がいる場合は、一度相談してみましょう。もし相続や土地評価が得意分野であれば、相続に関することも依頼すればよいので手間が省けます。
一方、経験がない場合や苦手分野であるなどであれば、遠慮なく相続を専門としている税理士に依頼しても問題ないでしょう。ただしホームページに記載している宣伝をうのみにせず、相続にかかわった経験などを確認しておく必要があります。
不動産鑑定士と連携している
相続税の還付対象となるようなケースは、多くの場合土地の評価に関連したものです。一度申告した評価を訂正するのですから、正確な土地評価結果を提出する必要があります。
そこで重要なのが、不動産鑑定士や土地家屋調査士など、不動産専門資格者による正確な評価です。このような専門家と提携し、スムーズに土地の評価と税の計算ができるような税理士を選びましょう。
相続税申告の実績が豊富で還付申告の経験もたくさんある
なによりも安心できるのが実務経験が豊富な税理士です。特に相続税申告の実績や還付申告の経験も豊富であるのが望ましいといえます。
相続税申告に対応する旨がわかっていても実務経験が浅い、相続税申告の経験があっても更正の請求経験が少ないなど、税理士によって経験値はさまざまです。
ホームページの宣伝文句をうのみにせず、実際に更正の請求の実務経験があるのかなど、話を聞いて判断するようにしましょう。
相続税の還付を受ける「更正の請求」の手続き
更正の請求の手続きの流れを知っておけば、準備すべきことがわかり、依頼から結果までの時間を短縮できます。
更正の請求の手続きは、次のとおりです。
- 1. 提出済み書類の再確認
- 2. 財産評価の見直し
- 3. 税務署に「更正の請求」の書類を提出
- 4. 更正通知書の到着
- 5. 国税還付金振込通知書〜還付金の振り込み
順に見ていきましょう。
1. 提出済み書類の再確認
税金の払い過ぎを確認するためには、提出した書類を見直すことから始めます。控えを紛失している場合は、税務署に依頼すれば再発行が可能です。過去に申告した金額と実際の土地・不動産の評価と合っているかを確認しましょう。
実際の不動産価格より申告した不動産の評価が高い場合は、還付の可能性があります。税務署から更正の請求に必要な書類を受け取りましょう。
2. 財産評価の見直し
信頼できる税理士事務所や不動産鑑定士に財産の再評価を依頼します。減額要素がないか精査してもらうために、関係する書類の取り寄せや現地調査、役所の調査などが必要です。評価が難しい不動産の再評価を一気通貫で手続きを行うためには、不動産鑑定士と連携している税理士に依頼すると良いでしょう。
3. 税務署に「更正の請求」の書類を提出
相続税減額の可能性がある場合、最初に相続税申告をおこなった税務署に対して「更正の請求」をおこないます。必要な書類は「相続税申告書」と「修正申告書」です。税務調査を受けて修正申告している場合は、その時の修正申告書の控えの提出も必要です。評価額の根拠となる資料などを添付して提出しましょう。
提出方法は、直接持参・郵送のほかに国税庁のホームページ「確定申告書等作成コーナー」にある「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」からでも可能です。添付書類の様式が国税庁の使用に合っていない場合は、所轄の税務署に別途郵送します。
資料には、撮影した土地の写真・土地の評価額・評価の根拠などが必要です。内容に不備があると再提出となるため、やり直しの手間を省くためにも相続税に詳しい専門家に依頼するとよいでしょう。
4. 更正通知書の到着
更正の請求が提出されると、税務署で内容を検討します。納め過ぎの税金があると認められた場合、相続税は減額更正されます。その結果が記載された「更正通知書」の到着は、更正の請求をおこなった約3ヶ月後です。
更正の請求内容が認められず、その結果に不服がある場合は、国税不服審判所に審査請求を求めることも可能です。ただし勝率は低く10%以下といわれています。
5. 国税還付金振込通知書〜還付金の振り込み
更正通知書到着から約1ヶ月後に、更正後の相続税差額から返金される金額が記載された「国税還付金振込通知書」が届きます。電子発行を希望する場合は、e-Taxで申告手続を行う際に「国税還付金振込通知書の電子発行を希望する」のチェックボックスにチェックを入れましょう。
その約3週間後に、申告者が指定した口座に還付金が振り込まれます。通知書の額と相違がないかを確認しましょう。
相続税が還付されるかどうかの判断自体も難しい!不安があれば専門家に相談を
相続税が還付されるかは、土地の評価を正確におこなってみないとわかりません。また、それが税務署に認められるかは別の問題です。したがって相続税の還付は、実際に更正請求してみないとわからないのが実際のところ。
このような理由から、確実に還付金を受けるためには、不動産相続や土地評価に詳しい専門家への相談が不可欠でしょう。
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