雑種地とは?相続した土地が雑種地か判断する方法と節税対策を専門家が解説
相続した土地が雑種地だった、という経験は、多くの人にとって予想外の出来事かもしれません。「雑種地」に関する相続税の計算は、プロの税理士でも間違えることが多いといわれています。
「雑種地って何?」
「雑種地かどうか確認する方法を知りたい」
「雑種地を相続する際に気を付けることは何?」
この記事では、雑種地を相続する、もしくはお持ちの不動産のなかに雑種地があり相続対策をしたい方に向けて、専門家の視点から、雑種地の定義や特徴、相続した場合の税金対策など、雑種地に関する注意ポイントについてご紹介します。相続が発生する予定がある雑種地の相続対策が気になる方は、ぜひご一読ください。
雑種地とは
雑草地とは、特定の用途が決まっていない土地を指します。不動産登記事務取扱手続準則第68条および第69条によれば、土地の用途は次のとおりです。
地目 | 用途 | |
1 | 宅地 | 建物の敷地およびその維持もしくは効用を果たすために必要な土地 |
2 | 田 | 農耕地で用水を利用して耕作する土地 |
3 | 畑 | 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地 |
4 | 山林 | 耕作の方法によらないで空き地、竹木の生育する土地 |
5 | 原野 | 耕作の方法によらないで雑草、灌木類の生育する土地 |
6 | 牧場 | 家畜を放牧する土地 |
7 | 池沼 | 灌漑用水でない水の貯留地 |
8 | 鉱泉地 | 鉱泉(温泉を含む)の湧出口およびその維持に必要な土地 |
9 | 雑種地 | 以上のいずれにも該当しない土地 |
地目は、土地の表示に関する登記事項で、法務省令で定められた土地の用途です。上記の1~8までの項目およびほか22種類の用途のどれにも該当しない土地が雑種地と判断されます。
土地登記簿の表題部には、土地の所在・地番・地目・地籍(土地面積)が記載されており、地目は、現状と利用状況によって決められます。
具体的な雑種地の例
「いずれにも該当しない土地」が雑種地と定められていますが、その具体的な代表的な用途は次のとおりです。
- ● 駐車場
- ● ゴルフ場
- ● 資材置き場
- ● 空き地
- ● その他
順に説明します。
駐車場
駐車場は雑種地の代表的な使用例です。何も整備されていない青空駐車場はもちろん、アスファルトで整備されている、土地の上に構築物を設置している、そのような場合も雑種地として評価されます。
登記簿上では宅地として記載されても、駐車場として利用されていれば土地評価の際は、雑種地となることもあります。その理由は、土地評価は現在の利用状況で判断されるからです。
ゴルフ場
ゴルフ場も雑種地の代表的な例です。ゴルフ場の相続は、ゴルフ場事業者に貸し付けている土地の相続といったケースが多いかもしれません。
雑種地と分類されることが多いゴルフ場ですが注意点もあります。雑種地の評価方法は、とくに決められておらず近隣の地目に準じて評価されます。
評価方法には、おもに次の3つです。
所在地域 | 評価方法 | |
1 | 市街化区域およびそれに近接する地域 | 宅地比準方式 |
2 | 1以外の地域 | 倍率方式 |
3 | 1と2以外の地域 | 通常の雑種地評価 |
市街化区域およびそれに隣接する地域にゴルフ場がある場合、相続税は路線価によって評価されます。また倍率地域に所在するゴルフ場であれば、定められている倍率を乗じて計算。
さらにそれ以外のケースであれば、通常の雑種地として評価されるなど、所在地域によって評価方法が違ってきます。また山林として評価されるケースもあり、近隣の利用状況によって評価が変わる点は注意が必要でしょう。
資材置き場
市街化調整区域と呼ばれる地域は、建物の建築が規制されており、資材置き場として活用しているケースが多く見られます。第三者に土地を貸していることも多く、その場合は貸借権が設定されている雑種地として評価されます。
ただし、もともと畑や田であった土地を資材置き場などに利用している場合は注意が必要です。農地法第4条にて農地を農地以外に転用する場合、都道府県知事(または農林水産大臣)の許可が必要です。しかし許可を受けずに利用していると確認された場合、農地に戻すよう原状回復の処分が下されることがあります。
空き地
空き地や未使用地も雑種地に該当します。原野との区分が難しいといわれていますが、次のようなポイントが判断基準です。
