相続した不動産には不動産取得税がかからない?税金の計算方法も解説
不動産取得税は、土地や家といった不動産を取得した際に課税される税金のことです。相続により不動産を取得した場合にも課税対象になるか否か、疑問に思う方も多いでしょう。結論として、相続の場合は基本的に不動産取得税の課税対象になりません。
ただし、相続した不動産には、不動産取得税ではない5つの税金が課税されます。また、相続でも場合によっては不動産取得税がかかるケースもあります。
本記事では、不動産取得税以外の税金のことや、相続した不動産に不動産取得税がかかるケースについて解説します。税金の申告漏れなどでトラブルにならないよう、ぜひ参考にしてください。
相続した不動産は基本的に不動産取得税が非課税
相続により不動産を取得した場合は、原則として不動産取得税はかかりません。不動産取得税とは、土地や家の購入や贈与・建築などで不動産を取得した際に課される地方税の一種であり、取得税という名前から「不動産を手に入れた場合は必ず取得税が課税されるのではないか?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし相続は、必ずしも本人の意思でおこなわれるものではありません。売買や贈与とはちがい「所有権が移るだけ」に過ぎないため、相続した不動産に不動産取得税は非課税となります。
ただし、亡くなった方から不動産を譲り受けた場合でも、例外的に不動産取得税が課税されるケースもあるので注意が必要です。
不動産を譲り受けても不動産取得税が発生するケースについては、本記事の中で後述します。
相続した不動産にかかる5つの税金
相続した不動産に不動産取得税はかからないものの、そのほかに5つの税金がかかります。課税対象となる税金は、以下の5つです。
- ● 相続税
- ● 登録免許税
- ● 固定資産税
- ● 所得税
- ● 譲渡所得税
これらの税金について、詳しく見ていきましょう。
相続税
相続税とは、相続や遺贈により財産を取得した場合にかかる税金のことです。課税対象となる財産には、不動産だけでなく、現金や預貯金・有価証券・貴金属など、あらゆる財産が含まれます。
相続税は相続した遺産の総額から算出することになります。計算の順序は、以下のとおりです。
- 1. 基礎控除を算出する:3,000万円 + 600万円 × 法定相続人
- 2. 課税対象額を算出する:遺産総額 – 基礎控除額
- 3. 相続税額を算出する:課税対象額 × 税率 – 控除額
相続税の税率および控除額は、国税庁の「No.4155 相続税の税率」にて定められています。
登録免許税
相続した不動産の名義を変更するためには相続登記(名義変更)を行う必要があり、その際に登録免許税がかかります。相続した不動産の固定資産税の評価額に税率を乗じることで、登録免許税の税額を算出できます。
相続や遺贈による登記の場合、計算に使用する税率は国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」に定められています。税率は以下のとおりです。
登録免許税の税率:1,000分の4(0.4%)
課税の基準となる不動産の固定資産税は、毎年送られてくる納税通知書の課税明細書で確認できます。
固定資産税
固定資産税とは、土地や住宅といった不動産、お店などの家屋・会社の備品・工場の機械といった固定資産に課税される地方税のことです。資産価値に応じて算出した税額を、固定資産の所有者が市町村に納めます。
不動産の所有者とは、登記簿や土地補充課税台帳に所有者として登録されている人のことです。市町村に納める地方税ですが、東京23区の場合は都税として都に対して納税します。
固定資産税の納税額は、課税標準額に税率を乗じることで算出が可能です。税率は、総務省「固定資産税」にて、以下のように定められています。
固定資産税の税率:1.4%
ただし、各市町村は必要に応じ、1.4%とは異なる税率を条例で定めることが可能です。算出する際には、所有している不動産が所在している市町村の税率を確認しましょう。
所得税
相続した不動産を賃貸している場合、賃貸収入に所得税がかかります。ただし、賃貸収入すべてに所得税がかかるわけではありません。賃貸の管理費用を差し引いた金額が、所得税の課税対象です。
所得税の税率は、国税庁「No.2260 所得税の税率」により、所得金額に応じて以下のように定められています。
所得税の税率:5%~45%
賃貸収入以外に所得がある場合はそれらと合算し、申告の義務が発生する場合には確定申告が必要になります。
