遺言書が有効な期間はどれくらい?無効にならないためのポイントとは
人生100年時代を迎え、終活への関心が高まる現代において、ご自身の最期に向き合い、将来への備えを検討される方も少なくないのではないでしょうか。
ご自身の大切な財産を、意思に基づき確実に後世へ託すためには、遺言書の作成が有効な手段です。しかし遺言書の作成には、法的に有効な形式や、注意すべき点がいくつか存在します。
せっかく作成した遺言書が無効となってしまっては、ご自身の想いが実現されず、ご遺族に無用な混乱を招きかねません。
この記事では、遺言書の有効期間と無効にならないためのポイントについて、詳細に解説します。大切な財産と家族の未来を守るため、ぜひ参考にしてください。
遺言書には有効期限がない
遺言書には有効期限がありません。一度有効な遺言書を作成すれば、年月が経過しても、その効力は失われません。 例えば、20年前に作成した遺言書であっても、法的に有効な形式で作成されていれば、現在においても有効です。
ただし、遺言書の内容が現状にそぐわなくなってしまうケースは考えられます。例えば、遺言書に記載した財産を既に売却していたり、相続人に指定した人が既に亡くなっていたりするような場合です。
このような状況の変化に対応するためにも、遺言書の内容は定期的に見直し、必要があれば書き換えることが大切です。
法的に有効な遺言書は3種類
遺言書が無効にならないためには、法的に有効な遺言書を作成する必要があります。民法で認められている遺言書の形式は、以下の3種類です。
- ● 自筆証書遺言
- ● 公正証書遺言
- ● 秘密証書遺言
それぞれ詳しく見ていきましょう。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言書すべてを自署し、押印することで作成できる遺言書です。費用をかけずに、ご自身で手軽に作成できるというメリットがあります。
ただし、厳格な要件が定められており、要件を満たしていない場合は無効となる可能性があります。例えば、パソコンで作成した文書や、代筆を依頼したものは無効です。複数の遺言書が存在する場合は、日付が新しいものが有効です。
自筆証書遺言は費用がかからないため、気軽に作成できますが、何度も書き直す方もいます。また、自宅などで保管することが多いため、紛失や改ざんの恐れもあるため注意が必要です。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で公証人と共同して作成する遺言書です。公証人が法律の専門家として、遺言書の内容を確認し、作成をサポートしてくれるため、安心感があります。相続トラブルを回避する目的で、公正証書遺言の形で遺言書を作成するケースも増えています。
遺言者が自筆するのは、内容に間違いがないと承認する署名のみです。自筆証書遺言に比べて、遺言者の負担はかなり軽いといえます。また、公証役場で原本が保管されるため、紛失や改ざんの心配もありません。
ただし、自筆証書遺言に比べて費用がかかり、証人2人を用意する必要があるなど、手続きが煩雑な面もあります。また、公証役場で公正証書遺言を保管する期間は20年とされています。20年の保管期間が終了すると、預けていた原本は失われてしまう可能性があるため、写しもしっかり保管しておきましょう。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言内容を誰にも知られないよう秘密にしたまま、公証役場で保管してもらう遺言書です。自筆証書遺言のようにご自身で作成できますが、不備があっても封を開けるまで気づけないのがデメリットです。封をしたままの状態で公証人と証人に立ち会ってもらい、公証人役場に提出します。
秘密証書遺言は、遺言書の存在を秘密にしたい場合に有効な手段となります。しかし、公正証書遺言と同様に証人2人を用意する必要があり、費用もかかります。また、相続発生後に、家庭裁判所で検認が必要です。
遺言書が無効になる6つのケース
遺言書は、ご自身の最終的な意思を表明する重要な書類です。しかし、せっかく作成した遺言書でも、以下のケースに該当すると無効になってしまう可能性があります。
- ● 作成日が記載されていない場合
- ● 自筆で書かれていない場合
- ● 署名・押印がない場合
- ● 相続財産の内容が不明確な場合
- ● 遺言能力がない被相続人が作成した場合
- ● 欠格者が証人になっていた場合
作成した遺言書が無効にならないためには、以上のポイントをしっかりと把握しておきましょう。
作成日が記載されていない場合
遺言書には、作成日を明確に記載する必要があります。日付が記載されていない場合や、作成日が特定できないような曖昧な記載の場合、その遺言書は無効とされてしまいます。これは、遺言能力の有無や、複数の遺言書が存在する場合の判断基準となるためです。必ず、作成年月日を明確に記載するようにしましょう。
自筆で書かれていない場合
自筆証書遺言の場合、遺言書の全文、日付、氏名を自筆で書くことが必須です。ワープロやパソコンで作成した文書、代筆を依頼したものは、自筆証書遺言としては無効となります。ただし、公正証書遺言の場合は、公証人が作成するため、自筆である必要はありません。
署名・押印がない場合
