最新情報のお知らせ

定期借地権とは?特徴からメリット・デメリットを解説

土地の活用方法として、定期借地権を用いた方法があります。定期借地権は、期間を決めて貸し出した土地に、借主が建物を建てて利用する制度です。更地の土地を貸し出すことから初期費用もかからないため、土地活用方法として検討する方も多いでしょう。

定期借地権には4つのタイプがあり、契約期間や利用用途・契約終了時の土地の状態など、契約内容はそれぞれ異なるのが特徴です。

本記事では、定期借地権の概要やそれぞれのメリット・デメリットを解説します。定期借地権で土地活用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

定期借地権とは

定期借地権は、建物を建てる目的を持っている借主に対して、期限付きで土地を貸し出せる制度のことです。1992年に施行された借地借家法内に、創設されました。

定期借地権には、大きく分類して4つのタイプがあります。以下の表は、定期借地権の種類と、それぞれの特徴をまとめました。

種類特徴
一般定期借地権存続期間:50年以上利用用途:制限なし契約終了時:基本的に更地で土地返還契約内容:契約更新・建物の買取請求なしの特約をつけられる契約:書面で行う
事業用定期借地権存続期間:10年以上50年未満利用用途:事業のみ契約終了時:基本的に更地で土地返還契約内容:契約更新・建物の買取請求なしの特約をつけられる契約:公正証書が必須
建物譲渡特約付借地権存続期間:30年以上利用用途:制限なし契約終了時:貸主は建物の買い取りが必要契約:規定なし
一時使用目的存続期間:規定なし利用用途:制限なし契約終了時:借主の申し出で賃貸契約に移行可能契約:規定なし

それぞれの特徴について、より詳しく解説していきます。

一般定期借地権

一般定期借地権とは、50年以上の契約ができる借地権です。権利の存続期間の延長や契約更新はしないと、定められます。また、土地に建てられた建物の買取を土地所有者に請求しないとする旨を特約として定めることが可能です。

特約を定めた場合、契約終了後には土地を更地にして返還する必要があります。

事業用定期借地権

事業用定期借地権とは、事業目的の建物を建てられる借地権です。事業用の場合、10~50年未満の範囲内で定期借地が可能となります。

借地借家法の第23条「事業用定期借地権等」に定められているとおり、借地期間により建物の買取請求権などの内容が異なります。大まかな内容は、以下のとおりです。

借地期間内容
長期:30年以上50年未満・契約更新や期間の延長はしないよう定められる・建物の買取請求はできないように定められる
短期:10年以上30年未満・契約更新や期間の延長なし・建物の買取請求なし

長期借用と短期借用の違いは、契約の更新や延長・建物の買取請求の特約を定められるかどうかという点です。

長期タイプは、特約を定めなければ「更新はできる、買取請求権は認めない」といった契約も可能です。しかし短期タイプは、権利内容の調整はできません。

建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権は、契約期間が終了する際、土地の借主が建てた建物を貸主が買い取るという特約付きの借地権です。借地権は、30年以上に設定が必要となります。

貸主は、土地を返還してもらうには建物の買取が必要であり、借主は自分で建てた建物は売却の必要があるという部分がポイントです。

また、借地権の契約が終了した際に土地を借りている側(賃借人)から請求があれば、賃借人は建物を賃貸として使い続けられます。その際、期間の定めはありません。賃貸料は、貸主の請求により裁判所が定めることになります。

一時使用目的とは

一時使用目的とは、1年未満でも契約可能な借地権のことです。そもそも、借地借家法では30年以上、定期借地権は一番短くて10~30年の事業等借地権となります。一時使用目的が適用になれば、数か月などの短い期間でも契約が可能です。

博覧会場や祭典式場など建物を所有するかつ一時的な利用が目的の場合でも、借地権で契約を結べます。貸主・借主の双方は、契約期間中に正当な利用なく解約の申し入れを行えるのも特徴です。