原野 | 竹木はなく、雑草や灌木が生い茂っている |
雑種地 | 竹木・雑草・灌木も生い茂っておらず、ほかの地目にも該当しない |
原野に似たものとして山林がありますが、山林の条件は「おもに竹木が生い茂っている」です。原野・山林のどちらの条件にも当てはまらない土地で、未使用の空き地が雑種地となります。
その他
雑種地と評価される土地は、ほかにも次のような例があります。
- ● 墓地・火葬場
- ● 神社や寺の敷地
- ● 水道用地・用水路・ため池・堤防
- ● 公園
- ● 公衆用道路
- ● テニスコートやプールで宅地に接していないもの
- ● 鉄塔や変電所のある土地でほかの目的に使用できない土地
- ● 運動場・遊園地の建物以外の部分
- ● 飛行場の建物以外の部分
- ● 競馬場内の土地や馬場
建物が敷地内にある場合、その土地部分を雑種地として評価する場合と宅地と評価する場合があります。現状での使用状況で判断されるので、それぞれ調査が必要です。
雑種地と宅地・山林・原野との違い
雑種地は「宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地のどれにも当てはまらない土地」と定義されています。各種とちと雑種地との違いを比較しながら解説します。
宅地と雑種地の違い
宅地の定義は「建物の敷地およびその維持もしくは効用をはたすために必要な土地」です。つまり多くの場合、建物が立っていれば宅地と評価されます。
ここで問題なのは、ゴルフ場に建てられているクラブハウスや店舗と駐車場を一体で利用している場合などです。利用面積や建物の種類によって雑種地と評価されたり宅地と評価されたりとさまざまです。判断が非常に難しい部分なので、専門知識がある税理士に相談することをおすすめします。
山林・原野と雑種地の違い
上記の表でも解説していますが、山林や原野の定義は以下のとおりです。
土地の種類 | 特徴 | 例 |
山林 | ・主に竹・木・樹木が生育している土地 ・森林法などの法律の規制を受ける ・開発への規制が厳しい ・宅地への転用は比較的困難 | ・山丘 ・陵地 ・森林 |
原野 | ・草や低木が生育している土地 ・山林ほど樹木が密生してない ・宅地への転用は比較的困難 | ・草原 ・荒地 |
雑種地は、用途が特定しにくいものの、宅地や田畑など他目への転用が比較的容易な場合があります。
雑種地かどうか判断する方法
土地の評価は、現状の利用状況によって変化します。雑種地か否かを判断する方法は次の2つです。
- ● 登記簿謄本を調べる
- ● 固定資産税納付書を確認する
- ● 実際に現地まで赴く
- ● 住宅地図で確認する
順に見ていきましょう。
登記簿謄本を調べる
法務局の窓口またはオンラインで、登記事項証明書または登記事項要約書を請求しましょう。取得した書類の「表題」の項目に記載されている地目を確認します。請求手数料は、オンラインのほうが割安です。
- ● 窓口:600円
- ● オンライン:500円
オンラインで請求後、最寄りの登記所や法務局証明サービスセンターで受け取る場合は、さらに割安の480円となっています。
参照:法務局
固定資産税納付通知書を確認する
毎年5月頃に土地の所有者に送付される「固定資産税納税通知書・課税明細書」に記載されている「登記簿上の地目と固定資産税上の現況地目」を確認しましょう。手元に資料がある場合は、すぐに確認できます。
この現況地目は、市町村の担当者が1月1日時点の現況で判断しており、課税地目が「雑種地」と記載されていれば、その土地は雑種地の可能性が高いはずです。
ただし問題点もあります。毎年必ず担当者が現況を確認しているとは限りません。登記地目と現況地目が異なる場合があり、必ずしも正確な情報といえないのです。
現況地目とは、現在の使われ方から見た地目のことを指します。例えば、登記簿上の地目には「雑種地」と記載されていても、実際には宅地として利用している場合も数多く存在します。数年に一度しか確認していない場合もあるので、なるべく直接確認したいところです。
実際に現地まで赴く
現況により評価が決まることから、一番確実なのは現地まで行って確かめることです。相続税申告の際、土地をどの地目で評価するかは相続開始日の現況で判断されます。
例えば、登記簿上の地目が「宅地」と記載されていたとしても、相続発生時に駐車場として使用されていれば、財産評価上では「雑種地」に分類されます。
現地でチェックする主なポイントは次のとおりです。
- ● 土地の上に建物が立っている