自筆証書遺言には、遺言者の署名と押印が必要です。署名がない場合や、指印や拇印のみの場合は無効となります。また、押印は実印である必要はありませんが、認印を用いる場合は、印鑑証明書を添付するなど、本人確認ができるようにしておくことが重要です。
相続財産の内容が不明確な場合
遺言書に記載されている相続財産の内容が曖昧で、特定できない場合は、その部分が無効となる可能性があります。「財産をすべて長男に相続させる」といった記載は有効ですが、「大切なものを長男に相続させる」のように、何が相続されるのか不明確な記載は避けるべきです。
遺言能力がない被相続人が作成した場合
遺言書を作成するには、遺言能力が必要です。遺言能力とは、自分の行為の意味や結果を理解し、判断する能力のことです。認知症や精神疾患などで、この能力が著しく低下している場合は、遺言書を作成しても無効となる可能性があります。
欠格者が証人になっていた場合
公正証書遺言や秘密証書遺言を作成する際には、証人2人の立ち会いが必要です。しかし、未成年者や、推定相続人など、一定の資格を欠く者は証人になることができません。このような欠格者が証人になっていた場合、その遺言書は無効となります。
遺言書が古すぎる場合のデメリット
遺言書には有効期限がないため、一度作成した遺言書は、年月が経過しても効力を失いません。しかし、あまりにも古い遺言書の場合、以下の様なデメリットが生じる可能性があります。
- ● 相続人が変わっている可能性がある
- ● 財産の内容が変わっている可能性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続人が変わっている可能性がある
遺言書を作成してから長い年月が経つと、相続人として指定した人が既に亡くなっている、あるいは新たな相続人が生まれているという状況の変化が起こり得ます。
例えば、遺言書作成時には存在しなかった孫が生まれている場合、その孫は遺言書では想定されていません。また、相続人として指定した人が既に亡くなっている場合、その人の相続分がどのように扱われるのか、遺言書に明記されていない限り、混乱が生じる可能性があります。
財産の内容が変わっている可能性がある
遺言書を作成した時点と、実際に相続が発生する時点では、保有している財産の内容が大きく変わっている可能性があります。
具体的には、遺言書に記載した不動産を既に売却していたり、新たに別の不動産を取得していたりするケースです。また、預貯金の残高や株式などの有価証券の価値も変動している可能性があります。
このような場合、遺言書の内容通りに遺産分割を行うことが困難になる場合があり、相続人間でトラブルが発生する可能性も高まります。
これらのデメリットを避けるためには、遺言書の内容を定期的に見直し、必要があれば更新しなければなりません。少なくとも、家族構成や財産状況に大きな変化があった際には、遺言書の内容を見直すようにしましょう。
古い遺言書の対処法2つ
長年放置していた遺言書が出てきた、あるいは、以前に作成した遺言書の内容が現状にそぐわなくなっていることに気づいた、という場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?ここでは、古い遺言書の対処法を2つご紹介します。
- ● 遺言書を再作成する
- ● 遺産分割協議を行う
遺言書を再作成する
最も確実な方法は、遺言書を再作成することです。古い遺言書の内容を修正したり、新たな内容を追加したりすることで、ご自身の現在の意思を反映した遺言書を作成しましょう。
遺言書を再作成する場合、以前の遺言書を破棄する、あるいは「以前の遺言書を撤回する」という旨を新しい遺言書に明記する必要があります。公正証書遺言の場合は、公証役場に保管されている原本を破棄することはできません。必ず新しい遺言書に「以前の遺言書を撤回する」という旨を記載しましょう。
遺産分割協議を行う
遺言書の内容が古いものの、相続人全員がその内容に納得しているのであれば、遺産分割協議を行い、新たに遺産の配分を決定しましょう。遺言書の内容とは異なる遺産分割を行うことも可能です。
ただし、遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。一部の相続人でも反対する場合は、遺言書の内容に従って遺産分割を行う必要があります。また、遺言書の内容と異なる遺産分割を行う場合には、後日トラブルにならないよう、遺産分割協議書を作成しておきましょう。
遺言書が古くなってしまった場合は専門家に相談を
遺言書は、ご自身の大切な財産を、ご自身の意思で、大切な人に託すための重要な手段です。しかし、遺言書の作成には、法的な要件や注意点があります。それらを理解せずに作成してしまうと、ご自身の想いが実現されない可能性もあります。
特に、古い遺言書の場合は、内容が現状にそぐわなくなっている可能性が高く、相続人間でトラブルが発生するリスクも高まるので注意したいところです。一度作成した遺言書が古くなってしまったと感じたら、あるいは遺言書の作成について不安や疑問がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
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