定期借地権のメリット・デメリット

定期借地権は、般定期借地権・事業用借地権・建物譲渡特約付き借地権、さらに一時使用目的と、4種類のタイプがあります。

借地権の存続期間や権利の内容・契約期間終了の際の対応方法や契約の放棄などの特徴がそれぞれ異なるため、メリット・デメリットにも違いがでます。

4種類の権利について、それぞれのメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。

 一般定期借地権のメリット

一般定期借地権は、貸主と借主の双方にとってメリットの多い定期借地権となります。

  • ● 更地で返還されるため土地活用計画が立てやすい
  • ● 安定した収入が見込める
  • ● 固定資産税の節税も見込める
  • ● 利用用途の制限がなく貸し借りしやすい

貸主としては、貸した土地が更地になって返ってくることが最大のメリットです。更地で返還されることから、土地活用の計画が立てやすくなります。また、50年以上の契約が可能なため、長期間に渡り安定した収入が見込めるでしょう。

さらに、定期借地として貸し出した土地には、税制の優遇があります。長期間の節税対策として、一般定期借地権は有効です。

貸主・借主ともにメリットとなる部分が、利用用途の制限がない点です。マンションやアパートといった賃貸・お店を建てるなど、土地に合わせた活用が可能となります。

一般定期借地権のデメリット

一般定期借地権のメリットとしてあげた契約期間が50年以上という点は、貸主・借主ともにデメリットになり得ます。また、契約を交わす際は書面で行わなければなりません。これらを踏まえ、一般定期借地権のデメリットは以下のとおりです。

  • ● 契約期間中は原則として途中解約はできない
  • ● 書面で契約を交わすための時間・費用がかかる

契約期間中は基本的に途中で契約の解除はできません。何らかの事情があったとしても、借主は途中で支払いをやめることや、貸主はほかの契約で土地活用はできなくなります。

また、書面での契約が必要になるため、書面の作成の時間や費用がかかります。契約を継続したいとなっても、改めて契約書を交わして新たな契約を結ぶ必要があるため、双方の負担になる場合もあるでしょう。

事業用定期借地権のメリット

事業用定期借地権は、10年以上50年未満の存続期間である点、事業用という用途に限られる点が大きなポイントです。特徴から考えられるメリットは、以下のとおりです。

  • ● 契約期間の調整がしやすい
  • ● 賃貸などに向かない土地でも活用しやすい
  • ● 居住用に比べると高い賃料が見込める

一般定期借地権は50年以上・建物譲渡特約付借地権は30年以上に比べ、事業用定期借地権は10年以上50年未満と契約期間が調整しやすくなっています。貸主は土地活用の計画がしやすいのがメリットです。

また、立地的に賃貸などに向かない場所であっても、事業用であれば活用できる場合があります。土地活用できる可能性が広がると同時に、事業用のほうが賃料も高い傾向にあるため、高い収入が見込めるでしょう。

事業用定期借地権のデメリット

事業用定期借地権は、公正証書での契約が必須である点や、貸し出せるのが事業のみという点がデメリットになり得るポイントだと言えます。

  • ● 契約は公正証書が必須のため公証人に書類作成を依頼する必要がある
  • ● 建物内の一部に居住部分があると事業用に設定できない
  • ● 借主が事業破綻しても勝手に建物を取り壊せない

契約の際に必要になる公正証書は、公証人という第三者に作成を依頼しなくてはなりません。そのため、公証人がいる役場などに出向く時間や手間も含め、自身で契約書を作成するよりも費用がかかるうえ、面倒に感じる方も多いでしょう。

また、一部でも居住区があると、事業用に設定できません。事業用に限定することで、借主が見つからない可能性も考えられます。

借主が見つかったとしても、契約期間の中で事業破綻するかもしれません。事業が破綻しても土地に残された建物は勝手に取り壊せず、更地にするには法的な措置が必要になります。さらに、建物の取り壊しは貸主が負担することになってしまいます。

手間もかかるうえ、以降の土地活用がスムーズにできない可能性がある点は、デメリットだといえるでしょう。

建物譲渡特約付借地権のメリット

建物譲渡特約付借地権のメリットは、建物を買い取る契約であるというポイントが大きく関わります。考えられるメリットは、以下のとおりです。

  • ● 買い取った建物を再利用できる
  • ● 建物があることで固定資産税を節税できる

ほかの定期借地権と異なるのは、契約が終了したのちも建物が残り続けるという点です。建物自体を買い取る費用は必要ですが、買い取った建物は再利用が可能です。賃貸などにして、継続して収入を得ることもできるでしょう。

