相続税の計算は自分でできる?計算方法や便利なシミュレーションも
親の遺産を相続した時に気になるのが相続税ですよね。とくに不動産が多く金融財産がほとんどない場合、相続税を払えるか不安な方も少なくないはず。いざ、相続が発生してしまってから相続税の多さに青ざめる、といった事態は避けたいものです。
相続税についてシミュレーションしておけば、生前から適切な対策を講じられるでしょう。そこで、この記事では相続税の計算方法について解説します。シミュレーションできるサイトも紹介するので参考にしてください。
相続税の計算方法は非常に煩雑
相続税の計算方法は、段階に分けて計算する必要があり複雑です。最終的な相続税を出すまでに、基礎控除を引いたり法定相続分ごとに計算したり、何段階もステップを踏む必要があります。
また、相続税の対象になる財産とならない財産がある、相続人の数や被相続人との関係性により計算方法が異なるなど、個別に対応が必要なケースばかりです。それぞれ細かく計算していく必要があるので、できれば専門家に相談することをおすすめします。
現金だけでなく土地や家も相続税の対象になる
相続税の対象になる財産は現預金だけではありません。株や生命保険の金融資産以外に土地や家などの不動産も対象です。反対に控除できる財産もあります。
相続税の対象となる財産について、以下の表にまとめました。
相続税がかかる財産 | 預貯金、株式、土地、建物、生命保険金死亡退職金、死亡からさかのぼって7年以内の生前贈与 |
相続税がかからない財産 | 墓地や墓石などの祭祀財産生命保険や退職金のうち一定金額など |
相続財産から控除できるもの | 被相続人の債務、葬儀費用など |
現金以外にも土地や生命保険も相続税の対象です。ただし、相続によって取得したとみなされる生命保険金などのうち、500万円×法定相続人分は控除されます。退職金も同様で、500万円に法定相続人の数をかけた金額は控除の対象です。土地や家も相続税の対象ですが、小規模宅地などの特例を適用すれば、納税額を大きく減額できるでしょう。このように、財産の内容によって控除や特例があるため、単純にまとめて計算ができないのです。
相続する財産に不動産がある場合は評価額の計算も必要
不動産の相続は、相続税の計算の中でも特に複雑です。土地と建物で算出方法が違うため、別々に計算する必要があります。土地の評価方法も「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があり、評価が難しい土地も中にはあります。
路線価方式 | 路線価×土地の面積 |
倍率方式 | 土地の固定資産税評価額に倍率を掛ける路線価が定められていない土地に適用 |
国税庁の「路線価図・評価倍率表」が掲載されているページでは、路線価を検索で調べられます。参考にしてください。
相続税の申告が必要かどうかは国税庁でシミュレーションが可能
相続税の申告要否判定は、国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」でシミュレーションできます。相続税の金額や相続人の人数を入力することで、およその要否が判定できるようになっています。小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)及び配偶者の税額軽減(配偶者控除)を適用したシミュレーションもできるため、ある程度高い精度で相続税が見積もれるのでおすすめです。
国税庁のシミュレーションを利用した際の流れを以下にまとめました。
【ステップ1.基礎控除額を出す】
- ● 配偶者の有無
- ● その他の相続人(子ども)の有無
【ステップ2.相続財産を入力する】
- ● 土地
- ● 建物
- ● 株式
- ● 預貯金
- ● 生命保険
- ● 死亡退職金
- ● その他(ゴルフ会員権、貴金属、宝石、家庭用財産、自動車、書画・骨とう)
【ステップ3.控除を入力する】
- ● 債務
- ● 葬式代
このように指示に従いながら入力していけば、およその相続税を判定してくれます。さらに特例を適用した税額計算シミュレーションもできるので、参考にしてください。
国税庁:相続税の申告要否判定コーナー
相続税の計算を自分で行う場合の3ステップ
相続税の計算を自分でする場合は、次の3ステップで進めていきましょう。
1.課税遺産総額の算出
2.相続税の総額を算出
3.算出した総額を相続分で按分して各種税額控除を行う
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.課税遺産総額の算出
相続税の対象となる財産(課税財産)をリストアップします。課税対象となる財産には次のようなものがあります。
- ● 預貯金
- ● 株式
- ● 土地
- ● 建物
- ● 生命保険金
- ● 死亡退職金
- ● 相続時精算課税制度による贈与財産
- ● 生前贈与財産 など
このうち評価が難しいのが土地と建物です。建物は固定資産税に記載されている額を採用しましょう。土地の評価は、国税庁の「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」を参考に算出します。
財産のリストの総額を計算したら、次に基礎控除額を減額しましょう。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
基礎控除額を相続財産から引いて残った金額が相続税の対象金額となります。
【1億円の遺産がある場合】
配偶者と子2人が相続するケースを考えてみましょう。
基礎控除額は、3,000万円+(法定相続人3名×600万円)=4,800万円
1億円-4,800万円=5,200万円(課税遺産総額)
5,200万円を法定相続分で按分します。
- 配偶者(1/2)→2,600万円
- 子(1/4)→1300万円ずつ
2.相続税の総額を算出
次に相続税の総額を算出します。法定相続分で按分した金額に相続税率を掛けて、相続税を算出しましょう。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | – |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
先ほどの1億円を相続したケースにあてはめてみましょう。
配偶者:2,600万円×15%-50万円(控除)=340万円
子:1,300万円×15%-50万円(控除)=175万円
そして最後に算出された税額を合計します。
340万円+175万円×2=690万円
3.算出した総額を相続分で按分して各種税額控除を行う
総額を実際の相続分で按分し、各種の税額軽減や控除を適用しましょう。以下は、控除の一覧です。
配偶者の税額軽減 | 取得した正味の遺産額が「1億6千万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは、配偶者に相続税がかからない |
障害者控除 | 相続人が85歳未満の障がい者である場合、相続税から一定の額を控除する |
未成年者控除 | 相続人が未成年(18歳未満)の場合、相続税から一定の額を控除する |
事例の場合、配偶者の相続額が2,600万円なので、相続税はかかりません。
反対に、配偶者および1親等の血族以外の人が相続する場合、相続税額の2割分が加算されるため注意しましょう。
相続税の正確な計算は専門家に任せるのが安心
相続税の計算は複雑で、不動産の正確な評価額を算出する部分で躓く方は少なくありません。とくに相続財産の大半が土地や不動産だった場合、個人で対応するのは相当困難でしょう。概算は国税庁のシミュレーションを利用すれば出せますが、正確な計算は専門家に任せることをおすすめします。
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