- ● 農地として利用されている
- ● 山林になっている
これらの条件に当てはまらなければ、雑種地である可能性は高いでしょう。
住宅地図で確認する
もし相続した土地が遠方で確認に行けない場合は、住宅地図などで確認しましょう。Googleマップや航空写真、全方位カメラなどで現況が確認できるはずです。
確認の際には、付近の土地利用状況もチェックしておくといいでしょう。というのも雑種地には決まった評価方法がなく、対象の雑種地と状況が類似する付近の土地評価が影響します。似た状況の近隣の土地と比較して価値を決めることから、この方法は「近傍地比準価額方式」とよばれています。
雑種地にかかる税金
雑種地に課税される税金には、以下のようなものがあります。
- ● 固定資産税
- ● 都市計画税
- ● 相続税
- ● 贈与税
それぞれ詳しく見ていきましょう。
固定資産税
固定資産税は、1月1日時点で土地や建物を有している人に対して毎年課税される税金です。固定資産税の一般的な算出方法は、土地や家屋および償却資産の課税標準額の合計に1.4%を掛けます。課税標準額とは、住んでいる地域の自治体が評価した価値で、3年に1度の頻度で見直されています。
一般的に、評価の高さは以下の順番です。
宅地>雑種地、鉱泉地>山林、原野>田、畑、牧場>池沼
地目は雑種地なのに、宅地として利用されていた場合は、実際よりも高く評価されるかもしれません。
都市計画税
都市計画税とは、自治体が都市計画事業や区画整理事業のための費用に充てるために課される目的税です。固定資産税と同じく、1月1日に所有している人に対して毎年課税されます。200㎡までの小規模住宅用地であれば、価格の1/3、その他の住宅用地であれば、価格の2/3が控除されます。
相続税
相続税の計算に際して、評価額から基礎控除が引かれます。基礎控除額は、以下の計算方法で出しましょう。
基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
ただし、正確な相続税の計算は、遺産と相続人が確定しないと算出できないため、手間と時間がかかります。正しい相続税額を算出したい場合は、税理士に相談しましょう。
贈与税
雑種地を贈与で取得した場合、贈与税が課されるケースがあります。贈与税は、年間110万までは非課税です。それ以上の部分については、10%から55%までの贈与税率を掛けたものを納めます。贈与税の計算方法については、暦年課税制度を利用するか相続時精算課税制度を利用するかでも違ってきます。暦年課税制度については、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】生前贈与をしても相続税がかかるケースがある?計算方法も解説
雑種地の相続税を下げる方法
雑種地の相続税を下げる方法として、以下の2つを紹介します。
- ● 貸付用の雑種地は契約期間を長くする
- ● 小規模宅地等の特例を利用する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
貸付用の雑種地は契約期間を長くする
他者に貸している場合、契約期間の残存期間が長くなるほど控除額が大きくなります。例えば、月極駐車場として貸し出している場合、賃借権の残存期間に応じて控除できる割合が増えるため、賃貸契約期間を長めに設定するとよいでしょう。
参照:国税庁|No.4627 貸駐車場として利用している土地の評価
小規模宅地等の特例を利用する
小規模宅地等の特例とは、被相続人や被相続人と同一生計であった家族の居住用または事業用に使っていた一定の要件を満たす土地は、その土地の評価額を最大で8割減額できる制度です。この特例は、建物以外の部分である雑種地にも適用可能です。
参照:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
雑種地かどうかの判断は難しい!迷ったら専門家に相談を
雑種地の判断や評価は非常に難しく、専門家へ相談したうえで判断することをおすすめします。その理由は、雑種地に関しては土地評価の倍率が定められておらず、現地調査や専門知識が必要だからです。
「ひろしま相続・不動産ホットライン」は、土地相続に関する相談を専門としています。不動産相続に強い税理士をはじめ、不動産鑑定士や司法書士が在籍しており、遺言に関するご相談にも対応しています。
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