譲渡所得税
相続した不動産を売却して利益がでた際は、譲渡所得税の納税が必要です。譲渡所得に対する税金は、ほかの所得と区分して計算します。課税譲渡所得金額(※1)に税率を乗じることで、譲渡所得税を算出できます。
税率は国税庁の「土地や建物を売ったとき」で定められており、以下のとおりです。
- ● 長期譲渡所得の税率:15%
- ● 短期譲渡所得の税率:30%
相続した不動産を売った年の1月1日現在の時点で、不動産の所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得、5年以下の場合は短期譲渡所得となります。
(※1)課税譲渡所得金額:譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額(一定の場合)
亡くなった人から不動産を譲り受けても不動産取得税が発生する5つのケース
相続した不動産は原則として不動産取得税は発生しません。ただし、以下5つのケースにより不動産を譲り受けた場合、不動産取得税が発生します。
- ● 遺言で指定された不動産を相続人以外の人が譲り受けた場合
- ● 贈与者が死亡すると効力が生じる贈与契約の場合
- ● 生前贈与で不動産を譲り受けた場合
- ● 相続時精算課税制度を利用した場合
- ● 相続登記が完了した後に遺産分割をやり直した場合
これらのケースについて、詳しく解説します。
遺言で指定された不動産を相続人以外の人が譲り受けた場合
遺言によって財産と受取人を指定する方法を「特定遺贈」と呼びます。特定遺贈では、法定相続人以外の人に不動産を遺贈することが可能です。法定相続人以外の方が不動産を譲り受ける場合には、不動産取得税がかかります。
ただし、特定遺贈でも、もともと相続する権利のある相続人が指定された財産を相続する場合、不動産取得税はかかりません。
贈与者が死亡すると効力が生じる贈与契約の場合
贈与者の死亡により効力が生じる贈与契約のことを「死因贈与」と呼び、死因贈与の場合には不動産取得税の対象です。
例えば、Aさんが友人のBさんに「死んだら家をあげる」と伝えて、その際にBさんが家を受け取る意思を伝えていた場合、死因贈与が成立することになります。
死因贈与は、特定相続人でもそれ以外の方でも有効であり、遺言のように書面が残っていなくても成立します。ただし、双方の「合意」がなければ死因贈与は成立しません。
生前贈与で不動産を譲り受けた場合
自身が生きているあいだに財産を譲ることを「生前贈与」と呼び、この場合は不動産取得税がかかります。
生前贈与は相続税の節税対策として有効な手段であり、贈与税の非課税枠の中であれば贈与税もかかりません。
生前贈与の目的が相続税などの節税対策である場合でも、不動産取得税の対象になる点は理解が必要でしょう。
相続時精算課税制度を利用した場合
「相続時精算課税制度」を利用して生前贈与を受けた場合は、不動産取得税が発生します。
相続時精算課税とは、18歳以上の子供や孫などが、原則60歳以上の父母または祖父母などから財産を生前贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。2,500万円までは、贈与税を納めなくとも贈与が受けられます。
同一の父母または祖父母から贈与を受ける場合、かつ贈与額の合計が2,500万円を超えるまでは、何回贈与を受けても贈与税はかかりません。
ただし、不動産を贈与で受け取る場合は、不動産取得税の課税対象となります。
相続登記が完了した後に遺産分割をやり直した場合
一度、相続登記が完了した後、相続人同士で遺産分割をやり直した場合は、不動産取得税の課税対象となります。相続後の遺産分割やり直しは、贈与と同等だと考えられているためです。
不動産取得税がかからないようにするためには、はじめの遺産分割で明確な話し合いを設けることが必要でしょう。
不動産取得税がかかる場合の計算方法
不動産取得税は地方税であり、不動産が所在している都道府県への納税となります。計算方法は、以下のとおりです。
不動産取得税の計算式:(不動産の評価額 – 控除額) × 税率(本則4%)
軽減税率は、以下のとおりです。
- ● 土地や、住宅として利用する建物:3%(2027年(令和9年)3月31日まで)
- ● 住宅以外の建物:本則のとおり4%
住宅および住宅用の土地については、2027年(令和9年)3月31日まで軽減税率が適用になります。経済回復を着実に進めていくための特例措置です。
不動産の評価額は、固定資産税課税台帳に登録されている固定資産の評価額と同様となります。