また、建物があることにより、更地の場合よりも固定資産税が安くすみます。更地の期間がないため、継続した節税が可能です。

建物譲渡特約付借地権のデメリット

建物譲渡特約付借地権のメリットとなった「契約が終了しても建物が残る」というポイントですが、デメリットにもなり得ます。

  • ● 建物が古くなっている可能性が高い
  • ● 借主が建物に住んでいる場合は賃貸契約に移行する

建物譲渡特約付借地権は、30年以上の存続期間となります。土地を借り始めた当初に建物を建てていれば、契約終了時に建物は30年以上経った状態です

古くなった建物は、再利用するにしても修繕などが必要な箇所があるかもしれません。利用価値が低い建物の買い取りは、デメリットになり得るでしょう。

また、借主からそのまま建物に住み続けたいなど請求があれば、賃貸契約に移行しなければなりません。その場合の期間の定めはなく、土地活用に大きな影響を及ぼします。

一時使用目的のメリット

一時使用目的のメリットは、契約期間・契約の形や用途などが自由に決められる点です。具体的には、以下のメリットが挙げられます。

  • ● 契約期間が自由である
  • ● いつでも解約を申し入れられる

ほかの定期借地権は契約の期間がありますが、一時使用目的は契約期間の縛りがありません。さらに、正当な理由がなくても、貸主も借主も解約の申し入れが可能です。

貸主としては、土地活用の予定が変わったなどで解約できる点はメリットとなります。貸主も同様で、借りたい期間が変わった場合、いつでも解約が可能です。

一時使用目的のデメリット

一時使用目的は利用用途や契約期間・契約内容まで自由に決められます。そのため、細かく契約内容を決めておかなければ、のちのトラブルになりかねません。また、双方がいつでも解約の申し入れができることも、デメリットの大きなポイントとなります。

  • ● 貸主は、突然収入が途絶える可能性がある
  • ● 借主は、解約の申し入れがあったら迅速に引っ越しが必要になる
  • ● 契約終了後の流れまで取り決めておかないと土地が取られる危険性がある
  • ● さまざまなトラブルを予想して契約内容を決める必要がある

自由度が高いがゆえに、はじめに細かな契約内容を決めておかなければなりません。場合によっては、大きなトラブルになる可能性もあります。

メリットでもあるいつでも解約できるという点も、双方に不利益となる可能性がありデメリットになり得る部分です。

定期借地権の費用

定期借地権の土地代は、更地の際の固定資産税評価額や路線価額からの計算や、土地の期待利回り・周辺の取引価格といった時価を基準に算出されます。地域により基準にする値段がまちまちであるため、定期借地権の地代は異なります。

また、固定資産税の評価額や都市計画税といった公租公課・国税庁が公開している路線価額より、時価を使用したほうが土地の実情を踏まえた地代の算出が可能です。

固定資産税評価額や路線価・時価に関しては、自身でも調べることはできます。しかし、基準となる価格から算出する際は、不動産鑑定士などに依頼するのが一般的です。

相続した土地の活用は様々!節税のためにも専門家に相談を

定期借地権は、期間を決めて貸し出した土地に、借主が建物を立てて土地を利用できる制度です。一般定期借地権・事業用定期借地権・建物譲渡特約付借地権、さらに一時使用目的の4つのタイプがあります。タイプごとに存続期間や契約の更新・建物買取請求の特約がつけられるか、契約方法、メリット・デメリットなど、特徴はさまざまです。

相続した土地は更地にしておくよりも、建物が建っていたほうが固定資産税が安くなります。定期借地権は節税効果も見込めるため、早めに専門家への相談がおすすめです。


「ひろしま相続・不動産ホットライン」では、相続専門の税理士をはじめ、不動産鑑定士も在籍する税理士事務所です。定期借地権を活用するための地代の算出も承っています。相続した土地を定期借地権で活用したい場合、ぜひ不動産のプロである「ひろしま相続・不動産ホットライン」にご相談ください。

【ひろしま相続・不動産ホットラインに相談する】

監修 不動産鑑定士 河井猛