不動産取得税には軽減措置がある
計算方法の項目でも触れましたが、不動産取得税には軽減措置があります。税負担を軽減するための特例措置は、以下の2つです。
- ● 家を取得した場合
- ● 土地を取得した場合
それぞれの軽減措置について、内容を詳しく解説します。
家を取得した場合
新築住宅、および中古住宅を購入した際、一定の基準を満たしている場合に軽減措置が適用になります。
新築住宅の場合、税率算出の基準となる不動産評価額から1,200万円を控除できます。ただし、以下に当てはまる新築住宅のみが適用されるため、条件と照らし合わせて確認しましょう。
住宅の床面積が50㎡(一戸建て以外の住宅で貸家の用に供する場合は40㎡)以上240㎡である
中古住宅の場合、不動産評価額から以下の表に記載する額が控除されます。
住宅の新築日 | 控除額 |
昭和29年7月1日から昭和38年12月31日 | 100万円 |
昭和39年1月1日から昭和47年12月31日 | 150万円 |
昭和48年1月1日から昭和50年12月31日 | 230万円 |
昭和51年1月1日から昭和56年6月30日 | 350万円 |
昭和56年7月1日から昭和56年12月31日 | 420万円 |
昭和57年1月1日から昭和60年6月30日 | 420万円 |
昭和60年7月1日から平成元年3月31日 | 450万円 |
平成元年4月1日から平成9年3月31日 | 1,000万円 |
平成9年4月1日から | 1,200万円 |
また、以下に記載する軽減措置の条件を満たしている必要があります。
- ● 個人が自己の居住用に取得した住宅であること
- ● 住宅の床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下であること
- ● 次のいずれかに該当する住宅であること
①昭和57年1月1日以降に新築されたものであること
②昭和56年12月31日以前に新築された住宅で、新耐震基準に適合している証明がされていること
(参考:広島県|県税のページ 個人が次の要件を満たす中古住宅を取得した場合 <耐震基準適合既存住宅>)
土地を取得した場合
住宅用の土地を取得した場合、新築住宅用・中古住宅用のどちらにも適用される軽減措置があります。
新築住宅用の土地を取得した場合、固定資産税評価額が1/2に軽減されます。以下の条件に当てはまるものが軽減措置の対象です。
先に土地を取得した場合 | 土地を取得後3年以内に、当該土地上に住宅が新築されていること。ただし、次の①②のいずれかに該当する場合に限る。 | |
① | 土地の取得者が、住宅の新築までその土地を引き続き所有していること | |
② | 土地の取得者からその土地を取得した方(譲渡の相手方)が、住宅を新築したこと | |
先に新築住宅を取得した場合(同時取得も含む) | ① | 住宅を新築した方が、新築後1年以内にその敷地を取得していること |
② | 新築未使用の住宅とその敷地を、新築後1年以内(同時取得を含む。)に同じ方が取得していること |
中古住宅の場合、以下の条件に当てはまるものが軽減措置の対象となります。
また、以下の(1)(2)のいずれか高いほうの額を、取得した住宅用の土地の税額から軽減します。
- (1)45,000円
- (2)土地1㎡当たりの価格 × 住宅の床面積の2倍(1戸当たり200㎡を上限) × 住宅の取得持分 × 税率
(参考:広島県|県税のページ 住宅用土地の取得に係る軽減措置)
申請書の提出期限は都道府県によって異なりますが、軽減措置の申請には適用期限があります。期限内に手続きを行わないと軽減措置を受けられなくなるため、注意が必要です。
不動産を相続した場合は専門家に相談しよう
不動産を相続した際は、不動産取得税をはじめとするさまざまな税金や手続きが発生します。相続した不動産にかかる税金は複雑で、ケースによって扱いが異なるため、専門的な知識が必要です。
そのため、不動産を相続した際は、一人で抱え込まずに専門家に相談することがおすすめです。税理士や司法書士といった専門家に依頼することで、適切なアドバイスを受けられるだけでなく、煩雑な手続きをまかせられます。
ひろしま相続・不動産ホットラインは、不動産・相続の問題にワンストップで対応している事務所です。相続専門税理士や不動産鑑定士など、プロフェッショナルがみなさまの相続をサポートします。
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